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口腔がん(こうこうがん)

1.口唇がん、口腔がんとは

口唇がんおよび口腔がんは、口唇または口腔内に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

口腔は:

  • 舌の前方の3分の2の部分
  • 歯肉
  • 頬粘膜(頬の裏側の表面の層)
  • 口腔底(舌の下方にある口腔の底の部分)
  • 硬口蓋(口腔の天井の部分)
  • 臼後三角(親知らずの後方の小さな領域)

より構成されています。

口唇がんおよび口腔がんの大部分は、扁平上皮細胞(口唇および口腔の表面を覆っている薄く扁平な形をした細胞)から発生したものです。このようながんは扁平上皮がんと呼ばれます。がん細胞は、腫瘍の成長につれてより深部の組織へと拡がっていくことがあります。扁平上皮がんは、白板症(摩擦によっても除去できない白色で斑状の細胞塊)の部分から発生してくるのが通常です。

口唇がんと口腔がんの発生リスクを高める要因に、喫煙と飲酒があります。

また日光に暴露したりすることも危険因子の一つです。男性の方が頻度が高いといわれています。近年ヒトパピローマウイルス(HPV)というウィルスに感染していることも口腔がんの原因となるといわれています。

2.症状

口唇がんか口腔がんの徴候として考えられるものに、口唇または口腔内のただれやしこりがあります。 もしくは同じ部位の痛みやしびれ、出血も考えられます。

歯肉、舌、口腔内部の表面層などにできた白色または赤色の斑点も徴候の一つとしてあげられます。

また、歯のぐらつきや義歯の不適合、噛む、飲み込む、舌や顎を動かすなどの動作の違和感や痛み、下顎の腫れなどから発見されることもあります。

口腔がんでは、まったく症状が現れてこない場合もありますが、通常の耳鼻咽喉科、歯科検診の際に発見されることも時折みられます。

3.診断

口唇がんと口腔がんの発見、診断および病期分類には、最初に口腔の身体診察を行います。医師または歯科医師が手袋をはめた手の指で口の内部を全体にわたって触れていき、さらに長い柄の付いた小さな鏡とライトを用いて頬と唇の内側;歯肉;口腔の底と天井の部分;舌の上面、下面、側面が調べられます。さらにリンパ節の腫れを調べるために、頸部の触診も行います。患者さんの健康習慣や過去の病歴、治療歴(歯科治療も含む)も調べます。

1)内視鏡検査

体内の臓器や組織を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法です。内視鏡(ライトの付いた細い管)を鼻や口などから挿入します。検査による痛みを軽減するため麻酔薬の噴霧により局所麻酔を行ってから行います。口腔や舌、咽頭方向への進展がないかを調べます。

2)生検

細胞や組織を採取し、それを病理医が顕微鏡で観察する検査です。白板症が認められる場合には、その斑点部分から採取された細胞についても、がんの徴候を調べるための顕微鏡による検査が行われます。通常は局所麻酔により鉗子やメスなどの器具を使って採取します。

3)頸部および胸部のX線検査

X線とは放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルムには体内領域の画像が映し出されます。口腔腫瘍がある場合下顎の骨などに進展がないかこれを用いて調べることがあります。またあわせて胸部レントゲンを施行して胸の中への転移などがないか調べることもあります。

4.病期(ステージ)

口唇がんあるいは口腔がんと診断されると、がんが肺から他の臓器に広がっていないかどうか、さらに詳しい検査が必要になります。

通常行われる検査としては、頭頸部CTあるいはMRI検査(磁石の原理を応用した磁気共鳴装置と呼ばれる機械を使った検査)、胸部のCTに加え、最近では感度と特異性の高いPET(ペット)検査(放射性同位元素を用いた検査)を行います。また、一般の血液検査に加え、腫瘍マーカーと呼ばれるがん細胞によって産生される物質の検査も行います。一般的には扁平上皮がんで上昇することの多いシフラ、SCCを測定します。

1)口唇がんと口腔がんの病期

がんの口唇および口腔内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この病期分類の過程で集められた情報を基に病期が判定されます。治療計画を立てる上では病期を把握しておくことが重要になります。口唇がんと口腔がんでは、診断の際に実施された検査の結果が病期分類の際にも用いられます。

0期(上皮内がん)

