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大腸がん(だいちょうがん)

1.大腸がんとは

大腸とは:

小腸に連続する1.5-2mの長さの腸管で、結腸、直腸、肛門からなり、食物が消化吸収された後に、水分を吸収しながら固形の便にするところです。特に直腸は便塊をつくる部分としての貯留能を有する。

大腸がんの発生:

大腸がんの発生には遺伝的要因によるものと、食生活などの環境因子によるものが関係していると考えられている。明確な遺伝性によるもの(家族性大腸腺腫症、遺伝性非ポリポーシス性大腸がん)は約5%で、そのほか遺伝性がはっきりとしていないが家族内に大腸がんに罹った人が複数いる発生パターンもある。一方環境因子については食生活が大きく関与していると考えられ、動物性タンパク質摂取量の増加、食物繊維摂取量の低下が考えられている。

大腸がんの発症頻度:

1999年(推定)94,500人、2003年(概数)死亡数は38,900人とされ、がんのなかで2位、3位となっている。特に死亡者数は、この20年間に2.5倍に増加し、現在も増加傾向にある。また2003年には女性のがん死亡数第1位が胃大腸がんとなった。男女比では男性のほうが女性より約2倍発生頻度が高い。

大腸がんの発生部位:

大腸がんのできやすいところはS状結腸と直腸で約70%を占めています。しかしその他の大腸どこでも発生の頻度は低いですがおこります。

大腸がんの発症年齢:

一般的に大腸がんの罹患(りかん)率は、50歳頃から増加傾向を示し、年齢とともに高くなります。また遺伝性のがんでは若年からも発症します。

大腸がんの危険因子:

国際がん研究機構(IARC)の報告で肥満は結腸がんの危険因子とし、喫煙、大量の飲酒も大腸がん発生に少なからず関与するとしている。また食事栄養要因としては加工肉の大量摂取(加熱の際に生成される発がん物質の大量摂取)、野菜などの食物繊維の摂取量の低下(便の濃縮、停滞による発がん物質と腸粘膜の長時間の接触)が考えられている。

大腸がんの予防因子:

がんの予防には、がんの発生を予防する一次予防と、早期に発見して治療をおこなうことにより死亡を防ぐ二次予防に分けられます。一次予防としては運動が結腸がんに予防的であることが示されている他、野菜については、2003年に国際がん研究機構(IARC)から”おそらく確実”と報告されています。また果物は、大腸がん予防の可能性があるとされています。エビデンス不十分な予防要因としては葉酸、カルシウム、ビタミンA,C,D,E、食物繊維摂取などが挙げられています。非ステロイド消炎鎮痛剤とホルモン補充療法が、リスクを減少させる要因として挙げられています。また二次予防としては便潜血反応を中心とした検診にて、大腸がんの前がん病変といわれる大腸腺腫や早期大腸がんでの発見・治療にて死亡を防ぐことが挙げられます。

一般的に大腸がんは近年男女共に増加傾向にあり、特に2003年には女性の死亡原因の第一位となっております。現在大腸がんの治療で最善の方法はがんを内視鏡、外科的手術などによって取り除くことです。またがんの拡がった範囲が狭いほど身体の侵襲も少なく、治療をおこなうことにより、高い確率で治癒することになります。発見が遅くなると、がん細胞が大腸から肝臓や肺へ転移をおこします。転移状況によって異なりますが、手術により、切除が可能である場合の予後は比較的良いとされています。しかし切除困難な転移の場合は化学療法(抗癌剤治療)や放射線療法などが中心におこなわれます。

手術を受けた後は定期的な検査を受ける必要があります。すなわち再発の可能性があるためで、初回手術時の進行度によってその再発率は異なってきます。早期のものの再発率は低く、進行がんになればその率は高くなります。結腸がんならびに直腸がんともに肝臓、肺が転移しやすい臓器で、また直腸がんでは他に切除した部分の近くに再発することもあります。再発が見つかれば、再発巣の切除が一番ではありますが、切除することが予後の改善とならないこともありその場合は化学療法(抗癌剤治療)や放射線療法などが中心の治療となります。再発の9割以上は術後1-3年目以内に発見され、術後5年以上において再発しない場合が完治の目安となります。

