がんプロ.com

腎臓がん(じんぞうがん)

腎臓の構造と働き

腎臓は左右の一個ずつあります。背中の真ん中の高さぐらいにあり、お腹の表面からは深く、背骨の近くにあります。大きさは握りこぶし程度のそら豆のような形をした臓器です。

腎臓は血液をろ過して尿をつくる働きがあり、血管の塊のような臓器です。尿は腎実質でつくられ、腎盂に集められ、尿管を通って膀胱に運ばれます。尿をつくることにより、からだのミネラルのバランスをとりますが、それ以外にも血圧を調節する物質や赤血球をつくるのを促進する物質をつくったり、ビタミンを活性化したりする作用も持っています。

腎臓がんとは

腎臓がんは腎実質から発生します。腎盂にがんが発生することもありますが(腎盂がん)、これは尿路上皮から発生するもので、尿路上皮がんとして取り扱われ、一般でいう腎臓がんとは異なります。腎実質に発生するがんには、成人に発生する腎細胞がんと小児に発生するウィルムス腫瘍があります。さらにまれな腫瘍として肉腫があります。ここでは、成人に発生する腎臓がんについて解説をします。

腎臓がんは 40 歳代くらいから増加し、60 歳代、70 歳代で多く見られます。がん発生の危険因子としては、喫煙、肥満があげられ、血液透析患者さんにもよく見られます。また、一部の遺伝性疾患で好発することも知られています。中枢神経系血管芽腫を合併するフォン・ヒッペル・リンドウ (VHL) 病や、自然気胸や顔面皮膚の小腫瘍を伴うバート・ホッグ・デューベ (BHD) 症候群などの、常染色体優勢遺伝性の疾患をもつ患者とその血縁者では、腎細胞がんの発症割合が高く、VHL病血縁者の 40% で腎細胞がんが発症するといわれています。

腎臓がんは片方の腎臓にできることが多く、両方の腎臓に同時にできることはまれで 1% 程度です。腎実質にできるがんのため、血尿はがんが進行して、腎盂を破らないと見られません。また、進行すると腎臓の被膜を破って腎臓の外に広がったり、転移を起こしたりします。転移は肺に最も多く見られ、他にリンパ節や肝臓、骨にも転移します。血管の中に入り込むようにがんが大きくなることもあり、がんが大静脈や心臓にまで達することもあります。

症状

腎臓がんは腎実質に発生するがんであり、そして腎臓は体の表面から深いところあるため、進行するまでは無症状です。進行すると血尿がみられることが多くなります。血尿以外の症状として、背中やわき腹の痛み・不快感、おなかやわき腹のしこりが現れることがあります。血尿は顕微鏡で見ないとわからないもの(顕微鏡的血尿)から、目に見える程のもの(肉眼的血尿)まであります。

肺に転移すると咳や血痰が出たり、骨に転移すると骨の痛みが出現したりします。血痰や転移でもろくなった骨が骨折して、腎臓がんが発見されることもあります。がんが腎静脈内に進展すると男性では精索静脈瘤を発症して陰嚢に腫れや鈍痛を認めることがあります。さらに大静脈にまで進展すると、足がむくんだりすることもあります。

ここにあげた症状はいずれも進行してから現れる症状のため、無症状の間に健康診断などで発見することが早期診断には欠かせません。

診断

肉眼的血尿や尿検査で血尿を認める場合は、腎臓の超音波検査(エコー)を行って腎臓に腫瘍があるか検査します。健康診断や人間ドッグなどでの腹部の超音波検査により発見されることもあり、健康診断などでの尿検査や腹部超音波検査が早期診断に重要です。

1) 腎臓がんを診断するための検査

超音波検査で腎に異常が見られた場合は、CT (コンピューター断層撮影)検査や MRI (磁気共鳴画像)検査を行い、腎臓にがんの所見がないか検査します。検査時に造影剤を静脈内に注射することが診断のために大切ですが、造影剤に対してアレルギーを持っている患者さんなどの造影剤の使用が禁忌または難しいかたもいます。検査の前に医師や看護師から十分に説明を受けることが大切です。

