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非小細胞肺がん(ひしょうさいぼうはいがん)

1.肺がんとは

1)肺の構造と働き

肺は身体の中に酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する重要な臓器で、左肺と右肺の合計2つあります。右肺は葉と呼ばれる3つの部分(上葉、中葉、下葉)に、左肺は2つの部分(上葉と下葉)に分かれています。空気は口と鼻から咽頭・喉頭を経て気管を通り、気管支と呼ばれる左右の管に分かれ左右の肺に入ります。気管支は肺の中で細気管支と呼ばれるより細い管に枝分かれし、その末端は酸素と二酸化炭素を交換する肺胞と呼ばれる部屋となっています。

2)肺がんの発生

肺がんは気管、気管支、肺胞の細胞が正常の機能を失い、無秩序に増えることにより発生します。最近、がんの発生と遺伝子の異常についての研究が進んでいますが、細胞がなぜがん化する(無秩序に増える悪性の細胞にかわる)のかまだ十分わかっていません。がんは周囲の組織や器官を破壊して増殖しながら他の臓器に広がり、多くの場合、腫瘤(しゅりゅう)を形成します。他の臓器にがんが広がることを転移と呼びます。

3)肺がんの統計

わが国においてがんで亡くなる人の数は年々増加していますが、がんの発生部位別にみてみると1998年以降肺がんが第1位になっています。2005年には約6万2千人もの人が肺がんのために亡くなっており、今後も増加することが危惧されています。肺がんの罹患(りかん)率、死亡率を年齢別にみてみると、ともに40歳代後半から増加し始め、高齢になるほど高くなります。男女別では男性のほうが罹患率、死亡率ともに3倍以上多く、発生部位別死亡数は男性で第1位、女性で第2位となっています。

4)肺がんの組織分類

肺がんは組織学的に、小細胞がんと非小細胞がんの2つに大別されます。 非小細胞肺がんは、肺がんの約80%を占めますが、さらに腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分類されます。腺がんは、我が国で最も発生頻度が高く、その性質も多彩で進行の速いものから進行の遅いものまでいろいろあります。次に多い扁平上皮がんは、男性の肺がんの40%、女性の肺がんの15%を占めています。大細胞がんは、肺がんの5%程度ですが、一般に増殖が速く、肺がんと診断された時には大きな塊として見つかることが多い傾向にあります。

小細胞がんは肺がんの約15~20%を占め、増殖が速く、脳・リンパ節・肝臓・副腎・骨などに転移しやすい悪性度の高いがんです。しかし、非小細胞がんと異なり、抗がん剤や放射線治療が比較的効きやすいタイプのがんです。

5)肺がんの原因と予防

肺がんの原因として最も因果関係がはっきりしているのは喫煙です。喫煙者が肺がんになる危険性は非喫煙者と比較し10倍以上高いといわれています。組織型別では、扁平上皮がんと小細胞がんで特に喫煙との因果関係が強いといわれています。また、受動喫煙によっても、肺がんのリスクが20~30%程度高くなると推計されています。近年問題となっているアスベストも肺がんの原因となるといわれています。

2.症状

肺がんの症状としては、呼吸に関係したものが多くあります。頑固な咳や胸痛、呼吸時のゼーゼー音(喘鳴:ぜんめい)、息切れ、血痰、声のかれ(嗄声:させい)、顔や首のむくみなどがよくみられます。しかし、がんのできる部位や大きさにより症状が出にくい場合もあり、症状がないからといって安心はできません。

3.診断

咳、痰などの症状がある場合、最初に胸のレントゲン検査をします。次にがんかどうか、あるいはどのタイプの肺がんかを顕微鏡で調べるため、肺から細胞を集めます。通常は痰の中の細胞検査をします。

1)気管支鏡検査

気管支鏡は、内視鏡を鼻または口から挿入し、喉から気管支の中を観察し、組織や細胞を採取する検査です。検査に先だって、検査による喉や気管の痛みを軽減するため、口腔の奥まで局所麻酔を行います。太さ5mm程度の気管支鏡を使って、気管支の壁から細胞をとったり、組織の一部あるいは細胞を採取し、標本をつくって顕微鏡でがん細胞があるかどうか検査します。

