アウトライン
はじめに
学会でときどき「私は手術がしたいので、手術を勧めます」という若手の医師を見かけます。あるいは病院でも、手術の件数だけ、例えば膀胱全摘の数を挙げて医師や病院の評価をするという誤解があります。治療というのは医師のためではなく患者さんのためにあるんです。手術、放射線療法、化学療法、あるいは内視鏡で削る、いろいろな治療法の中で、何が患者に適しているのかを考えるのが一番大切です。患者さん、そして患者さんを身近にもたれる方は、そういう意味で病院を選ばなければならないと思います。
膀胱がんの温存療法
菅原さんの場合は、CTなどをみて、これなら大丈夫だと思ったのですが、全ての膀胱がんで温存療法ができるわけではありません。腫瘍の大きさや数、腎臓への影響など、温存療法のできる条件が、データの分析によって決まってきました。今からみれば、7、8年前は全摘していた膀胱がんも、その半分以上が温存できたことが分かっています。 温存療法は膀胱を残すので、膀胱の中にがんが再発する可能性がありますが、治療後の綿密な観察を続けていけば、命に関わるような再発はないということも分かってきています。 これらのことは、患者と我々の共同作業であり、データを解析していくことで新しい治療法への的確性を決めていくのです。
おわりに
「がん難民」をなくすためには、患者は受け身になってはいけません。積極的に自分の情報を医師に伝え、その医師が駄目なら次の医師で構いません。患者と医師で互いに自分の病気の治療を設計していく、そういう態度が必要なのです。
今回の講師について
東京大学先端科学技術研究センター
総合癌研究国際戦略推進講座 教授
赤座 英之 先生
略歴
- 昭和48年 東京大学卒業
- 平成9年 筑波大学泌尿器科教授
- 平成22年 東京大学先端科学技術研究センター教授