近年、ポジトロン断層法 (PET) が癌の診断に使用されています。フルオロデオキシグルコース (FDG) というブドウ糖に似た物質に放射性同位元素である 18F (フッ素18)を標識した 18F-FDG を用いた通常行われる PET は、腎臓の腫瘍が腎臓がんであるか否かの診断にあまり優れてはいません。しかし、転移や再発の診断には有効と言われています。

腎臓がん以外のがんでは、診断のために疑わしい部分の組織を一部分針で採取して、顕微鏡で調べる「生検」といわれる検査を行うのが一般的ですが、腎臓がんでは生検検査を行わないのが通常です。腎臓がんは血管が豊富ながんで、生検のために針を刺すことにより転移を促したり、針を通した跡にがんを広めてしまったりする可能性があるからです。生検検査をしなくても、CT や MRI 検査で良性・悪性の判断は通常可能です。ただし、いろいろな検査を行っても診断がつかない場合には、生検によって診断を確定することが治療方針の決定に重要なこともあります。主治医の先生とご相談ください。

2) 腎臓がんの広がりを診断するための検査

CT や MRI 検査で腎臓がんの腎臓における広がりや静脈内への進展の程度を調べます。リンパ節転移の診断にも有効です。肺への転移の検査には胸部CT検査や胸部単純写真を撮影します。肝転移は CT や MRI 検査で診断します。骨への転移は放射線同位元素を用いた骨シンチグラフィーで診断します。

がんの進行度(病期)

がんの広がりぐあいは、がんの局所での広がり (T)、リンパ節転移の有無・程度 (N)、肺や骨などへの転移(遠隔転移)(M) の三者で表します。

T には 1~4 の 4段階、N には 0~2 の 3段階、M には 0 または 1 の 2段階があります。これらの段階は数が大きいほど広がりが広く、進行していることを示します。次に TNM、各々の段階について簡単に説明します。

1) T (がんの局所での広がり)

T1 がんの大きさが 7cm 以下で、腎臓内にがんがとどまっている。そして、がんの直径が 4cm 以下の場合を T1a、4~7cm の場合を T1b と分類します。
T2 がんの大きさが 7cm を越えているが、腎臓内にがんがとどまっている。
T3 がんが腎臓の外まで直接広がっているが、腎周囲の脂肪組織や副腎、血管内にとどまっている。
T4 がんがさらに広がって周囲臓器(副腎、腸、すい臓や筋肉など)に及んでいる。

2) N (リンパ節転移の程度)

N0 リンパ節転移なし。
N1 リンパ節転移の数が 1 つ。
N2 リンパ節転移の数が 2 つ以上。

3) M (遠隔転移の有無)

M0 遠隔転移なし。
M1 遠隔転移(肺、肝臓、骨など)あり。

治療方法

一般的ながん治療には、手術療法、抗がん剤による化学療法、放射線療法がありますが、腎臓がんに化学療法、放射線療法はあまり有効でありません。手術によるがんの切除が治療の中核になります。手術療法以外に腎臓がんによく行われる治療法として、従来からの免疫療法に加えて分子標的治療が広く行われるようになりました。

1) 手術療法

切除する範囲で大きく「根治的腎摘除術」と「腎部分切除術」に分けられます。そして切除の方法としては、お腹やわき腹を大きく切って切除する従来からの開放手術、体の中に内視鏡を入れて内視鏡の画像を助けにして切除する腹腔鏡手術、内視鏡と肉眼の両方で手術部位を見ながら切除する内視鏡下小切開(ミニマム創)手術があります。そして、一部の施設では先進医療としてロボット支援下腹腔鏡手術(いわゆるロボット手術)も行われています。

  • 根治的腎摘除術

    腎臓がんがある腎臓全体を周囲の脂肪組織、脂肪組織内にある副腎とともに切除する方法ですが、近年はがんと副腎が離れている場合には副腎を摘出せずに腎臓を摘出することが多くなっています。

    がんの広がりが T2 までなら、開放手術、腹腔鏡手術、ミニマム創手術のいずれでも可能ですが、T3 以上では開放手術で行なうのが一般的です。がんが腎臓の静脈から体の中心にある太い静脈(下大静脈)や心臓にまで伸びた場合には、人工心肺などを併用して腎臓がんを摘出することがあります。