2)CTガイド下肺針生検

コンピューターを使ったX線写真(CT)で目標を定め、針を病巣に命中させ組織をとります。採取した細胞を顕微鏡で検査します。 この検査の場合、病巣へ針を刺して細胞・組織をとるため、まれに肺の外に空気が漏れて肺が縮んでしまう場合があります(これを気胸(ききょう)といいます)。この気胸がおこらないかどうかを確認するため、数日間の入院が必要になる場合があります。

3)リンパ節生検

首のリンパ節がはれている場合、局所麻酔をしてリンパ節に針を刺して細胞を採取したり、外科的にリンパ節を採取します。採取した細胞・組織を顕微鏡下でがん細胞がないかどうか検査します。

4)その他の生検

以上のような検査でもはっきりとした診断がつかない場合、外科的に組織を採取します。外科的な方法には、縦隔鏡検査、胸腔鏡検査、胸を開く方法(開胸)があります。いずれも全身麻酔が必要となります。縦隔鏡検査は、首の下端の皮膚を切開し、縦隔鏡と呼ばれる筒状の器具を挿入し、気管周囲のリンパ節や近くに位置する腫瘍組織を採取するものです。胸腔鏡検査は、胸の皮膚を小さく切開し、そこから胸腔鏡と呼ばれる内視鏡を肺の外側(胸腔)に挿入し、肺や胸膜あるいはリンパ節の一部を採取するものです。採取した組織を顕微鏡でがん細胞がないかどうか検査します。

4.病期(ステージ)

肺がんと診断されると、がんが肺から他の臓器に広がっていないかどうか、さらに詳しい検査が必要になります。

通常行われる検査としては、脳のCTあるいはMRI検査(磁石の原理を応用した磁気共鳴装置と呼ばれる機械を使った検査)、胸部と腹部のCTに加え、最近では感度と特異性の高いPET(ペット)検査(放射性同位元素を用いた検査)を行います。また、一般の血液検査に加え、腫瘍マーカーと呼ばれるがん細胞によって産生される物質の検査も行います。一般的には、腺がんで上昇することの多いCEA、扁平上皮がんで上昇することの多いシフラ、小細胞がんで上昇することの多いPro-GRPを測定します。小細胞がんの場合、骨髄中のがん細胞の有無を検査する胸骨や腸骨からの骨髄液採取などを行うことがあります。

非小細胞肺がんの場合、がん病巣の広がりぐあいで病気の進行を潜伏がん、0、I、II、III、IV期に分類します。

0期

がんは局所に見つかっていますが、気管支をおおう細胞の細胞層の一部のみにある早期の段階です。

IA期

がんが原発巣にとどまっており、大きさは3cm以下で、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階です。

IB期

がんが原発巣にとどまっており、大きさは3cmを超えるものの、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階です。

IIA期

原発巣のがんの大きさは3cm以下であり、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移を認めますが、他の臓器には転移を認めない段階です。

IIB期

原発巣のがんの大きさは3cmを超え、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移を認めますが、他の臓器には転移を認めない段階です。あるいは、原発巣のがんが肺をおおっている胸膜・胸壁に直接およんでいますが、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階です。

IIIA期

原発巣のがんが直接胸膜・胸壁に広がっていますが、転移は原発巣と同じ側の肺門リンパ節まで、または縦隔と呼ばれる心臓や食道のある部分のリンパ節に認められますが、他の臓器には転移を認めない段階です。

IIIB期

原発巣のがんが直接縦隔に広がっていたり、胸膜へ転移をしたり(胸膜播種といいます)、胸水がたまっていたり、原発巣と反対側の縦隔、首のつけ根のリンパ節に転移していますが、他の臓器に転移を認めない段階です。