口唇および口腔の表面を覆っている細胞の層のみにがんが認められます。0期のがんは上皮内がんとも呼ばれます。

I期

腫瘍の大きさが2cm以下で、リンパ節へのがんの転移はありません。

II期

腫瘍の大きさが2cmを超えますが4cm以下で、リンパ節へのがんの転移はありません。

III期

腫瘍の大きさに関係なく、がんと同側にある大きさ3cm以下の頸部リンパ節1つに転移している段階、または腫瘍の大きさが4cmを超えている段階です。

IVA期

口唇および口腔内の周辺組織に拡がっている段階です。または大きさは様々で、口唇および口腔内の隣接組織に拡がっている状態で、その上でがんが頸部の片側または両側にあるリンパ節の1つまたは複数に転移している状態です(ただし、それらのリンパ節の大きさは6cmを超えない状態です)。

IVB期

腫瘍の大きさには関係なく、がんに侵されたリンパ節に大きさが6cmを超えるものが存在する状態です。または口腔内の筋肉または骨に拡がっている、もしくは頭蓋底および/または頸動脈に拡がっている状態です。頸部の片側または両側のリンパ節にもがんが転移していることがあります。

IVC期

口唇および口腔の腫瘍が体の他の部位に転移している。腫瘍の大きさは様々で、リンパ節への転移がみられる場合もあります。

2)再発口唇がんと再発口腔がん

再発口唇がんや再発口腔がんとは、治療後に再び悪化(再発)したがんのことをいいます。再発は、口唇や口腔に起こることもあれば、体の別の部位に起こることもあります。

5.治療

がんのある場所、がんの組織型、病期、今までにかかった病気や現在かかっている病気、心臓、肺、腎臓や肝臓などの臓器の機能や、一般的な健康状態に基づいて治療の方法を選択します。

口唇がんや口腔がんの患者さんには様々な治療法が存在します。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。

1)外科療法

口唇がんと口腔がんでは、全ての病期で手術(外科的な手法でがんを取り除く治療法)が一般的な標準治療法となっています。手術法には以下のようなものがあります:

  • 広範囲局所切除術:がん全体と周囲の正常組織の一部を切除する手術法。がんが骨まで拡がっている場合には、侵されている骨組織の切除も行われることがあります。
  • 頸部郭清術:頸部リンパ節と頸部のその他の組織を切除する手術。この手術は、がんが口唇や口腔の外部まで拡がっている場合に実施されます。
  • 形成手術:体の一部の再建やその外観の改善を行う手術。大きな腫瘍を切除した場合には、口腔の一部や咽頭、頸部などを修復するために、歯科インプラントや皮膚移植などの形成手術が必要になることがあります。
  • たとえ医師が手術の際に確認できる全てのがんを切除したとしても、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させるために、術後に化学療法や放射線療法を実施する場合があります。このように治癒の可能性を高めるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

2)放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。

喫煙習慣のある患者さんでは、治療開始前までに喫煙をやめることができれば放射線療法の効果が大きくなります。

3)抗がん剤による化学療法

化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。動脈内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。

6.病期(ステージ)別治療

1)I期の口唇がんと口腔がん

I期の口唇がんと口腔がんの治療法は、口唇および口腔内でのがんの位置によって異なってきますが当院での第一選択の治療は手術(広範囲局所切除術)です。これに外照射による放射線療法が代替となったり、術後追加されることがあります。

2)II期の口唇がんと口腔がん

II期の口唇がんと口腔がんの治療法は、口唇および口腔内でのがんの位置によって異なってきますが当院での第一選択の治療は手術(広範囲局所切除術)です。これに外照射による放射線療法が代替となったり、術後追加されることがあります。

3)III期の口唇がんと口腔がん

III期の口唇がんと口腔がんの治療法は、口唇および口腔内でのがんの位置によって異なってきますが、当院での第一選択の治療は、手術(広範囲局所切除術)とその後の放射線療法です。口腔底や下顎、臼後三角の部位で骨浸潤が疑われる例では下顎骨の一部を切除し形成しなおす手術も含まれることがあります。

リンパ節へ転移したがんに対する治療法には、放射線療法または手術(頸部郭清術)、もしくはその両方が施行されます。

また手術療法の代替として放射線療法と化学療法が施行されることがあります。化学療法の方法は全身的にくすりを投与する場合と動脈より局所的にくすりを投与することで局所に集中的にくすりをいきわたらせる治療があります。

一部の舌の前部にできた口腔がんでは動脈より化学療法を行いながら外照射の放射線療法を行う臨床試験に参加ができます。

また治療終了後に再発予防のための内服抗がん剤の臨床試験に参加することもできます。

4)IV期の口唇がんと口腔がん

IV期の口唇がんと口腔がんの治療法は、口唇および口腔内でのがんの位置によって異なってきますが、標準的な治療は、手術(広範囲局所切除術)とその後の放射線療法です。口腔底や下顎、臼後三角の部位で骨浸潤が疑われる例では下顎骨の一部を切除し形成しなおす手術も含まれることがあります。舌にできた場合、手術後のみこみができなくなることが予想される場合、のみこみをよくする手術、場合によっては喉頭を摘出する手術が併用されることもあります。

