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がんプロトピックス第3回「腎癌の治療」

アウトライン

腎がんについて

最近、腎がんが増えてきています。お年寄りから若い方まで幅広く、また、亡くなる方も増えてきています。

腎がんの代表的な症状として血尿、腹痛、腹部腫瘍が知られていますが、最近はそのような症状がなく、検診や他の疾患(たとえば糖尿病の検査など)で偶然に発見される「偶発がん」が多くなってきました。偶発がんは腫瘍が小さく早期のものが多いので完全に治せます。

腎臓のがんというのは手術で完全に切除できれば非常に治療成績がよいのですが、がんが進行して腎臓の外にまでおよんだ場合、薬剤等による治療法の効果があまり芳しくないため、あまりよくない成績にとどまっていると思われます。


腎機能温存を目指した新しい治療法

最近、腎機能を温存した手術が話題になってきました。腎臓を1つとってしまうと、腎機能が低下し高血圧など循環器系の病期を併発してしまい、腎機能を温存した手術より予後が良くないということが分かってきたため、可能な限り腎部分切除を行う方法が一般的になってきました。

腎部分切除を行うときには、出血が起こらないように一時的に腎動脈からの血流を遮断(阻血)しながら手術をする必要があります。しかし阻血をしている間に、腎臓に到達する血液が一旦とどまってしまいます(虚血)。これが長時間続きますと、腎機能が障害されてしまいます。

私どもが開発したアナトロフィック法という手術法は、がんに栄養を送っている動脈だけを阻血するので、残った腎臓は全く障害を受けずに済むという新しい方法です。


免疫治療薬、分子標的薬

進行性腎細胞がんに対して、従来は免疫治療薬(サイトカイン療法)が使用されていましたが、完全に治る方は非常に少なく、またそのほとんどが肺転移を有する患者さんでした。また、効果の持続期間もそれほど長くないため、新たな治療薬が期待されていました。

そこで分子標的薬が登場しました。分子標的薬はがん細胞に特徴的な遺伝子やたんぱく質を標的として開発された薬で、「VEGF受容体阻害剤」と「mTOR阻害剤」が使われています。


適切な治療薬を使うために

免疫治療薬、分子標的薬には、従来用いられていた抗がん剤と比べて比較的特殊な有害事象があり、注意深く使わなければなりません。これらの薬をどのような患者さんに使うのがよいのか、様々な臨床試験が行われています。

2010年に欧米の臨床試験に基づいた治療のガイドラインが発表されましたが、欧米と日本の臨床試験の結果に違いがあるため、私たちは今後、日本人、あるいはアジア人に対するガイドラインを考慮していく必要があります。

今回の講師について

並木 幹夫 先生

  • 1975 大阪大学医学部附属病院 研修医
  • 1977 国立大阪病院 医員
  • 1979 住友病院 医員
  • 1982 大阪大学 助手
  • 1991 大阪大学 講師
  • 1994 大阪大学 助教授
専門分野
  • 泌尿器科内分泌学
  • 泌尿器科腫瘍学
  • 泌尿器科分子生物学
研究課題
  • 男性不妊症の分子生物学的研究
  • 前立腺癌ホルモン療法の基礎と臨床
  • 精子形成関連遺伝子の同定
  • 泌尿器癌に対する分子標的治療
  • 加齢男性性腺機能低下症候群に対する男性ホルモン補充療法の有用性に関する研究
受賞歴
  • 日本医師会医学研究助成金 (1997/11/01)
  • 第6回稲田賞 (1989/05/11)
  • 第16回ブルガリア国際医学会賞受賞 (2006/10/16)

参考リンク