胸腺腫瘍
1.胸腺とは
胸腺は胸骨の裏に位置する小さな臓器で、思春期に最大となり、その後は年齢とともに萎縮します。免疫機能を担うリンパ系の一部です。胸腺はリンパ球と呼ばれる白血球をつくっており、リンパ球は感染から体を守ります。
2.胸腺腫瘍とは
胸腺腫瘍は、頻度の少ない稀な腫瘍です。胸腺腫と胸腺がんの二つに分けられます。胸腺腫瘍の多くは胸腺腫です。胸腺腫の腫瘍細胞は、胸腺の正常な細胞に似ていますが、ゆっくりと増殖し胸腺の外にはめったに広がりません。胸腺腫瘍の約15%が胸腺がんで、腫瘍細胞は胸腺の正常細胞と異なり急速に増殖し、しばしば体の他の部位に転移します。
3.症状
胸腺腫瘍の多くは症状がありません。腫瘍は、定期的な胸部X線検査において発見されることがあります。胸腺腫瘍によって、持続する咳、胸部痛、呼吸困難が引き起こされることがあります。
胸腺腫の患者さんが他の病気を持っている場合もあります。これらの病気として、重症筋無力症が代表的ですが、その他に多発性筋炎、紅斑性狼瘡、関節リウマチ、甲状腺炎、シューグレン症候群、低ガンマグロブリン血症があります。
4.診断
胸部X線検査:
胸部全体の様子を確認します。おおよその腫瘍の大きさや胸水と呼ばれる胸腔に溜まった体液の有無などがわかります。
CTスキャン:
腫瘍の大きさ、位置、周辺臓器とのかかわりなど多くの情報が得られます。造影剤を静脈に注射することによる臓器や組織をよりはっきり確認できます。
MRI(核磁気共鳴画像法):
腫瘍の性質や周辺臓器への浸潤の有無などを評価できます。
生検:
病理診断のために利用されます。多くの場合は手術前にCTで位置を確認しながら、細い針を使用して行われます。病理医がサンプルを顕微鏡で観察して診断します。
5.進行度
正岡病期分類が広く用いられています。
非浸潤型胸腺腫(I期)
腫瘍が胸腺内に限局している。
浸潤型胸腺腫(II、III、IV期)
浸潤型胸腺腫は、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ期があります。
- Ⅱ期 腫瘍は胸腺周囲の脂肪組織や胸腔表面層におよびます。
- Ⅲ期 腫瘍は肺や心嚢、心臓へ血液を運ぶ心血管といった胸郭に近接する臓器におよびます。
- Ⅳ期では、腫瘍の進行具合により、IVA期とIVB期に分けられます。
- IVA期では、腫瘍は肺や心臓の周囲にまで広く拡大しています。
- IVB期では、腫瘍は血管やリンパ系にまで拡大しています。
胸腺腫に使用される病期分類システムは、胸腺がんに使用されることもあります。
6.治療
- (ア)手術療法
- (イ)放射線療法
- (ウ)化学療法・ホルモン療法
手術療法
腫瘍を取り除く手術療法は、胸腺腫瘍の基本的な治療法です。
手術の際に目にみえる腫瘍をすべて摘出したとしても、なお腫瘍細胞が残るため手術後に放射線療法の行われることがあります。治癒の可能性を高めるために手術後に行われる治療法を術後補助療法といいます。
放射線療法
放射線療法は、放射線を用いて腫瘍細胞を死滅させるかまたは成長を止める治療です。通常一回に1.8~2グレイ(Gy)の照射を数十回に分けて、計45~50グレイの線量を用います。
化学療法・ホルモン療法
化学療法は、薬剤を用いて腫瘍細胞を死滅させるか細胞分裂を停止させることで腫瘍の増殖を停止させる治療です。ホルモン療法についても同様の効果が期待できます。化学療法やホルモン療法に用いる薬剤は腫瘍の種類や病期によって異なります。状態により1剤から3剤の薬剤を用いて治療が行われています。効果と副作用について主治医とよく相談して決める必要があります。
7.予後
外科的切除により比較的良い治療効果が得られます。かなり時間がたってから再発することもあるので、長く経過観察していく必要があります。