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前立腺がんの根治手術
前立腺がんは、アメリカでは死因の第2位に挙げられるがんで、日本でも増えつつあります。
最近は採血によるPSA(前立腺特異抗原)の検査が進んでいて、正常値を超えた場合に確定診断が行われます。
そしてがんが発見された場合、CTや骨の検査で進行度をチェックした上で治療方針が決まります。
前立腺にがんがとどまっている場合、根治治療が適用されます。
根治治療は通常、放射線療法と手術療法がありますが、今回は手術療法についてお話します。
前立腺がんの手術療法は、通常お腹を切って、恥骨の裏の方から入って膀胱の前を開けていくと前立腺に達しますので、
前立腺を精嚢と一緒に取り出します。
前立腺は骨盤の一番深いところにあり、手術は恥骨と膀胱の隙間から覗き込むように行いますので、
非常に視野が悪く、しかも深いところにありますので、手術の操作が非常に難しいというのが問題点です。
また、前立腺の周りには太い血管(特に静脈)があるため、出血しやすいという問題もあります。
ロボットによる腹腔鏡下前立腺全摘術
多くの施設では、通常の開腹手術によって手術が行われていますが、
一部の施設で、傷を小さくする試みが行われています。
当施設ではそのなかの小切開手術(ミニマム創)をおこなっていて、
傷が小さい分だけ、手術後の患者さんの痛みや回復具合もよいという利点があります。
さらに傷を小さくする手術として、他に腹腔鏡下手術がありますが、
操作が難しく、内視鏡による平面的な画像なので遠近感が分かりにくいという難点があります。
そこで開発されたのが、今回お話するロボット手術です。
使う機械は「ダビンチ・サージカル・システム (DaVinci Sergical System)」というもので、
双眼鏡のようなモニターをのぞき込みながら操作します。
立体画像を見ながら手術ができ、自由自在に動ける非常に良い操作性の鉗子をもつという特徴があります。
この機械は最初にアメリカで使われました。
現在、アメリカでは8割くらいが前立腺の全摘手術をロボット手術で行っています。
もちろん婦人科や外科など、他の分野でもロボットが世界中に普及しており、
アメリカでは968台、ヨーロッパでは229台の普及であるのに対して、日本は6台にとどまっています。
2008年12月に厚生労働省が、ロボット手術を先進医療として承認しました。
当施設でも2009年3月からロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術を開始し、
現在までに14例が行われました。
ロボット手術の利点と問題点
当施設で行ったミニマム創前立腺全摘術と比較しますと、
ロボット手術は出血量が圧倒的に少ないことが挙げられます。
また、導入当初はロボットの方が手術時間が長くなるのでは、という懸念もありましたが、
ミニマム創手術より短く3時間ちょっとくらいで終わります。
さらに、手術後の尿失禁についても、ロボット手術のほうが改善が早いというデータが得られています。
ロボット手術の問題点は、非常にお金がかかることにあります。
1症例ごとの消耗品のみで40万円、ロボットの導入で2億5000万円ほどかかります。
メンテナンスの費用もあります。
しかし、2008年には高度医療が認められ、2009年11月には、厚労省から DaVinci が薬事承認されました。
今はまだ保険適応がありませんが、少し進んだと思います。
費用の問題、保険適応の問題など未解決ですが、
患者さんのためにも、医師のためにもロボット手術を推進していきたいと思います。
今回の講師について
角野 佳史 先生
- 2005年 金沢大学医学(系)研究科(研究院)・医学系研究科 助手
- 2007年 金沢大学医学部附属病院 助教
専門分野
- 尿路性器悪性腫瘍
学会活動
- 日本泌尿器科学会
- 日本癌学会
- 日本癌治療学会
興味を持っていること
- 尿路性器悪性腫瘍の転移浸潤についての基礎的研究とその臨床応用
- 泌尿器癌の根治性を損なわない低侵襲手術の開発
講演情報
- 2009年12月5日(土)
- がんプロ市民公開講座
- みんなで知ろう!がんの最新治療
~分子標的薬からロボット手術まで~ - 金沢市文化ホールにて