2.大腸がんの症状

大腸がんの症状は、大腸のどこに、またどのくらいの大きさのものかによって違います。大腸のはじまりである盲腸、上行結腸、横行結腸では大きながんになっても腸の内容物が液状であるため通過しにくくなることは少なく、貧血やお腹にしこりを触れるとの訴えが多くみられます。一方肛門に近い大腸のS状結腸、直腸では腸内容物が固形状となっているため、血便、便が細くなる、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなどの訴えが多くみられます。しかしいずれもがんに特異的な症状ではなく、痔、良性疾患によっても同じ症状がでることも多いです。腹部症状がある場合には早めに病院、医院での診察、検査をお勧め致します。

3.大腸がんの診断

一般に大腸がんのスクリーニング(検診)としておこなわれているものは、便潜血検査法です。簡単に言うと便の中に血液が含まれていないかをみる検査法です。一般に大腸に病変が場合には、便が通過する際に病変が擦れて血が出やすく、このことを考えておこなわれる訳です。しかし便潜血陽性であれば、必ずがんがある訳ではありません。良性のポリープであるとか痔によっても陽性となります。すなわちこの検査だけでは病気を確定することは困難であり、精密検査が必要となります。また陰性であっても絶対に大腸がんはないとも言い切れないところはあります。この方法は健康な集団のなかから負担が少なく、簡便に大腸がんの疑いが否定できない人を拾い上げる最も有効な検査法です。 がんはできるだけ早く発見、治療することが、再発、死亡をおさえることができます。症状が出た後よりは無症状の時の方が病状が軽いことが多く、無症状の時期に発見することが最重要となります。40歳を過ぎたら検診を受けることをお勧めします。

大腸がんの精密検査には、大腸内視鏡検査、場合によっては注腸造影検査も必要となります。下剤を飲むこと、肛門からの検査となることで、多少負担のかかる検査です。

以下は大腸がんの患者さんに一般に施行する検査項目に関して概説しました。

直腸指診検査

大腸がんの患者さんのみではなく、直腸肛門の病変が疑われる時にまずおこなわれます。下部直腸がんの診断も高い確率で見付けられ、重要な検査です。患者さんは身体の左側を下にして、えびのように身体を丸めた体位でおこなわれます。

注腸造影検査

検査の前日に食事制限、下剤にて大腸の中に便が無い状態にします。検査方法は肛門から大腸内にバリウムを注入した後に空気を入れて大腸を膨らせて、レントゲン撮影をおこないます。バリウムと空気を入れるため、多少違和感がありますが痛みを感じることはありません。ポリープやがんの位置や大きさ、腸の狭さなどを診断します。

大腸内視鏡検査

大腸の中に便が残っていると、正確な検査ができないので、検査の当日に腸管内洗浄液(下剤)を1~2リットル飲んで、大腸内をきれいにしてから検査を行います。検査方法は基本的に胃内視鏡検査と同様で、大腸の場合は肛門から内視鏡を挿入し、空気を入れて腸管を膨らませながら腸の表面(粘膜)を直腸から盲腸まで全大腸の観察をします。検査時間は約20分くらいですが、おなかの手術後で腸の癒着している場合や、腸の長い方は多少の苦痛が生じやすく、状況に応じて軽い鎮静・鎮痛剤を使用することがあります。大腸内視鏡は直接ポリープ、がんなどの病変を見ることができるので、異常が認められた場合は、組織を取って病理組織診断することもできます。また、治療としてポリープ切除や内視鏡的粘膜切除術(EMR)することもできます。

腫瘍マーカー

血液中にがん細胞自身またはがん細胞に生体が反応をおこして産生するタンパク質、酵素、ホルモンなどが流れており、その物質を測定することにより、がんの診断をする方法です。採血するだけで、がんを発見しようとする試みは以前よりおこなわれていますが、現在のところ大腸がんの早期診断、スクリーニングが可能な腫瘍マーカーはありません。大腸がんの場合一般的に測定されるマーカーとしてはCEAとCA19-9で、進行大腸がんであっても約半数が陽性を示すのみです。腫瘍マーカーは術後の転移・再発の指標ならびに治療効果判定の指標として用いられます。しかし、転移・再発した場合に必ず異常値を示すわけではなく、逆に転移・再発していない場合でも異常値を示す時もあり、経時的な測定、判断が必要です。

胸部単純X線検査

大腸がんにて肝転移についでおこりやすいとされる、肺転移を発見するために簡便に安価におこなえる検査です。しかし感度特異度に関しては胸部CTには劣るとされます。

超音波検査

超音波検査は、身体にゼリーを塗って超音波を利用しておこなう検査です。患者さんに痛みはなく、侵襲が少なく、手術前や手術後に肝臓の転移、腹膜転移、リンパ節転移の検索をおこないます。

