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尿路上皮がん(にょうろじょうひがん)

尿路上皮がんとは

  1. 尿路上皮がんとは

    腎臓でつくられた尿を膀胱へと運ぶ通り道を腎盂・尿管と言い、膀胱は尿を一時的に貯留する袋状の臓器です。これらの臓器の内腔は移行上皮という粘膜で覆われています。この粘膜から発生した悪性腫瘍を総称して尿路上皮がんと言います。腎盂・尿管・膀胱にそれぞれ単発で発生するほか、それぞれ同時に多発生することがあります。また再発を繰り返すことが多いという特徴を持っています。

  2. 疫学

    男女比は2~3:1と男性に多くみられます。 好発年齢は60歳以降で、50歳以上が全体の約90%を占めます。

  3. 原因

    尿路上皮がん発生の明らかな要因として喫煙が知られています。ナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニル、ニトロビフェンなどの化学物質の職業的な曝露も膀胱がん発生の要因とされています。食生活においては現時点でははっきりと相関を示すものはありません。

Ⅰ腎盂・尿管がん

(1)症状

多くの方は肉眼的な血尿で発見されたり、尿の流れが悪くなって、腎臓がはれて(水腎症といいます)背中が痛くなって見つかったりします。

(2)診断

  • (a) 経静脈性腎盂造影検査:肉眼的血尿が認められ、腎機能が問題ない方に行います。(造影剤を注射して、15分間ほどで4枚ほどの腹部のレントゲン写真を撮る検査)腎盂・尿管腫瘍の存在、部位などを検査します。
  • (b) 膀胱鏡:膀胱内にがんの発生が無いかを確認します。
  • (c) 尿細胞診:尿中に剥離したがん細胞の有無を調べる検査です。患者さんが排尿した尿や膀胱鏡の際の洗浄液で検査します。尿路上皮がんがあっても尿中にがん細胞が出なければ異常がみつかりません。
  • (d) 腹部超音波検査:水腎症(腎盂・尿管の拡張)の有無、腎腫瘍の有無を調べます。腎機能が十分でない方には経静脈性腎盂造影検査が施行できませんので、この検査が有用です。
  • (e) 逆行性腎盂造影:(a)~(d)の検査で腎盂・尿管腫瘍の存在が強く疑われた際に行います。この検査は尿道の出口から、細い管を腎盂・尿管腫瘍の近辺にまで進め、造影剤を注入し、腫瘍の正確な存在、部位の診断を行います。同時に腫瘍近辺で尿を採取して、細胞診検査を施行することもあります。この検査では、経静脈性腎盂造影検査で腎盂・尿管像が不明瞭であった方でも、十分な画像を得ることが出来る診断的価値の高い検査です。(カテーテルを挿入する際に痛みを伴うことがあります。)
  • (f) CT検査、MRI検査:転移の有無やがんの浸潤の程度など、がんの進行を調べるのに有効です。

(3)治療

腎盂・尿管腫瘍の治療は手術療法が主体です。

  • (a) 腎盂尿管に限局する早期のがん(表在がん)の場合

    腫瘍だけを切除しても、同じ尿管の下流部を残すと、残った尿管にがんが発生しやすいこと、また対側にはがんがほとんど発生しないことを考慮して、がんが発生した片側の腎臓、尿管、さらには膀胱壁の一部も含めた腎尿管全摘、膀胱部分切除を施行するのが一般的な手術方法です。尿管のがんでは、ときに腎臓を摘出せず、尿管の部分切除が行われることがあります。また腎機能の低下した方や、非常に早期で再発の可能性が低いと判断される方に対しては、なるべく腎臓を残すように内視鏡手術も行われます。

  • (b) 腎盂尿管に限局するものの、少し進行している(浸潤がん)の場合

    (a)の方法で腎・尿管及び膀胱の一部を切除し、周囲のリンパ節も合わせて切除します。がんが腎盂尿管壁に浸潤している場合には、術前あるいは術後に、抗癌剤や放射線を追加することがあります。

  • (c) 転移のある場合

    手術は行わず、抗癌剤による化学療法を行います。(化学療法の項参照)

(4)予後

一般的に、腎盂・尿管がんの予後は不良といわれていますが、表在がんであった場合の予後は良好で5年生存率は90~100%程度です。浸潤がんであった場合の予後は、5年生存率で10~40%です。転移がある浸潤性腎盂・尿管がんの場合はさらに不良です。

Ⅱ膀胱がん

(1)症状

  • (a) 血尿:膀胱がんのみつかる契機となる症状の中で最も多く見られます。肉眼的に見て分かる肉眼的血尿、肉眼的には分からなくても検尿にて判明する顕微鏡的血尿のどちらの場合も見られます。血尿が強い場合は膀胱内の血液が固まって尿が出なくなることや(膀胱タンポナーデ)、貧血を来たすこともあります。
  • (b) 頻尿、排尿時痛:膀胱炎のようにトイレが近くなることや、排尿時に痛みをともなうことがあります。

(2)診断

  • (a) 膀胱鏡検査:膀胱がんの診断において、最も確実性の高い検査です。内視鏡(ファイバースコープ)を尿道から膀胱内に挿入し、膀胱内を観察します。男性は特に痛みをともなう場合があります。
  • (c) 尿細胞診:尿中に剥離したがん細胞の有無を調べる検査です。患者さんが排尿した尿で検査できるため、負担の少ない検査ですが、膀胱がんがあっても尿中にがん細胞が出なければ異常がみつかりません。
  • (d)超音波検査:ある程度の大きさになると、超音波検査でも診断できますが、小さながんや、腫瘍の場所によって診断できないことがあります。
  • (e)CT検査、MRI検査:転移の有無やがんの浸潤の程度など、がんの進行を調べるのに有効です。