IV期

原発巣の他に、肺の他の場所、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合です。

5.治療

がんのある場所、がんの組織型、病期、今までにかかった病気や現在かかっている病気、心臓、肺、腎臓や肝臓などの臓器の機能や、一般的な健康状態に基づいて治療の方法を選択します。非小細胞肺がんの治療法として主に4種類のものがあります。外科療法、放射線療法、抗がん剤治療、分子標的治療です。

1)外科療法

肺がんが早期の場合に行われます。手術方法としては、①肺の患部を部分切除する場合、②肺葉切除(右肺は上葉、中葉、下葉と分かれ、左肺は上葉、下葉と分かれていますが、そのひとつか2つを切除すること)する場合、③片側の肺をすべて切除する場合があり、リンパ節にがんがあるかどうかを確認するためにリンパ節切除(リンパ節郭清といいます)も行います。非小細胞がんの場合、通常はI期からIIIA期の一部が手術の対象となりますが、心臓や肺の機能障害がある場合は手術ができないこともあります。小細胞がんの場合、I期などの極めて早期の場合のみが手術の対象となりますが、頻度的には極めて少なく、手術後には抗がん剤による化学療法を追加するが必要があります。

2)放射線療法

X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。非小細胞がんの場合は手術できないI期からIIIA期、胸水を認めないIIIB期、小細胞がんの場合は限局型が対象となります。肺がんの場合、通常は身体の外から患部である肺やリンパ節に放射線を照射します。一般的に1日1回週5回照射し、5~6週間の治療期間が必要です。最近では、小細胞肺がんに対しては1日2回週10回照射する加速多分割照射が行われています。さらに、がん病巣のみを集中的に治療し、副作用を軽減する放射線療法も行われています。小細胞がんは脳へ転移する場合が多く、脳へ転移するのを防ぐ目的で脳放射線治療が行われることがあります。これを予防的全脳照射といいます。

3)抗がん剤による化学療法

抗がん剤の種類はたくさんあり、点滴として使うものがほとんどですが内服薬もあります。抗がん剤は全身に行き渡り細胞分裂がさかんながん細胞に取り込まれることによってがん細胞を殺します。小細胞肺がんではよく効きますが、非小細胞肺がんでは効きにくい場合が多く、抗がん剤のみで肺がんを治癒させることは困難です。抗がん剤治療はだいたい1ヶ月が1セットで、効果があれば繰り返し行います。初回治療としては2つの薬剤を併用するのが一般的ですが、病状よっては1つの薬剤のみで治療する場合もあります。薬によって副作用の出方も異なるので、その使用には医師と十分相談する必要があります。

4)分子標的治療

がんの増殖や進展に関わる分子を標的に設計された薬剤を分子標的薬といい、分子標的薬を用いた治療を分子標的治療といいます。肺がんに対しわが国で保険で認められた分子標的薬としては、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的としたゲフィチニブ(商品名イレッサ)とエルロチニブ(商品名タルセバ)があります。対象は手術不能または再発した非小細胞肺がんのみです。いずれも経口薬で、非小細胞肺がん患者さんの約20%にがんが半分以下に縮小するという効果が得られ、約50%の患者さんで何らかの症状改善が認められます。ゲフィチニブは2004年からわが国で使われていますが、タルセバは2007年12月から使えるようになったばかりです。タルセバは、海外の臨床試験において延命効果が証明されています。副作用としては、いずれの薬も、皮疹やつめの変形、下痢、肝障害がよく起こりますが、最も注意を要するのは急性肺障害・間質性肺炎です。100人中5~6人の患者さんに発生するといわれ、いったん急性肺障害・間質性肺炎が起こると約4割の患者さんが死亡する恐れがあります。使用に当たっては、他の治療法と同様医師とよく相談する必要があります。

内視鏡治療

気管支の内腔に発生した肺門型の肺がんに行われます。気管支鏡で見える範囲のがんにレーザー光線を照射して治療します。副作用、後遺症はまれですが、極めて限られた方が対象になります。この他「光線力学的療法」といってがん組織に取り込まれやすく光に反応しやすい化学薬品を投与後、ある種のレーザー光線を照射し肺門部の早期肺がんを選択的に治療する方法もあります。

