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子宮体がん(しきゅうたいがん)

1.子宮体がんとは

子宮体部の内腔を覆っている子宮内膜(子宮の奥の方)から発生するがんです。同じ子宮でも、子宮の入り口のがんである子宮頸がんとは異なるがんで、通常の子宮がん検診ではなかなか発見できません。

1)子宮体がんの発生

発生には2つのタイプがあるといわれています。タイプ1の体がんは子宮内膜増殖症という前がん病変を伴い徐々にがんができてきます。90%を占め比較的若い40~50代に多いがんです。タイプ2の体がんは正常子宮内膜から一気にがんができるもので、高齢者に多いがんです。

2)子宮体がんの統計

罹患率は女性人口10万人に対して約7.5人です。年々増加してきており、日本でも将来は欧米と同じように頸がんよりも体がんが多くなると考えられています。

3)子宮体がんの組織分類

ほとんどが腺がん(類内膜腺がん)です。

4)子宮体がんの原因と予防

生活習慣の欧米化にともない増加しています。不妊症、出産経験のない方、肥満、糖尿病、高血圧の人は危険群です。女性ホルモン(エストロゲン)が発症に関与しています。エストロゲン(卵胞ホルモン)は子宮内膜を増殖させますが、排卵後黄体ホルモンが卵巣から分泌されこの増殖を止めています。月経不順や不妊症の場合、排卵回数が少ないためエストロゲン優位の期間が長く、体がんの危険性が増します。未婚で妊娠出産経験がない人もエストロゲン優位のライフサイクルとなり体がんの危険性が高くなります。肥満では皮下脂肪からアロマターゼとうい酵素が働き、エストロゲンが作られ、体がんのがん化に関与しています。また、更年期障害などのホルモン補充療法ではエストロゲンに黄体ホルモンを併用しないとがんになる可能性がやや高くなりますので注意が必要です。

2.症状

体がんの症状としては、不正出血が重要です。特に閉経後の不正出血は体がんを疑わなければなりません。褐色のおりものでも要注意です。閉経前でも不正出血を繰り返す場合は体がんの検査が必要です。不正出血を放置せず検査すれば比較的早期に発見でき、予後が良好です。

3.診断

1)子宮内膜細胞診

子宮頸部から細い棒を子宮の中に挿入して細胞を採ります。人によってはこのときやや痛みを感じます。高齢の方では頸部が萎縮して狭くなっており、細胞を採る際、麻酔が必要になることもあります。この検査で結果が陽性であればさらに詳しい検査がと必要なります。体がんの細胞診は頸がんより精度が下がりますので、異常なしと判定されても、性器出血が持続する場合は再検査が必要です。

2)子宮内膜組織診

子宮内膜細胞診が陽性、疑陽性であれば子宮内膜組織診を行います。キューレットという器具で子宮内膜を採取し組織診断をします。小さな病巣の場合これをとり逃してします場合があるので麻酔をかけて全面掻爬をします。

3)子宮鏡

直接子宮腔内や頸管(子宮の入り口)を観察できるので、補助診断として有用です。病巣と思われるところを生検することもできます。

4)経腟超音波などの画像診断

経腟超音波断層法による子宮内膜の厚さが閉経後で5mm以上あるものは要注意といわれています。MRI(磁石の原理を応用した磁気共鳴装置と呼ばれる機械を使った検査)などの画像診断では、がんが子宮筋層にどの程度浸潤しているかなど、がんの広がりを診断できます。最近では感度と特異性の高いPET(ペット)検査(放射性同位元素を用いた検査)も行います。

5)腫瘍マーカー

一般の血液検査に加え、腫瘍マーカーと呼ばれるがん細胞によって産生される物質の検査も行います。一般的には、腺がんで上昇することの多いCA125などを測定します。

4.病期(ステージ)

体がんの進行期(がんの進み具合)は、手術を行ったあとにその肉眼的所見と摘出された子宮や卵巣、リンパ節の病理組織所見で決まります。

0期

子宮内膜異型増殖症

I a期

がんが子宮内膜にとどまっているもの。

I b期

筋層浸潤(がんが子宮筋層まで侵している)が1/2以下のもの。

1c期

筋層浸潤が1/2を超えるもの。

II a期

頸管腺(子宮頸部の表面)を置換しているもの。

Ⅱb期

頸管間質への浸潤があるもの。

III a期

がんが漿膜(子宮の表面を覆う膜)あるいは附属器(卵巣と卵管)に浸潤しているか、あるいは、腹腔洗浄細胞診陽性のもの。

Ⅲb期

腟転移のあるもの。

Ⅲc期

骨盤リンパ節、あるいは傍大動脈リンパ節に転移のあるもの。

Ⅳa期

膀胱あるいは腸粘膜への浸潤のあるもの。

Ⅳb期

腹腔内あるいは、鼠径リンパ節を含む遠隔転移のあるもの。

また、組織分化度が重要であるためそれぞれの組織でGrade(組織学的分化度)分類(Grade1~3)が行われます。同じ進行期でも、Grade1は高分化型のがんで予後が良く、Grade3は未分化型のがんで予後が不良です。

