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原発不明がん(げんぱつふめいがん)

原発不明がんとは

定義

原発不明がんは“臨床的に注意深い全身検索や経過観察を行っても原発巣が同定できない転移性の腫瘍を示し、様々な腫瘍が混在した不均一な疾患グループ”と定義されています。

腫瘍組織の生検や徹底的な病歴聴取、身体診察を詳細に行い、頭頸部、直腸、骨盤、胸部および乳房の画像検索、採血検査、尿検査および便潜血検査をまず行う必要があります。さらに全身の画像検索を詳細に行っても原発巣である可能性のある病変を示す指標が明らかにならず、かつ生検した組織の像が生検部位に発生する原発腫瘍の像に一致しない場合には、原発不明がんとして診断します。

特徴

  1. 全悪性固形腫瘍の数%を占めます。

    以前は全悪性固形腫瘍の20%前後が原発不明がんとして認識されていましたが、検査方法の進歩により約2~8%まで頻度が低下しました。しかし、現在も原発不明がんは一定の割合で診断されています。

  2. 原発巣が同定されていないことで全身検索や治療方針に関して、医師および患者双方にしばしば不安を生じます。

    がんと診断されただけでも患者様には強い不安が生じますが、原発不明がんについては医療者側も明確な部位診断を行うことが出来ないため、様々な検査を繰り返すことが多くあります。その一方で明確な診断が出来ないため詳細な情報を患者様に提供することが出来ないだけではなく、治療選択についても、様々な臨床研究にて確立されたものがないため、標準的治療が出来ないのが現状です。

  3. 多種多様ながん腫を含んでおり、そのうち特定の治療に反応し、長期生存する例があるため、そのような群をいかに的確に診断するかが重要となります。

原発不明がんの統計

我が国における原発不明がんの死亡数は年間約7000人前後と報告されており、全がん死亡に占める割合は約2~3%です。アメリカ合衆国では原発不明がんの頻度は全悪性腫瘍の約2%、オーストラリア、ヨーロッパ諸国では約2~7%と報告されています。

検査

転移病巣の部位と病理組織より原発巣が推定できる場合があるので、その場合には原発巣が疑われる部位の精査を中心に進めます。

一般的に行われる検査は、採血による血液像、血液生化学、一般検尿、腫瘍マーカー、胸腹部・骨盤部CT、上部下部消化管内視鏡検査が行われます。

全身に対し核医学検査(骨シンチグラフィー、FDG-PETなど)にて異常集積を認める部位を検索します。

また頭頚部(咽頭や喉頭、鼻腔など)、甲状腺に対する診察および画像的検索を行います。男性では泌尿器領域の精査、女性は乳癌精査目的でマンモグラフィーや婦人科癌(子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌など)に対する診察および画像的検索を行います。

さらに原発巣が疑われる部位により、気管支鏡、膀胱鏡、腹腔鏡などの内視鏡を用いた個別の検査を行います。

原因

原発不明がんを誘発する原因や発がんメカニズムなどは解明されておりません。

臨床像

原発不明がんは原発巣が臨床的に同定できる十分な大きさに増大する前に転移巣が発見される腫瘍であり、転移部位により様々な症状が起こります。

原発不明がんは様々な病理組織を示しますが、その中でも腺癌という組織が大多数を占めます。腺癌組織を認めた症例で経過中に原発巣が明らかになるものは15~20%と報告されています。死亡後に剖検(病理解剖)を行った際には、70~80%の症例で原発巣が同定され、膵臓や肺に原発巣を認める場合が多く、その他、胃、大腸などに原発巣を認めるものが報告されています。

原発不明がんは、肝臓、肺、骨、リンパ節に認める場合が多く報告されています。

症状

1)リンパ節腫大

頸部、腋窩部、鼠径部などの体表リンパ節を触知することがあります。

2)胸水、腹水

胸水の貯留により胸痛や息苦しさが出現します。また、腹水の貯留により腹部の張りや膨隆を認めます。

3)肺腫瘍、肝腫瘍

肺腫瘍では咳・胸痛、肝腫瘍では肝臓腫大による上腹部不快感・腹痛・上腹部腫瘤などを認めます。

4)骨転移

骨に痛みが生じたり、骨折が生じたりする場合があります。骨折で整形外科に入院し、がんと診断されることがあります。また骨病変が神経を圧迫して、神経痛・しびれ・麻痺などを生じることがあり、そのような神経症状が初発症状で病院を受診する場合があります。

病期

臓器別に発生するがんは進展によって病期(ステージ)分類がなされていますが、原発不明がんは転移から認めるがんであるため、病期分類がなされていません。

治療

治療法は組織型や病変の部位によって異なりますので、個々の症例によって治療法が選択されます。

原発不明がんのほとんどの症例で用いられるのは化学療法です。薬剤は組織型や病変の部位によって決定されます。限局性に存在している病変に対しては、放射線治療を行ったり、外科手術を行ったりします。

それ以外にもホルモン療法やがんの栄養血管を止める塞栓術などが用いられます。

症例数が少ない中で、症例を収集し今後の治療方法の確立を進めていかなければなりません。

予後

症例数が少ないため原発不明がんの予後は明確なものはありませんが、一般的に予後不良群が多く見られます。生存期間中央値は約3-4ヶ月から11ヶ月と報告によるばらつきがあります。5年生存率は約10%として報告されているものを多く認めます。しかし中には長期生存例が認められており、組織型や病変部位に依存するものと考えられます。