6.病期(ステージ)別治療

1)非小細胞肺がん

治療は主に病期により決定されます。同じ病期でも、全身状態、年齢、心臓・肺機能などによって治療が異なる場合があります。

0期

次の治療のいずれかが選択されます。

  • 外科療法
  • 内視鏡治療

I期

次の治療のいずれかが選択されます。

  • 外科療法
  • 放射線療法(外科手術が適切でない場合)
  • 外科療法とその後に抗がん剤による化学療法(術後化学療法)

II期

次の治療のいずれかが選択されます。

  • 外科療法
  • 放射線療法(外科手術が適切でない場合)
  • 外科療法とその後に抗がん剤による化学療法(術後化学療法)

最近、手術を行いIB~IIIA(病理病期;手術の結果を含めた病期)と判断された患者さんに対して術後化学療法を行うと、手術のみに比べ治療成績がよいという臨床試験の結果がいくつか報告されるようになりました。

IIIA期

次の治療のいずれかが選択されます。

  • 外科療法
  • 外科療法と放射線療法の併用療法
  • 外科療法とその後に抗がん剤による化学療法(術後化学療法)
  • 抗がん剤による化学療法後(放射線療法を組み合わせる場合もある)に手術する併用療法(おもに臨床試験においてなされます)
  • 放射線療法と抗がん剤による化学療法の併用療法(手術が適切でない場合)
  • 放射線療法(外科手術や化学療法が適切でない場合)

IIIA期の非小細胞がんの治療において、手術、放射線、抗がん剤をどのように組み合わせて使用するのが最もよいかについてはいまだ結論が出ておらず、臨床試験において安全性や有効性が検討されつつある状況です。縦隔のリンパ節に転移のある場合は、放射線療法と化学療法の併用療法が治療の第一選択になるとともに、手術の意義を明らかにする臨床試験も行われています。

IIIB期

次の治療のいずれかが選択されます。

  • 抗がん剤による化学療法
  • 抗がん剤による化学療法と放射線療法の併用療法
  • 放射線療法

IIIB期の非小細胞がんで胸膜播種及び胸水貯留を認めない場合は、抗がん剤による化学療法と放射線療法の併用療法が選択されます。化学療法と放射線療法を同時に組み合わせる場合、副作用が強くなる場合が多く、体力が十分でない場合は化学療法を先行して行い、その後に放射線療法を追加する治療法か、または放射線療法単独が望ましい場合もあります。胸膜播種及び胸水貯留を認める場合は、抗がん剤による化学療法が選択されます。多量の胸水貯留を伴っている場合、胸水を排液し、肺が十分に拡張したことを確認してから、肺と胸壁を癒着させる薬を胸腔内に注入し、胸水が再びたまらないような治療を行います。これを胸膜癒着療法といいます。胸水排液・胸膜癒着療法で胸水コントロールした後に、抗がん剤による化学療法が検討されます。

IV期

次の治療のいずれかが選択されます。

  • 抗がん剤による化学療法
  • 脳転移や骨転移に対する放射線療法
  • 痛みや他の苦痛に対する症状緩和を目的とした緩和療法

通常、IV期では手術を行うことはなく、抗がん剤による化学療法が選択されます。しかしながら、非小細胞がんは抗がん剤が効きにくく、一時的にがんが縮小することもありますが、現状では抗がん剤のみでがんを治すことは不可能です。このため、治療成績向上を目指して、化学療法に関する多くの臨床試験が進められています。また、発現頻度・程度については個人差があるものの、抗がん剤にはかなりの副作用があるため、全身状態が不良の場合には化学療法ができないこともあります。骨転移や脳転移などの遠隔転移による症状が認められる場合には、それぞれの転移病巣部に対して放射線療法が行われることがあります。

IV期ではがんによる症状を認めることが多く、痛みや呼吸困難などの症状を緩和するための治療も重要になります。近年の症状緩和の治療技術はかなり進歩してきており、多くの症状を軽減することが可能となっています。痛みに対してはモルヒネを中心とした治療を行うことで、8割以上は十分に痛みをとることができます。