コンピューター連動断層撮影(CT)検査

大きなドーナッツの穴のなかに横になり、X線を利用して、身体を輪切りにしてコンピューター処理にて画像を作成する検査で、痛みはありません。手術前、手術後に病変の周りへの拡がり、肝臓の転移、腹膜転移、リンパ節転移の検索をおこないます。病気の程度をよりわかりやすくするために、造影剤と呼ばれる薬を注射して、検査をおこなう場合があります。なおその薬にアレルギーがある方は使用できない場合があります。

磁気共鳴画像法(MRI)検査

CTと同じように大きなドーナッツ様の穴のなかに横になり、磁気を利用して、身体を輪切りにしてコンピューター処理にて画像を作成する検査で、痛みはありません。CTと異なるのは、身体の輪切りの写真だけではなく、横断面の写真もとることができます。病変の周りへの拡がり、肝臓の転移の検索をおこないます。また病気の程度をよりわかりやすくするために、造影剤を注射して、検査をおこなう場合があります。その薬にアレルギーがある方は使用できない場合があります。また磁気を用いる検査であるため、クレジットカード、磁気に反応するものは検査前に身体からはずしておきます。身体に金属が入っている場合は検査ができない場合があります。

バーチャルコロノスコピー(仮想内視鏡)検査

腸管内に空気を挿入後、ヘリカルCTと呼ばれる高速に撮影できる装置で撮影をおこなうことによって得られた画像をコンピューター処理にて3次元的に描出する方法です。すなわち大腸内視鏡と似た像が得られます。従来の大腸内視鏡と比較して苦痛が少ないと言われますが、便汁、便塊などと腫瘍との鑑別が困難なことがあります。

陽電子断層撮影(PET)検査

がん細胞が正常細胞よりもブドウ糖の代謝が亢進していることを利用している。ブドウ糖の誘導体にアイソトープを標識し、静脈内に注射した後、撮影をおこない集積像について検討をおこなう。大腸がんの手術前にこの検査をおこなうことは一般的ではなく、術後のフォローアップにおいてCT、MRIなどの検査では異常を認めないが、血液中の腫瘍マーカーの上昇から再発が疑われた時におこなわれることが多いです。

4.大腸がんの病期

大腸がんの診断がついた場合、次に必要となる項目として病期があります。すなわち現在の大腸がんが転移をおこしているのかどうか、がんの拡がりを前記の方法で検討するもので、その結果から術式が決定されます。最終的な病期としては手術中ならびに切除標本の顕微鏡検査結果(病理診断)にて決定されます。病期分類にはわが国の大腸癌取り扱い規約に基づいたステージ(stage)分類が進行度の判定に用いられることが多いです。がんの壁深達度、リンパ節転移、腹膜転移、肝転移、腹腔外他臓器転移によってstage0からstageIVに分類され、数が増すにつれてがんの拡がりが大きい(がんが進行している)ことになります。その他、Dukes(デュークス)分類とTNM分類のステージ分類がありますが、大きな違いはありません。大腸癌研究会:全国登録(1991-1994)における各病期治療後の5年生存率を病期下に記載しました。

ステージ(stage)分類

0期
(94.3%)
がんが粘膜にとどまるもの
I期
(90.6%)
がんが大腸壁の固有筋層までにとどまり、リンパ節転移のないもの
II期
(81.2%)
がんが大腸壁の固有筋層を越えているが、リンパ節転移のないもの
IIIa期
(71.4%)
原発巣近傍にリンパ節転移総数3個以下であるもの
IIIb期
(56.0%)
原発巣近傍にリンパ節転移総数4個以上、または比較的で遠くにリンパ節転移のあるもの
IV期
(13.2%)
腹膜、肝、肺などの遠隔転移のあるもの

5.大腸がんの治療

内視鏡的治療、外科療法、化学療法、放射線療法があります。

1)内視鏡的治療

近年内視鏡技術、装置の進歩により以前では判定が困難な種類の病変でも指摘できるようになってきています。すなわち色素を使った検査法や拡大内視鏡によっておこなわれ精度が上がっています。これらの診断を中心に内視鏡切除もおこなっています。しかし基本的に治療として根治を目指せるものは早期がんです。また切除したものは病理診断をおこない最終診断となります。

(a) 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー:polypectomy)

茎のあるポリープ病変が対象となります。内視鏡にスネアとよばれる針金の輪のような処置具で、病変の茎の部分に引っかけて締めて、高周波電流を通して切除します。

(b) 内視鏡的粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)

