1. 造血の仕組み
血液の中には、白血球、赤血球、血小板という3系統の細胞が存在します。
白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球という細胞が含まれ、異物からわれわれの体を守る「免疫」の中心的な役割を担当しています。中でも細菌から体を守る役割をしているのが好中球で、白血球の約半分を占めています。リンパ球は白血球の25~50%を占め、大きくTリンパ球とBリンパ球に分けられます。血液中のリンパ球のうち約75%はTリンパ球で、約15%はBリンパ球です。Tリンパ球は異物の情報を伝えたり、その情報を記憶したり、直接異物を攻撃したりします。Bリンパ球は抗体産生にかかわり、組織では形質細胞に分化します。これらリンパ球や形質細胞はリンパ節など、リンパ組織と呼ばれる部位にも多数存在します。正常な白血球が少なくなると感染症を起こしやすく、あるいは感染症が治りにくくなります。
赤血球は肺で酸素を取り込み、体中の様々な臓器に運びます。また臓器の細胞から二酸化炭素を受けとり、肺に運んで体の外に出す働きも担っています。貧血(赤血球が減少すること)が生じると、十分な酸素を体中に送るためには心臓の動きを速くする必要があるため、動悸や息切れを感じるようになります。
血小板は血を止めるように働きます。血小板が少なくなると、血が止まるまでの時間が長くなったり、外傷がないのに自然に出血したりすることがあります。
白血球・赤血球・血小板は、骨の真ん中にある骨髄という臓器で造られます。骨髄は一見すると血液と変わらない液状の臓器です。骨髄の中には、造血幹細胞とよばれる細胞が存在します。造血幹細胞は血液の3系統全ての細胞を造る働きを持っています。造血幹細胞が少なくなると、3系統の細胞全てが減少します。
2. 血液がん(造血器腫瘍)とは
造血幹細胞やリンパ球、Bリンパ球から分化した形質細胞が悪性化(=がん化)したものが「白血病」や「悪性リンパ腫」「多発性骨髄腫」で、「造血器腫瘍」とも呼ばれます。骨髄で白血球・赤血球・血小板のもとになる細胞(造血幹細胞)が悪性化したものを白血病、形質細胞が悪性化したものを多発性骨髄腫、リンパ節やリンパ組織でリンパ球が悪性化したものを悪性リンパ腫と言うこともできます。
白血病では、悪性(がん)化した細胞が本来健康ならばリンパ球になる細胞の場合「リンパ性白血病」、それ以外の細胞(リンパ球以外の白血球、赤血球、血小板)の場合「骨髄性白血病」の病名がつきます。また、「リンパ性白血病」、「骨髄性白血病」それぞれに経過が急で芽球と呼ばれる若い細胞が増加する「急性白血病」、経過が緩やかで一見正常に見える細胞まで成熟した白血病細胞が増加する「慢性白血病」があります。したがって「急性リンパ性白血病」「慢性リンパ性白血病」「急性骨髄性白血病」「慢性骨髄性白血病」の4つに大別することができます。悪性リンパ腫は40以上もある疾患単位の総称で、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大別されます。
血液がん、特に白血病は昔から治りにくい病気の代表のようにとらえられてきました。主人公が白血病で命を落とすドラマや映画は少なくありません。しかし、治療が進歩した現在、血液がんは不治の病ではありません。そして完治を目指すには適切な診断と治療法選択が不可欠です。
ここでは血液がんを以下の項目に分け、それぞれ専門の医師、薬剤師、看護師が病気の特徴、症状、診断方法、治療、入院や外来通院の中で気をつけていただきたいことを記載しています。また、血液がんでは不可欠の治療法である「造血幹細胞移植」について、独立した項目を作りました。
-->| 病院名 | 診療科 | 病床数 | 無菌室病床数 | 外来化学療法 | 自家造血幹細胞移植 | 同種造血幹細胞移植 |
| 黒部市民病院 | 内科・血液 | 25~30 | 6 | 可 | 可 | 可(血縁者間に限る) |
| 富山県立中央病院 | 血液内科 | 48 | 6 | 可 | 可 | 可 |
| 富山大学附属病院 | 第3内科 | 20 | 2 | 可 | 可 | 可 |
| 富山市民病院 | 血液内科 | 10~15 | 1 | 可 | 可 | 不可 |
| 射水市民病院 | 内科 | 10 | 0 | 可 | 不可 | 不可 |
| 真生会富山病院 | 内科 | 3~5 | 0 | 可 | 不可 | 不可 |
| 厚生連高岡病院 | 内科 | 30 | 1 | 可 | 可 | 可 |