再発

非小細胞がんが再発、増悪した場合は、再発した部位、症状、初回治療法及びその反応などを考慮して治療法を選択します。分子標的薬としてイレッサやタルセバが使用できます。女性、腺がん、非喫煙者の患者さんには有効な場合が多いといわれています。
抗がん剤の化学療法も1剤または2剤を併用し行うことができます。

骨転移や脳転移に伴う症状緩和には、骨や脳への放射線療法が行われます。その他、ホルモン剤、モルヒネなどの痛み止めを用いる症状緩和のための治療が選択されます。

7.治療の副作用と対策

がんに対する治療は、がん細胞のみならず、同時に正常な細胞も障害を受けることは避けられませんので、副作用・後遺症を伴います。肺がんも同様であり、特に、小細胞がんは急速に進行し致命的になりうるので、この病気に対する治療は強力に行う必要があり、そのため副作用も強くあらわれることがあります。医師はできるだけ副作用を軽減すべく努力していますが、治療に伴い種々の副作用があらわれることがあります。

1)外科療法

肺を切除した結果、息切れや、手術後半年~1年間の創部痛を伴うことがあります。そのため手術後はライフスタイルをかえる必要のある場合がまれにあります。

2)放射線療法

主な副作用は、放射線による一種の火傷(やけど)で、放射線治療中及び治療の終わりころから症状が強くなる肺臓炎、食道炎、皮膚炎です。肺臓炎の初期症状は、咳・痰の増加、微熱、息切れです。肺臓炎の治療には、ステロイドホルモン剤を使用する場合があります。炎症が強く出た場合、長い間咳や息切れが続くことがあります。胸のレントゲン写真では、黒く写っていた肺が白くなり、侵された肺は小さくなります。これを放射線肺線維症(はいせんいしょう)と呼びます。食道炎の症状は、特に固形物の通りが悪くなり、強い場合は痛みを伴います。食道炎に対しては、放射線治療の延期・中止を行い、痛みを伴う場合は食事・飲水制限をして、痛み止め剤の服用や栄養剤の点滴静注をします。かゆみを伴う皮膚炎(発赤や皮がむける)に対しては、軟こう剤を使用します。

3)抗がん剤による化学療法

抗がん剤による副作用は、用いる抗がん剤の種類によって異なり、発現頻度・程度にも個人差があります。副作用は自分でわかる自覚的なものと、検査などによってわかる他覚的なものに大別されます。自覚的な副作用には、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、全身倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、脱毛などがあります。他覚的な副作用には、白血球減少、貧血、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、肺障害などがあります。その他、予期せぬ重篤な副作用があらわれ、まれに命にかかわることもあります。

白血球減少が高度な場合、易感染性による感染症の合併を防ぐため、白血球増殖因子(G-CSF)と呼ばれる遺伝子工学でつくられた白血球を増やす薬を皮下注射することがあります。貧血、血小板減少が高度な場合、まれに輸血を行うこともあります。主に抗がん剤の投与日から数日間にわたってあらわれる吐き気・嘔吐に対しては、吐き気止めの薬を点滴静脈注射します。脱毛、末梢神経障害に対する効果的な治療法はいまだ開発されておりません。これらの副作用の大半は一時的なものであり、脱毛、末梢神経障害を除き、治療開始後2~4週間で回復します。

4)分子標的治療

がんに選択的に働くように設計された分子標的薬ですが、抗がん剤と同様に様々な副作用が出ます。上皮成長因子受容体を標的としたイレッサやタルセバは、皮疹やつめの変形、下痢、肝障害がよく起こりますが、最も注意を要するのは急性肺障害・間質性肺炎です。100人中5~6人の患者さんに発生するといわれています。急性肺障害・間質性肺炎が起った場合には直ちにイレッサやタルセバの服用をやめ、肺炎の程度にもよりますがステロイドホルモンを大量に使った点滴で治療します。しかし、約4割の患者さんが死亡する恐れがあります。