5.治療

基本的に手術療法が第一選択となります。がんを摘出するとともに、がんの進行期が決まります。手術後、摘出した臓器の病理診断をもとに、再発の可能性が高い場合、術後補助療法を行います。組織分化度が低分化、リンパ節転移、深い筋層浸潤が重要な危険因子です。

1)手術療法

腹腔内細胞診、子宮全摘術、両側附属器摘出術が基本的な術式です。がんの進み具合を決定するには、骨盤内や大動脈周囲のリンパ節への転移を評価する必要もあります。しかし、この部のリンパ節を全部とる(リンパ節郭清)か、生検などのチェックに留めるかに関しては、どちらが有効という明確な証明がまだありません。術後合併症やリンパ浮腫の原因となる骨盤内リンパ節郭清を全例に行なわず、進行期のある程度進んだ症例に限って行っている施設もあります。大動脈周囲のリンパ節郭清にはおへそより上のお腹の切開が必要になります。施設ごとに細かいところで対応が異なる場合があり、担当医と相談し納得のいく治療を受けるのが良いと考えます。

2)術後補助療法

術後には補助療法として放射線療法や化学療法を行う場合があります。通常、進行期Ⅰc期以上または低分化がんに対して行います。放射線療法を行う場合もありますが、日本では放射線療法により、なかなか治らない腸管障害などに悩まされる人が多いことなどから、化学療法を行う場合が多いです。使う薬剤はシスプラチンとドキソルビシンの併用療法(AP療法)が標準的といわれています。この治療法はアメリカで行われた大規模臨床試験で術後放射線治療より有効であったと報告されています。また最近パクリタキセルとカルボプラチンの併用療法(TC療法)が副作用も比較的少なく、効果がAP療法と同等といわれており、広く普及しつつあります。抗がん剤の副作用に注意しつつ3~6コース行います。

3)ホルモン療法

若い人の体がんや末期がんではホルモン剤での治療が行われることがあります。進行期Ⅰa期で高分化な類内膜がんや子宮内膜異型増殖症の方で、将来強く妊娠・分娩を希望される場合は子宮内膜前面掻爬を行った後に黄体ホルモン(MPA)を用いた治療を半年以上行うことがあります。この場合厳重な経過観察が必要で、治療してもがんが消えない場合、標準的な治療に切り替える必要があります。

6.治療の副作用と対策

がんに対する治療は、がん細胞のみならず、同時に正常な細胞も障害を受けることは避けられませんので、副作用・後遺症を伴います。医師はできるだけ副作用を軽減すべく努力していますが、治療に伴い種々の副作用があらわれることがあります。

1)手術療法

子宮の摘出自体で大きな後遺症はありませんが、閉経前に両側の卵巣を摘出した場合、更年期障害様の症状が現れます。またとくにリンパ節郭清まで行った場合、腸閉塞を起こしやすくなったり、リンパ浮腫などライフスタイルに影響をおよぼす症状が出現する場合があります。ただしリンパ浮腫は適切なマッサージや包帯療法でかなり軽減できます。

2)抗がん剤による化学療法

抗がん剤による副作用は、用いる抗がん剤の種類によって異なり、発現頻度・程度にも個人差があります。副作用は自分でわかる自覚的なものと、検査などによってわかる他覚的なものに大別されます。自覚的な副作用には、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、全身倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、脱毛などがあります。他覚的な副作用には、白血球減少、貧血、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、肺障害などがあります。その他、予期せぬ重篤な副作用があらわれ、まれに命にかかわることもあります。白血球減少が高度な場合、感染症の合併を防ぐため、遺伝子工学でつくられた白血球を増やす薬を皮下注射や点滴することがあります。貧血、血小板減少が高度な場合、まれに輸血を行うこともあります。主に抗がん剤の投与日から数日間にわたってあらわれる吐き気・嘔吐に対しては、吐き気止めの薬を点滴静脈注射します。脱毛、末梢神経障害に対する効果的な治療法はいまだ開発されておりません。これらの副作用の大半は一時的なものであり、脱毛、末梢神経障害を除き、治療開始後2~4週間で回復します。脱毛の場合でも、あとで毛が生えてきますのでご安心下さい。ただし、手足のしびれ感は完全に回復しないこともあります。