| 市立砺波市民病院 | 内科 | 不定 | 4 | 可 | 可 | 不可 |
| 金沢医科大学病院 | 血液リウマチ膠原病科 | 26 | 6 | 可 | 可 | 可 |
| 石川県立中央病院 | 血液免疫内科 | 39 | 2 | 可 | 可 | 可 |
| NTT西日本金沢病院 | 内科 | 66 | 9 | 可 | 可 | 可 |
| 国立病院機構金沢医療センター | 内科・血液部門 | 26 | 4 | 可 | 可 | 不可 |
| 金沢大学附属病院 | 血液内科 | 15 | 可 | 可 | 可 | |
| 国立病院機構あわら病院 | 血液・腫瘍内科 | 20 | 2 | 可 | 可 | 不可 |
| 福井大学附属病院 | 血液・腫瘍内科 | 35 | 14 | 可 | 可 | 可 |
| 福井県立病院 | 血液内科 | 18 | 2 | 可 | 可 | 可(末梢血幹細胞に限る) |
| 福井県済生会病院 | 臨床腫瘍科 | 不定 | 2 | 可 | 不可 | 不可 |
| 福井赤十字病院 | 血液内科 | 59 | 8 | 可 | 可 | 可(血縁者間に限る) |
| 医療法人林病院(越前市) | 内科 | 40 | 0 | 可 | 不可 | 不可 |
| 国立病院機構福井病院 | 内科 | 5 | 1 | 可 | 不可 | 不可 |
*血液がんを担当する科の病床数。血液がん以外の血液の病気や他の領域の病気の方が入院される病床数が含まれる場合があります。
**病気の種類や状態により、必ず入院が必要な場合と外来通院可能な場合がありますので、主治医・担当医と相談ください。
上記以外の施設での治療については、各施設にお問い合わせください。
4. 血液がんの治療の中でしばしば使われる用語について
- 化学療法:いわゆる「抗がん剤」による治療を化学療法と呼びます。
- 造血幹細胞移植:どなたのものを移植するかで「自己あるいは自家移植」、「同系移植」(一卵性双生児から)、「同種移植」(自分および一卵性双生児以外の人からの移植、血縁者間移植と非血縁者間移植に分けられます)に、造血幹細胞の種類から「骨髄移植」、「末梢血幹細胞移植」、「臍帯血移植」に分類されます。詳しくは「急性骨髄性白血病」および「造血幹細胞移植」の項をご覧ください (「造血幹細胞移植」は現在準備中です)。
- 寛解:治療によりがん細胞が減少し、病気に伴うさまざまな症状の消失した状態を言います。ただし、寛解に至っても治療の初期の段階では体内に多数のがん細胞が残っていますので、治療は決められた回数まで継続されます。寛解の基準はそれぞれの病気によって決められています。
- 分子標的薬 :近年の研究でがんに関連した遺伝子の異常が少しずつわかってきました。分子標的薬は遺伝子の異常やその結果できた異常な蛋白に対してのみ働く抗がん剤です。また主としてがん細胞のみに発現している蛋白に対する抗体を使った治療も開発されています。これらの薬を総称して分子標的薬と呼んでいます。従来の抗がん剤ががん細胞だけではなく、正常な細胞にも作用するため有害反応(副作用)が起こりやすいのに対し、分子標的薬はがん細胞に対し選択的に作用するためより高い治療効果を期待できるとともに、有害反応(副作用)は比較的少ないと考えられています。
- 支持療法:がんによって、あるいはがんに対する治療によって、おこりうる症状に対する予防と治療を支持療法といいます。化学療法後には骨髄での正常な造血が抑えられ、血球数が下がります。赤血球や血小板の数が非常に低下し貧血に伴うさまざまな症状や出血の危険性がある場合、赤血球や血小板の輸血が行われます。白血球数が低下すると感染症を発症する危険性が高まります。この予防として抗生物質や抗真菌剤を内服することがあります。また感染症になった場合、その原因の微生物(細菌、真菌、ウイルスなど)に有効な薬を内服あるいは点滴にて投与します。白血球の中でも好中球という成分を増やすG-CSFというお薬を使うこともあります。
- 無菌室:室内の空気が平行な流線に沿って一定速度で移動する溜め、さまざまな病原微生物が付着している埃が発生しにくくなっています。したがって、無菌室に入室すれば空気を介する感染症を予防することが出来ます。特にアスペルギルスという真菌(カビ)の感染予防に有効と考えられており、強力な化学療法や造血幹細胞移植の際に使用されます。無菌室の実際については「急性骨髄性白血病」でより具体的に記載されています。
文責:
- 福島俊洋(金沢医科大学病院血液リウマチ膠原病科)
- 奥村廣和(金沢大学附属病院血液内科)
