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ホジキンリンパ腫(ほじきんりんぱしゅ)

1.ホジキンリンパ腫とは

1)ホジキンリンパ腫とは

悪性リンパ腫とはリンパ組織をつくっている細胞が悪性化したがんであります。悪性リンパ腫は大きく2つに分けられ「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」があり、それぞれ腫瘍細胞の性状や形態の違いなど、いわゆる病理組織学的所見をもとに組織分類されています。リンパ組織は、血管と同じように全身に張り巡らされるリンパ管でできていて、そのリンパ管には白血球の中の一種であるリンパ球を含んだ無色の体液であるリンパ液が流れております。リンパ管に沿って豆の形をした組織リンパ節がみられます。リンパ球とは、体外からの侵入物より体を守る働きをもっている、免疫を担う細胞であり、リンパ節は、そのリンパ球を蓄える場所であります。リンパ節は頚部、腋窩(脇の下)、縦隔(両肺の間)、肺門(肺の入り口)、腹部大動脈周囲、骨盤内および鼠径部(足の付け根の内側)などにみられます。また、胸腺(胸骨の下にある小さな組織)、扁桃および腸管のリンパ腺、脾臓(リンパ球を作ったり、老化した赤血球を除去している左上腹部にある臓器)は厳密にはリンパ組織ではありませんがここからホジキンリンパ腫が発生することもあります。このようにリンパ組織は体中にあるためホジキンリンパ腫はどこからでも発症し、肝臓、骨髄(大きな骨の中にある組織で血液を作っている)および脾臓などに拡がる可能性があります。(1999年に発表された新WHO分類で病名がホジキン病からホジキンリンパ腫に変更されています。)

2)ホジキンリンパ腫の疫学

悪性リンパ腫は、わが国では、10万人あたり7~8人に発生しますが、そのうちホジキンリンパ腫は約10%程度です。成人のホジキンリンパ腫は、主に20歳代と60歳代の人に発症します。また、ホジキンリンパ腫は小児にも発症しますが治療法は成人とは異なっております。

3)ホジキンリンパ腫の組織分類

ホジキンリンパ腫は、病理組織学的所見に基づき5種類に分類されます。「結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫」と「古典的ホジキンリンパ腫」に大別されています。90%以上は古典的ホジキンリンパ腫で、さらに「リンパ球優位型」、「結節硬化型」、「混合細胞型」、「リンパ球減少型」に分類されます。「結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫」と「古典的ホジキンリンパ腫」の間でも、若干、治療反応性や予後が異なるといわれています。「結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫」は、早期で発見されることが多く予後良好であります。 また、「古典的ホジキンリンパ腫」の4つの病型の中で、「混合細胞型」、「リンパ球減少型」の予後が若干不良であるという報告もありますが、進行期が多いためと考えられております。

4)ホジキンリンパ腫の危険性

若年または青年期後期、男性、EBV(epstein-barr virus)に感染、第1度近親者(親、兄弟、姉妹)にホジキン病の人がいることが、成人ホジキンリンパ腫の発生のリスクに影響を与えることがあります。

2.症状

ホジキンリンパ腫は表在リンパ節、特に頸部リンパ節の腫れで発症することが多いです。その多くは痛みがなく、弾性硬で、可動性に富み、線維化により硬化します。また、腫瘤の場所により圧迫症状がでることもあります。リンパ節の腫れの頻度が高い場所として縦隔(じゅうかく)リンパ節、腋(わき)の下のリンパ節、腹部大動脈領域のリンパ節、脾臓(ひぞう)等があげられます。ほとんどの方が、リンパ節の腫れや腫瘤を自覚し、検診などでホジキンリンパ腫が発見されることは比較的まれです。その他の自覚症状として発熱、体重減少、夜間の発汗等がありますが、ホジキンリンパ腫に特徴的な症状ではありませんが、みられることがあります。また、かゆみを伴う皮疹がでたり、飲酒で病気の部分(たとえばリンパ節などに)に違和感や痛みがでたりすることもありますが、頻度は高くありません。2週間以上続く痛みのないリンパ節の腫れや上記の症状がみられる場合には医師への相談をおすすめします。