(3)治療

  • (a)外科的治療(手術):

    膀胱がんの外科的治療は主に、内視鏡で膀胱内を観察しながらがんを電気メスにて切除する方法(経尿道的膀胱腫瘍切除術)と、膀胱を摘出する方法(膀胱全摘除術)が行われます。

    • ⅰ) 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)

      内視鏡を尿道から膀胱内に挿入し、膀胱内を潅流液で満たしながら、ループ状の電気メスで腫瘍を切除する方法です。通常は表在性膀胱がんに対して行われます。

    • ⅱ) 膀胱全摘除術

      経尿道的膀胱腫瘍切除術では治療が十分でない場合に選択されます。膀胱を摘出し、男性の場合は前立腺、精嚢、女性の場合は子宮をいっしょに摘出します。また尿道を摘除することもあります。男性の場合は、前立腺精嚢を摘出するため術後射精ができなくなり、勃起障害も術後多く見られます。膀胱摘出後は膀胱の代わりとなる尿路の再建が必要になります。

    • (b)放射線療法:

      基本的には浸潤がんに用いられ、手術が行えない場合や、膀胱を温存する目的で選択されます。皮膚障害、直腸障害、萎縮膀胱などの副作用が見られることがあります。化学療法(全身化学療法、動注化学療法)と組み合わせて行うことが多いです。

    • (c)化学療法(抗がん剤による治療):

      主に転移のある進行したがんに行われますが、手術を行う場合でも術後の再発や転移の予防に術前または術後に行われることがあります。通常は2種類以上の抗がん剤を組み合わせて行います。(化学療法の項参照)

    • (d)膀胱内注入療法:

      BCGや抗がん剤を膀胱内に注入して治療します。上皮内がんや、表在がんの多発腫瘍などに用いられます。また、経尿道的膀胱腫瘍切除術後の再発予防として用いられることがあります。

(4)予後

表在がんであった場合の予後は良好で5年生存率は95%程度です。浸潤がんであった場合の予後は、5年生存率で30-80%です。浸潤や転移がある浸潤がんの場合は不良です。

(5)尿路変更

膀胱全摘除術を行う場合は膀胱の代わりとなる尿路の再建(尿路変更)が必要になります。尿路変更には以下のような方法があります。

  • (a) 回腸導管造設術

    回腸を一部遊離してそこに左右の尿管を植え、回腸を皮膚に出してそこから尿を排出する方法です。回腸が皮膚にでた部分をストーマといい、尿を貯める袋(パウチ)を貼って、定期的に交換する必要があります。最も一般的に行われている方法です。

  • (b) 新膀胱造設術

    腸を一部遊離して、摘出した膀胱のかわりに腸で新しい膀胱を作成します。術前のように尿道から排尿する自排尿型とよばれるものと、尿がたまるとカテーテルで導尿して尿を排出する導尿型とよばれるものがあります。手術操作が複雑となるため、手術時間が長くなる、合併症がやや多くなるなどの欠点があります。

  • (c)尿管皮膚瘻造設術

    尿管を直接皮膚に出して、そこから尿を排出させる方法です。尿管が皮膚に出ている部分はストーマといい、尿を貯める袋(パウチ)を貼って定期的に交換する必要があります。腸を利用する必要がなく、身体の負担が最も少ない方法ですが、尿管の出口が狭くなりやすいなどの問題点もあります。

Ⅲ尿路上皮がんの化学療法

転移のある進行した尿路上皮がん(膀胱・腎盂・尿管がん)は化学療法の対象になります。通常、数種類の抗がん剤を併用します。M-VAC療法(メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンの4剤を用いた点滴治療)が、現在尿路上皮がんの治療に最もよく行われる化学療法です。また、転移がないがんでも、手術後に再発や転移の可能性が高いと考えられる場合には、その予防を目的に手術前、あるいは手術後に化学療法を追加する場合があります。近年タキサン系薬剤やジェムシタビンといった新しい抗がん剤を用いる治療も注目されていますが、日本では尿路上皮がんの治療薬としての保険認可はまだ得られていません。治療期間は1~3ヶ月、あるいはそれ以上かかります。入院での治療が原則ですが、施設によっては外来通院での治療も可能となっています。

抗がん剤による副作用は、用いる抗がん剤の種類によって異なり、発現頻度・程度にも個人差があります。副作用は自分でわかる自覚的なものと、検査などによってわかる他覚的なものがあります。自覚的な副作用には、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、全身倦怠感、手足のしびれ、脱毛などがあります。他覚的な副作用には、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、貧血)、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、呼吸機能障害などがあります。その他、予期せぬ重篤な副作用があらわれ、まれに命にかかわることもあります。

主に抗がん剤の投与日から数日間続く吐き気・嘔吐に対しては、吐き気止めの薬を点滴や内服します。白血球減少が高度になった場合、感染症の合併を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)と呼ばれる白血球を増やす薬を注射します。貧血、血小板減少が高度な場合には輸血を行うこともあります。脱毛、末梢神経障害に対する効果的な治療法はいまだ開発されておりません。これらの副作用の大半は一時的なものですが、末梢神経障害など長く続くものもあります。