  • 腎部分切除術

    腎臓がんとその周囲の部分だけを切除する方法で、開放手術、腹腔鏡手術、ミニマム創手術のいずれでも可能です。

    一般的にこの手術は、がんの大きさが小さく、がんを切除しても腎臓の健常な部分を残すことができる場合に行われます。従来は小さながんでも腎臓全体を切除することが行われることがありましたが、近年は腎部分切除によって腎機能を可能な限り保つことが積極的に行われています。その理由としては腎機能を保つことによって腎機能低下(慢性腎臓病)に伴う心血管系障害を回避することが患者さんのためになると考えられているからです。

    そして、腎を切除するわけではありませんが、がんを体内で死滅させる治療法も近年は特定の施設で行なわれています。ラジオ波やマイクロ波を用いた焼灼療法やがんを凍結して死滅させる凍結療法が挙げられます。

2) 免疫療法

インターフェロンやインターロイキンといった薬剤を用いて、体の中の免疫能を高めて治療する方法です。主な副作用としては、発熱、全身倦怠感などのインフルエンザのような症状、食欲不振、気分の抑うつ、白血球減少などがあります。分子標的治療の登場によって免疫療法が行われる機会が少なくなりましたが、治療効果は 15~18% の患者さんに認められ、現在も治療の選択肢の一つと考えられています。特に肺やリンパ節への転移に対しての有効性が示されています。

3) 分子標的治療

分子標的治療とは、がん細胞が増える原因となっているタンパク質を攻撃する物質や抗体を投与することによって、がんを治療する方法です。投与される物質や抗体を分子標的薬と呼びます。近年、腎臓がんに対する分子標的薬が日本でも使用できるようになり、がんが進行した患者さんや手術後に再発した患者さんにおいて、がんを小さくしたり、生存期間を伸ばしたりする効果が期待されています。また、免疫療法の効果がなくなった患者さんにも治療効果が期待されます。

腎がんに対する分子標的薬として、ソラフェニブ、スニチニブ、エベロリムス、テムシロリムス、アキシチニブ、パゾパニブが保険適用となって治療に使われています。しかし、どの薬剤をどのような順番で使用するか、ガイドラインも適宜変更される状況であり、日本における本当の治療効果については今後の検討が必要と考えられています。

副作用は各薬剤で異なっており、医師から副作用に関して十分に説明を受けて治療を行う必要があります。

がんの進行度による一般的な治療方針

がんの進行度で選択される治療法がある程度決まりますが、治療の中核は外科的切除です。

  • 転移がない場合

    T2 までの場合、可能であれば腎部分切除術を行い、がんが発生した腎臓の働きをある程度温存しつつ、がんを治療することが可能です。それ以上の大きさのがんの場合は原則として根治的腎摘除術を行います。静脈内へ進展した T3 や周囲臓器への浸潤がある T4 の場合も、周囲臓器なども含めた手術が行われるのが一般的です。術後の補助療法としての免疫療法や分子標的治療の追加については議論があるところです。

  • 転移がある場合

    転移がある N1、N2、M1 の場合にも治療計画の一環として腎臓を摘出する場合があります。この場合、手術で根治が得られる訳ではありませんが、腎臓を摘出した方がその後の治療成績が良いとも言われています。腎臓の摘出により転移が小さくなったり、消えたりすることがまれにあると言われています。N1、N2 ではリンパ節の摘出も可能であれば行います。また、手術後には免疫療法や分子標的治療を行います。

    転移も状況によっては切除します。転移による痛みなどの症状を和らげるために放射線療法を行うこともあります。

がんの治療後の成績

がんの大きさが 7cm までで腎臓内に止まっている T1 では、手術後の 5年生存率は 90% 以上と良好です。そして、腎部分切除を施行した患者さんと腎摘除術を施行した患者さんの生存率は同等です。がんの大きさが 7cm 以上で腎臓内にがんが止まっている場合は、手術後の 5年生存率は 80~90% です。手術を受けでも転移のある患者さんの手術後の 5年生存率は不良で、30~40% です。したがって、早期発見が極めて重要です。今後、分子標的治療によって生存率が向上するのか注目されます。

北陸の腎がん集計での生存率

更新履歴

  • 2014年10月02日 改定