3.診断

ホジキンリンパ腫の診断過程は以下のようになります。

  • ① 身体の診察と病歴:腫れたリンパ節や腫瘤、全身症状など、総合的に身体を調べ、また、その患者さんの過去の病歴および治療歴も調べます。
  • ② 血液検査:白血球、赤血球、ヘモグロビン(酸素を運ぶ蛋白)量、血小板の数で感染の有無、貧血の程度、出血傾向などが分かります。血沈では試験管の底に赤血球が沈殿するまでの速度の検査で異常を示せば病気が疑われます。また、肝機能、腎機能など異常がないか調べます。
  • ③ 画像検査:リンパ節が腫れたり、肝臓、脾臓が大きくなることがあるため頸部、胸部、腹部、骨盤腔までコンピューターを使ったX線写真(CT)でその有無や拡がりを確かめます。また、放射性核種で標識したガリウム(Ga)を注射した後、X線写真をとるGaシンチ検査でホジキンリンパ腫の拡がりを確認し病期分類に役立てます。最近では病期分類の精度向上を目指し、陽電子(ポジトロン)を放出する放射性核種(ポジトロン核種)ブドウ糖で標識した薬剤を注射し、細胞の活動状態を画像化するPET検査をすることもあります。
  • ④ 生検と病理診断:確定診断として腫れたリンパ節や腫瘤を外科的に採取(生検といいます)し、その組織を顕微鏡で見て病理診断します。ホジキンリンパ腫では基本的にReed-Sternberg(RS)細胞やホジキン細胞など、特徴的な大型細胞が認められます。
  • ⑤ 骨髄検査:骨髄は血液細胞が増える場所であり、拡がりを調べる上でも骨髄の検査は必須です。うつ伏せになって腸骨(腰の真ん中より外側の場所にある骨)から骨髄を採取します。局所麻酔薬で皮膚、皮下、骨膜を麻酔します。ここで歯を抜く時など麻酔をされて気持ちが悪くなった人は麻酔薬にアレルギーをお持ちのことがあり注意が必要です。鉛筆の芯くらいの太さの穿刺針を骨に刺し、骨髄液を採取します。その後、生検針で骨髄組織を採取します。15分くらいで終了、検査後30分安静にしていただきます。骨髄液、骨髄組織は、骨髄の状態やホジキンリンパ腫細胞の有無について調べるため、さまざまな検査に回します。すべての結果がでるまで2週間くらいかかりますが、治療方針に必要な項目は数日以内にわかります。
  • ⑥ 免疫表現型検査:腫れたリンパ節、腫瘤、そして骨髄検査標本の細胞中にホジキンリンパ腫細胞が混ざっているか、いればそれはどの組織分類になるか調べる検査です。
  • ⑦ 必要に応じ、超音波検査、消化器内視鏡検査、MRI検査、髄液検査なども行われます。また、治療前には心臓や肺の機能も確認する必要があります。

4.病期分類

ホジキンリンパ腫と診断されると、上記検査にて病変の拡がりを正確に調べ、臨床病期分類を決定します。ホジキンリンパ腫の予後や治療法は病期により異なっているので病期を診断することが大切です。「Ann Arbor 分類(Cotswolds 改訂)」 を用いて以下のI期、II期、III期、IV期の4つに分類します。また、全身症状の有無によりAとBの2つに分けられます。全身症状を伴っていない場合はA、伴っている場合はBとなります。その全身症状とは38℃以上の原因不明の発熱、寝具を変えなければならないほどの寝汗、6か月以内の10%以上の原因不明の体重減少を指しています。例えば、全身症状のないI期の場合は病期IA期となり、全身症状を伴うI期の場合は病期IB期となります。

成人ホジキンリンパ腫の臨床病期

  • I期
    • I期:病変が1つのリンパ節群にある。
    • IE期:病変がリンパ節以外の領域や臓器にある。(「E」はリンパ節以外を意味する。)
  • II期
    • II期:病変が、横隔膜(胸部と腹部を分けている筋肉)同側の2つ以上のリンパ節群にある。
    • IIE期:病変が、リンパ節以外の領域または臓器、およびその近くのリンパ節でみられ、横隔膜同側の他のリンパ節群に拡がっている可能性もある。
  • Ⅲ期
    • Ⅲ期:病変が、横隔膜両側のリンパ節群にある。
    • ⅢE期:病変が、横隔膜両側のリンパ節群およびリンパ節以外の1つの領域や臓器にある。
    • ⅢS期:病変が、横隔膜両側のリンパ節群および脾臓にある。
    • ⅢE,S期:病変が、横隔膜両側のリンパ節群やリンパ節以外の1つの領域や臓器、脾臓にある。
  • Ⅳ期
    • 病変が、リンパ節以外の1つ以上の臓器にあり、これらの臓器周辺のリンパ節にもみられる可能性がある。 あるいは、リンパ節以外の1つの臓器にみられ、その臓器から離れたリンパ節にまで病変が拡がっている。