リンパ節へ転移したがんに対する治療法には、放射線療法または手術(頸部郭清術)、もしくはその両方が施行されます。

手術療法の代替としては放射線療法と化学療法が施行されることがあります。化学療法の方法は全身的にくすりを投与する場合と動脈より局所的にくすりを投与することで局所に集中的にくすりをいきわたらせる治療があります。

一部の舌の前部にできた口腔がんでは動脈より化学療法を行いながら外照射の放射線療法を行う臨床試験に参加ができます。

また治療終了後に再発予防のための内服抗がん剤の臨床試験に参加することもできます。

IV期ではがんによる症状を認めることも多いため痛みなどの症状を緩和する治療も重要と考えられています。近年の症状緩和の技術はかなり進歩しておりかなりの症状を抑えることができます。特に痛みに対してはモルヒネを中心とした治療で十分に痛みをとることができます。

5)再発口唇がんと再発口腔がん

再発口唇がんと再発口腔がんの治療法には、以下のようなものがあります。

以前の治療法が放射線療法であった場合には、手術が考慮されます。また以前の治療法が手術であった場合には、手術または放射線療法、もしくはその両方。放射線治療を行う場合には化学療法を併用することがあります。

骨転移などに対しては症状緩和のため骨への放射線療法が行われることがあります。その他モルヒネなどの痛み止めを用いて症状緩和、内服抗がん剤や少量の抗がん剤投与による休眠療法(がんを眠らせて増大させない療法)などが行われることがあります。

7.治療の副作用と対策

がんに対する治療は、がん細胞のみならず、同時に正常な細胞も障害を受けることは避けられませんので、副作用・後遺症を伴います。医師はできるだけ副作用を軽減すべく努力していますが、治療に伴い種々の副作用があらわれることがあります。

1)外科療法

手術をした結果、手術後半年~1年間の創部痛を伴うことがあります。特に舌にできた場合、手術により欠損部が大きいと手術後ものののみこみが悪くなったり、はっきりとしゃべることができなくなることが生じることがあります。

2)放射線療法

主な副作用は、放射線による一種の火傷(やけど)で、放射線治療中及び治療の終わりころから症状が強くなる口内炎、食道炎、皮膚炎です。口内炎、食道炎の症状は、口内の痛みや乾き、特に固形物の通りが悪くなり、強い場合は痛みを伴います。ひどい口内炎、食道炎に対しては、放射線治療の延期・中止を行い、痛みを伴う場合は食事・飲水制限をして、痛み止め剤の服用や栄養剤の点滴静注をします。かゆみを伴う皮膚炎(発赤や皮がむける)に対しては、軟こう剤を使用します。

3)抗がん剤による化学療法

抗がん剤による副作用は、用いる抗がん剤の種類によって異なり、発現頻度・程度にも個人差があります。副作用は自分でわかる自覚的なものと、検査などによってわかる他覚的なものに大別されます。自覚的な副作用には、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、全身倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、脱毛などがあります。他覚的な副作用には、白血球減少、貧血、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、肺障害などがあります。その他、予期せぬ重篤な副作用があらわれ、まれに命にかかわることもあります。

白血球減少が高度な場合、易感染性による感染症の合併を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)と呼ばれる遺伝子工学でつくられた白血球を増やす薬を皮下注射することがあります。貧血、血小板減少が高度な場合、まれに輸血を行うこともあります。主に抗がん剤の投与日から数日間にわたってあらわれる吐き気・嘔吐に対しては、吐き気止めの薬を点滴静脈注射します。脱毛、末梢神経障害に対する効果的な治療法はいまだ開発されておりません。これらの副作用の大半は一時的なものであり、脱毛、末梢神経障害を除き、治療開始後2~4週間で回復します。

8.口唇、口腔がんの生存率・予後

口腔、口唇がんの生存率については施設により様々な報告があります。

舌にできたものの国内での報告は多く、ステージ Iでは5年生存率は76−100%、IIでは67−76%、IIIで48—56%、IVでは22−32%と報告されており平均すると60.9%とされています。

舌以外の部位では発見がはやいこともあるためか5年生存率はおおむね60−70%とされていますが、上歯肉にできたものは50%前後でやや悪いようです。