がんプロ.com

小児期の悪性リンパ腫(しょうにきのあくせいりんぱしゅ)

悪性リンパ腫は小児の固形腫瘍のなかで4番目(米国では3番目)の頻度である。わが国ではホジキンリンパ腫は11%に過ぎず,非ホジキンリンパ腫が89%を占めるが、欧米ではホジキンリンパ腫が40%を占める。

I. ホジキンリンパ腫

小児のHodgkin’s lymphoma(HL)は男児に多く,3歳以下はまれである。悪性で多核の大きなReed-Sternberg細胞(ホジキン細胞)とともに,多型性をもったリンパ球の浸潤を特徴とする。芽中心のB細胞由来とされるが,免疫グロブリンは産生しない。臨床症状は無痛性のリンパ節腫大で頸部や鎖骨上に多い。炎症性に腫大したリンパ節より硬く,ゴム様である。縦隔腫大も認める。全身症状として発熱,盗汗,やせなどが特徴であるが,ホジキン細胞から分泌されるサイトカイン(TNF, IL-1, IL-6など)による。EBウイルスの陽性率は10歳以下で比較的高いが,腫瘍組織で証明されるのは15〜20%である。

近年は画像診断による病期分類が正確になり,外科的手段は少なくなった。化学療法としてはcyclophosphamide, procarbazine, vincristine, prednisone, doxorubicin, bleomycinなどの併用療法が有効で,若い病期では90%以上の治癒率がある。放射線療法も有効であるが,小児では晩期後遺症のため控えられる。

II. 非ホジキンリンパ腫

本症non-Hodgkin’s lymphoma(NHL)は小児期悪性腫瘍の約7%を占める。5~14歳を中心に発症がみられる。小児のNHLは成人の場合と大きく異なり,そのほとんどがびまん性で悪性度の高い組織型で,節外原発が多く,腫瘍の増大とともに,比較的速くに骨髄や中枢神経系への浸潤がみられる。BまたはT細胞の幼弱型が多い。近年の化学療法の進歩により、5年生存率は約70%に向上している。

非ホジキンリンパ腫の細胞生物学的分類と臨床症状

悪性リンパ腫の分類は時代とともに、REAL分類からWHO分類へと変遷しているが,近年の細胞生物学的,免疫学的研究の進歩によって,小児NHLは次の三つに大別される。

  • (1)リンパ芽球型リンパ腫 lymphoblastic lymphoma(LBL)は小児NHLの約40%を占め,T細胞型が多い。前縦隔に腫瘍を認め,それによる呼吸困難,喘鳴,嚥下障害や頭頸部の腫脹(上大静脈症候群)が現れる。胸水貯留や横隔膜上のリンパ節腫脹もみられる。骨,皮膚,骨髄,頭蓋内浸潤もしばしばみられる。腹部,Waldeyer輪や睾丸原発は少ない。腹部原発NHLは後に述べるように,small noncleaved cell 型または大細胞型が圧倒的に多い。骨髄への浸潤では芽球が25%以上の場合は白血病と考え,25%以下の場合はNHLとしている。LBLは形態学的にT細胞型急性リンパ球性白血病の芽球と同じであり,TdTやT細胞マーカーを有する。CD10などのB前駆細胞マーカーを示す例は少ない。特異的な染色体異常は認められない。
  • (2)小細胞型リンパ腫:Burkitt型とnon-Burkitt型

    この群small noncleaved cell lymphoma(SNCC)には小児NHLの約40%が含まれ,特徴的な臨床症状を示す。ほぼ90%もの症例が腹部原発である。他のまれな原発部位としては,睾丸,Waldeyer輪のリンパ節,副鼻腔,骨,末梢リンパ節,皮膚,骨髄,中枢神経系(CNS)などである。ほとんどの症例はB細胞由来で,細胞表面に免疫グロブリンを発現している。IgMκまたはIgMλ型が多い。TdT陰性。CD10,CD19などのB細胞系マーカーもほとんどの例にみられる。約25%にEBウイルス遺伝子の存在が確認される。SNCC型では染色体異常としてt(8;14),まれにはt(8;22),t(2;8)転座が認められる。いずれもc-myc遺伝子が免疫グロブリン発現遺伝子の調節領域に接合し,異常な細胞増殖に関与している。

  • (3)大細胞型リンパ腫(Large cell lymphoma:LCL)

    この群は,単一性に乏しく多様性を示し、小児NHLの約20~25%を占める。LCLはT細胞系の未熟形成型 (anaplastic LCL:ALCL)と、B細胞系のび漫性大細胞型リンパ腫(diffuse LCL:dLCL)に分類され、それぞれ別々のプロトコールが開発されている。

    B細胞系LCLはさらに芽中心由来リンパ腫(large cleaved and large noncleaved)と免疫芽細胞型(immunoblastic)リンパ腫に分類されるが,両者の細胞病理学的診断はむずかしく,また臨床的意義も多分ないと思われる。B細胞系LCLは臨床的にもSNCCに似ているが,比較的限局性で骨髄やCNSへの浸潤は少ない傾向がみられる。