治療方針決定のため以下のように分類します。

限局期、早期予後良好群

予後不良因子のないI期またはII期の病変。

限局期、早期予後不良群

以下の予後不良因子を1つ以上有するI期またはII期の病変。

①胸部X線検査で胸部の幅の1/3を超えるか、最大径10cm以上の胸部内の腫瘤病変。②病変がリンパ節以外の臓器にある。 ③血沈が亢進。 ④病変が3つ以上のリンパ節にある。 ⑤発熱、寝汗、体重減少などの症状。

進行期予後良好群

以下の予後不良因子を3つ以下のIII期またはIV期の病変。

①血液アルブミン(蛋白)値が低い(4未満)。 ②ヘモグロビン値が低い(10.5未満)。 ③男性。 ④45歳以上。 ⑤IV期の病変。 ⑥白血球数が高い(15,000以上)。 ⑦リンパ球数が低い(600未満、または白血球数の8%未満)。

進行期予後不良群

進行期予後良好群の予後不良因子を4つ以上有するIII期またはIV期の病変。

再発性成人ホジキンリンパ腫

治療後に病変が再び発症することがあります。他の場所にできることがあります。

5.治療

放射線療法

放射線療法は化学療法と交差耐性がなく、ホジキンリンパ腫の限局期病変に対して化学療法以上の効果を示します。早期ホジキンリンパ腫、巨大腫瘤、進行した全身状態の悪い患者さん、高齢者に単独または化学療法との併用で用いられます。

化学療法と放射線療法の併用

早期ホジキンリンパ腫の最近の治療は、化学療法と放射線療法を併用することが多く、これは併用により、治療効果を改善すること(特に早期予後不良群)や放射線照射野を縮小することを目的としています。進行期ホジキンリンパ腫の標準的治療として確立している「ABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)療法」です。進行期では、6~8コース行いますが、早期ならは4~6コースに減らすことが一般的です。治療効果として5年全生存率が70~80%程度です。併用する放射線療法としては「領域照射」という方法(病変があったリンパ節領域のみに限局して放射線治療を行う)が一般的で、広範囲のSTLI(全リンパ領域から骨盤部を除いた部分に照射する方法)を併用した場合と同等の治療効果が期待されます。領域照射を行った場合は、STLIに比べて放射線による毒性が少なくなることが予想されます。

実際の治療法は以下のとおりです。ABVD療法は第1日目と第15日目に2回治療して1コースとし、4週間隔で繰り返します。なお、わが国では、ダカルバジンの投与量を2/3の250mg/m2に減量した変法も、しばしば行われています。

ABVD療法

  • ドキソルビシン25mg/m2静脈注射(第1、15日目)
  • ブレオマイシン10mg/m2静脈注射(第1、15日目)
  • ビンブラスチン6mg/m2静脈注射(第1、15日目)
  • ダカルバジン375mg/m2静脈注射(第1、15日目)

最近、ドイツのホジキンリンパ腫の研究グループより治療強度を高めた以下のような「BEACOPP療法(ブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロファスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン)」という治療法で進行期ホジキンリンパ腫の治療効果を改善したと報告されております。今後、進行期ホジキンリンパ腫予後不良群と考えられる患者さんに対して、このような治療強度を高めた治療法の評価が2次発がんなどの毒性の評価も含めて必要であると考えられます。

BEACOPP療法

  • ブレオマイシン10mg/m2静脈注射 (第8日目)
  • エトポシド100mg/m2静脈注射 (第1~3日目)
  • ドキソルビシン25mg/m2静脈注射 (第1日目)
  • シクロファスファミド650mg/m2静脈注射 (第1日目)
  • ビンクリスチン1.4mg/m2 (最大2.0mg) 静脈注射 (第8日目)
  • プロカルバジン100mg/m2経口 (第1~7日目)
  • プレドニゾロン40mg/m2経口 (第1~14日目)

