精巣腫瘍とは
精巣腫瘍は男性の悪性腫瘍の1%を占め、15才から34才までの間で最も頻度の高い腫瘍です。腫瘍の多くは片方の精巣の中に、硬いしこりとして触知され、通常、触っても痛みを感じません。発熱や体調の変化をきたすこともまれであり、結果として働き盛りの忙しい世代の中にあって、ついつい病院に訪れる機会を逸してしまいがちです。
精巣の腫瘍の90%以上は、精子になる前段階の細胞が癌化したと考えられています。精子はヒトのからだのすべてを形成する能力を持った細胞ですから、癌化した細胞もいろいろな種類の腫瘍を形成してきます。
腫瘍細胞はその細胞に特有な種々の蛋白(腫瘍マーカー)を産生し、これらが血液中に移行します。その結果、採血することで腫瘍細胞の存在を知ることができます。
診断は泌尿器科専門医による触診により、大部分の症例はその場で精巣腫瘍が疑われ、次の検査、すなわち超音波検査に進みます。超音波検査では一般に低エコー領域として描出され、正常な精巣組織との判別は容易です。
精巣の生検は針をさすことによる播種や転移の危険性を否定できないこと、さらに腫瘤は大部分が悪性であることが知られていますので通常行われません。
治療としては、まず患側精巣の摘除術が行われます。この結果、腫瘍の組織型が明らかになり、その後の治療方針を決める重要な情報を得ることになります。
腫瘍の組織型
セミノーマ(seminoma)と非セミノーマに大別されます。非セミノーマには絨毛癌(choriocarcinoma), 卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor), 胎児性癌(embryonal carcinoma)の組織型があり、こられの単一あるいは混合組織の腫瘍が存在します。
病期とその治療について
I 期:精巣に限局している;
精巣に限局する腫瘍の予後は極めて良好なので経過観察することがほとんどです。セミノーマは放射線に対する感受性が高いので、再発予防効果を期待して腹部(後腹膜リンパ節)に照射を行う選択肢があります。
II期:横隔膜以下のリンパ節にのみ転移を認める。
セミノーマ;放射線治療、あるいは化学療法
非セミノーマ;化学療法、必要により後腹膜リンパ節廓清術
III期:横隔膜を越えたリンパ節転移、さらには他の臓器(肺、肝、骨など)に転移を認める。
セミノーマ、非セミノーマとも化学療法、必要により後腹膜リンパ節廓清術、転移巣摘出術
予後(5年生存率)
I 期:98%以上
II期:90%以上
III期:40〜90%(転移臓器の部位や腫瘍マーカーの値による)
働き盛りの男性に発症するまれな腫瘍です(北陸地方での発生率は年間10万人あたり2.4人)。早期発見、早期治療が大事であることは言うまでもありませんが、万一、転移が存在していても適切な化学療法が行われれば、8割程度の治癒率が期待されます。