    T細胞系LCLはCD30(Ki-1)陽性のALCLと、peripheral T細胞型LCLに区分される。ALCLは大半がT細胞性であるが、null-cell型もみられる。90%にCD30陽性で、t(2;5)(p23;q35)が認められ、NPM-ALK融合蛋白が検出される。ALCLは臨床的にリンパ節および広く節外原発がみられる。とくに節外原発では,皮膚,骨が多く,さらに消化管,肺,胸膜,筋肉にもみられる。CNSや骨髄浸潤は少ない。しばしば発熱,やせなど全身的症状を示すことがあり,炎症性疾患や膠原病との鑑別診断が重要となることがある。これは,腫瘍細胞がマクロファージを刺激して,IL-6やTNFなど各種のサイトカインを放出するためと考えられている。

III. 病期分類

Murphyの分類を示す。限局性(腫瘍のみか所属リンパ節浸潤を含む)か,胸郭内または腹腔内浸潤を認める(III期)かで大別する。消化管原発で他の浸潤がなく,完全摘出できた場合はII期とし,予後は非常に良い。骨髄やCNS浸潤例は予後が最も悪く,IV期とされている。Children’s Cancer Group(CCG)の限局性,広範浸潤性の分類はMurphy分類のI/II期とIII/IV期にほぼ相当する。

  • I期:節外の限局性腫瘍,または限局性リンパ節腫瘍(腹腔内と縦隔は除く)
  • II期:所属リンパ節浸潤を伴う限局性腫瘍,横隔膜の一方側に限局する数個の節外腫瘍やリンパ節腫瘍,摘出可能な消化管腫瘍(所属リンパ節浸潤を伴うものも含む)
  • III期:横隔膜の両側に広がる節外およびリンパ節腫瘍,胸郭内原発および広範浸潤性腹腔内腫瘍,傍脊椎および傍硬膜腫瘍
  • IV期:原発部位にかかわらず,骨髄や中枢神経系浸潤の認められるもの。骨髄浸潤とは,5%以上の腫瘍細胞浸潤が認められる場合とする。25%以上の腫瘍細胞浸潤が認められるリンパ芽球性リンパ腫は白血病として扱い,白血病の治療研究に組み入れる。

IV. 治療

小児NHLでは,生命に直接関わる二つの緊急的臨床症状oncologic emergencyがある。一つは縦隔腫瘍で,気道閉塞を伴う上大静脈症候群がLBLにしばしば合併する。もう一つは急性腫瘍溶解症候群で,SNCCによくみられる。これらの緊急事態は常に前もって予測し,速やかにその対策を講じなければならない。

大きな縦隔腫瘍があるとき,全身麻酔や強い鎮静剤を使用した場合に心,呼吸停止に陥ることがある。挿管,抜管時とくに注意が必要である。CTスキャンで常に腫瘍の大きさを監視することが大切である。腫瘍溶解症候群では急激な細胞の崩壊により,高尿酸血症が生じる。大量の補液,尿のアルカリ化とアロプリノール投与を行う。高尿酸血症から尿路閉塞,腎不全となることがあるので,血液透析などに対処できる施設で治療を行わなければならない。高K血症,高P血症による低Ca血症にも注意する。

限局性のNHLでも,放射線照射療法のみより化学療法が有効で,しかも放射線照射療法は晩期の副作用が重篤な問題であることが指摘されている。 III/IV期のNHLでは放射線照射療法は補助的な効果しかないが,神経系浸潤,睾丸浸潤,上大静脈症候群や気道閉塞に対する緊急照射が有効である場合がある。ルーチンな放射線照射は適応なしとされている。

I/II期の限局性LBLの治療成績は良好で,5年無病生存率は80%以上である。CHOP(doxorubicin, cyclophosphamide, vincristine, prednisone)+ methotrexateが標準となり、国内外に有効なプロトコールが公表されている。CNS予防療法は頭頚部原発の患者に実施すべきだが,頭蓋放射線照射は必要ない。

III/IV期LBLでもBFMグループは良好な成績を報告している。再発例には造血幹細胞移植も考慮される。

I/II期SNCCはCOMP(cyclophosphamide, vincristine, methotrexate, prednisone)短期療法でも90%以上の生存率が期待される。 III/IV期SNCCはかつては最も予後不良群であったが,cyclophosphamide, methotrexate,cytocine-arabinosideの大量療法により長期生存率が70~80%と向上した。

RituximabはCD20抗原を標的とするマウス/ヒトキメラ抗体であるが、CHOP標準治療法と併用して、dLCLやBurkitt型に有効である。

Ki-1陽性のALCLでも,現在の治療法で60~80%の長期生存のチャンスがある。エトポシドも有効。t(2; 5)に関連する融合遺伝子産物のNPM-ALK(p80)蛋白の発現は若年層に多く,比較的予後良好である。

〈文献〉

  • 1)National Cancer Institute Cancer Topics. http://wwwicic.nci.gov/cancer topics
  • 2) Sandlund JT et al: Non-Hodgkin’s lymphoma in childhood. N Engl J Med 1996; 334: 1238-1248.
  • 3) Harris NL et al: World Health Organization classification of neoplastic diseases of the hematopoietic and lymphoid tissues; report of the Clinical Advisory Committee Meeting-Airlie House, Virginia, November 1997. J Clin Oncol 1999; 17: 3835-3849.