再発性成人ホジキンリンパ腫

最初、放射線療法のみであった場合は、再発後に化学療法で治療することで、高い治療効果が得られます。最近では、最初から化学療法を行うことがほとんどです。そのため、再発時に若年者であれば、自家造血幹細胞移植を併用した大量化学療法をする方向にあります。以前は、早期再発(1年以内の再発)のみ、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法が有用であるといわれておりました。しかし2002年に再発が1年以内であろうとなかろうと、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法を行うと、通常の化学療法に比べ、無再発での生存が延長すると報告されました。ただ、生存期間については、有意差ありません。ホジキンリンパ腫の再発に対する現在の標準的な治療の方向性として、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法であるといえます。なお、「自家造血幹細胞移植」とは大量化学療法が目的の治療であり、大量化学療法により骨髄における 造血機能(血液細胞を作る働き)を壊してしまうので、治療前に自分の造血幹細胞を採取し凍結保存しておき大量化学療法を行った後で、造血幹細胞を解凍して静脈内に投与し造血機能を補います。

予後分類による治療方針

  • 早期予後良好群

    併用化学療法(病変のある領域へ放射線療法をする場合もある)。

    病変のある領域またはマントル照射野(頸部、胸部、腋窩)へ単独放射線療法。

  • 早期予後不良群

    併用化学療法(病変のある領域へ放射線療法をする場合もある)。

  • 進行期予後良好群

    併用化学療法(病変のある領域へ放射線療法をする場合もある)。

  • 進行期予後不良群

    併用化学療法(病変のある領域へ放射線療法をする場合もある)。

  • 再発性成人ホジキンリンパ腫

    併用化学療法(病変のある領域へ放射線療法をする場合もある)。

    併用化学療法の後に実施する大量化学療法と幹細胞移植(放射線療法をする場合がある)。

    症状を和らげ、生活の質(QOL)を向上させる緩和療法としての化学療法、放射線療法。

6.生存率・予後

欧米からの報告ではI期で90%以上、II期で80~90%、III期で50~90%、IV期で40~65%が治癒し、全体として新しく診断された患者さんの約75%は治癒可能と考えられています。日本ではまとまった治療成績がまだありませんが、欧米とほぼ同等と考えられています。

進行期ホジキンリンパ腫の予後を予測するため、5,141例の患者さんの情報を解析すると、以下の7つの因子が予後不良因子であることが分かりました。 ①血清アルブミンの値が4未満 、②ヘモグロビンの値が10.5未満 、③男性、④IV期 、⑤45歳以上 、⑥白血球数が15,000以上 、⑦リンパ球減少(600/ml未満または白血球数の8%未満) これらの因子のうち、いくつあてはまるかである程度予後が予測できることがわかりました。これを国際予後スコア(International Prognostic Score:IPS)といい、無増悪生存期間(ホジキンリンパ腫の病変が増悪傾向を示すことなく生存している期間)が予測されます。これらの因子の数により無進行率を推測することができ、予後因子数が0なら無進行率84%、1なら77%、2なら67%、3なら60%、4なら51%、5以上なら42%となることが報告され、今後はこれらも考慮し、より細かく層別化された治療方針が決定されるものと考えられます。

ホジキンリンパ腫は治療により治癒する患者さんが増えています。しかし、長期生存例では治療後の晩期毒性が問題となっています。

まず、性機能異常による不妊の問題があります。MOPP療法では、男性に長期の無精子症がみられました。ABVD療法では一時的な無精子症を来すものの、多くは回復するといわれております。女性では、骨盤に放射線照射が行われると卵巣機能不全がみられました。MOPP療法後、年齢にもよりますが、約40%で無月経を来すとされます。しかしABVD療法では、その頻度はかなり低くなります。2次発がんも、重大な晩期毒性の1つです。治療終了後5~10年で急性白血病など合併する患者さんが多く、特に放射線療法、化学療法との併用、広範囲の照射、高投与量との関係が指摘されております。また、MOPP療法を含む治療の場合、治療終了10年後の急性白血病のリスクは3%程度ですが、ABVD療法の場合は1%未満であると考えられています。この2次性白血病の発症のピークは、治療終了後4~6年です。治療終了後10年経つと固形がんの発症多くなり、特に乳がん、肺がんの発症頻度が高いとされております。その他、不整脈、心筋梗塞などの心血管系への合併症や肺機能障害、甲状腺機能低下症等のリスクもあるといわれています。

富山大学 医学部 第3内科 宮園 卓宜