ポリープ以外の無茎性、平坦なポリープの場合に、病変の粘膜下層に生理食塩水などを注入して、病変を膨隆させて、粘膜を焼き切ります。通常、外来治療でおこないますが、場合によっては短期間の入院の上内視鏡治療を行います。

(c) 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:endoscopic mucosal dissection)

早期胃がんの治療法として特に普及している方法で、少しずつ大腸の病変にもおこなわれつつあります。しかし大腸は胃よりも壁が薄いので合併症:穿孔の危険性が高くなります。手技は病変の周囲を専用のナイフで切開をおこなった後、病変を電気メスで徐々にはぎ取る方法です。大腸は長い管腔臓器で曲がっている部分も多く、また内視鏡の扱いなど高度な手技を要するため切除に多少時間がかかります。一般的には数日間の入院が必要となります。

適応としては良性の腫瘍や早期がんであるが、摘出した病変の顕微鏡で検索(病理診断)にてすることが重要です。その結果からリンパ節転移の可能性が高い場合には追加の外科手術が必要となる場合があります。

2)外科療法

進行大腸がんにおける治療で一定の成績が得られているものは手術であり、この成績を凌駕するものはなく、外科的切除が治療の中心となります。簡単に言うとがんの存在する腸管の切除とつなぎなおす(吻合)、ならびに転移をおこしやすいリンパ節を切除(リンパ節郭清)することです。

(1)結腸がんの手術

腸管はがんの部分を含めて約20cm切除します。またリンパ節はその腸管を養っている血管にリンパ管・リンパ節が巻きついており、血管をメルクマールとして切除します。取り除くリンパ節範囲は進行度によって異なります。

(2)直腸がんの手術

直腸は骨盤内の深いところにあり、結腸と違って隣接臓器と腹膜を介さずに接している部分が多い。隣接臓器としては精嚢・前立腺・膀胱・子宮・卵巣などがあり、またこれらの臓器を支配する神経として自律神経がある。がんの浸潤が軽度であり、周囲への浸潤がなければ、隣接臓器・自律神経を残した手術で根治術となりえますが、がんが隣接臓器・神経の合併切除が余儀なくされ、排便、排尿、性機能など日常生活に様々な支障をきたすことになります。勿論、術後の日常生活のことを考えると、臓器・神経を残せることが一番良いことは明らかですが、残すことにより再発率が高くなるようでは問題であり、術前検査ならびに術中所見で充分な判断を必要とします。

  • 自律神経温存手術: 排尿機能と性機能を支配する自律神経を残した手術です。術前、手術所見から、がんの浸潤が無いと考えられた場合などに選択的に自律神経を温存する方法です。全部の神経が残すことができれば、日常生活に支障をきたすことはない程度に排尿機能と性機能が維持できます。特に男性において射精、勃起機能を温存することができます。逆に切除した場合は切除範囲により異なりますが、排尿機能と性機能の障害がおこります。
  • 肛門括約筋温存手術:1990年ころは肛門に近い直腸がんの多くは人工肛門となる手術が多い状態でした。近年では直腸がんの7-8割は人工肛門を避ける手術ができるようになりました。基本的には肛門から4cm以上離れていれば、肛門を温存することが可能と考えられます。また貯留能としての直腸を失うわけですが、人工的なパウチ(袋)をつくって排便回数をコントロールする方法をおこなうこともあります。さらに最近では、肛門から4cm以内の早期がんや一部の進行がんで肛門括約筋を切除して根治術か可能な症例があり、自然肛門を温存する術式が専門施設で行われるようになってきています。しかし、高齢者では無理に肛門を残すと術後の頻便、便漏れなどのために良くないこともあります。よって術前の病期の進行度、手術所見、年齢、社会的活動力、本人や家族の希望などから、総合的に術式を決定することになります。
  • 局所切除

    一部の早期がんや内視鏡的に切除困難と判断された腺腫に用いられる。開腹手術ではなく、肛門または仙骨の脇から直腸の腫瘍を切除する方法です。

  • 人工肛門

    前記の自然肛門を残せなかった場合に、残存腸管の肛門側の結腸をお腹から出して便がでるようにしたものです。基本的には左側の下腹部に作製されます。また、高齢者で肛門括約筋の力が低下していて、肛門の温存することが術後の頻便、便漏れなどをきたし、生活に支障を及ぼすと考えられたときにおこないます。患者会(オストメイト)や専門の看護師等から人工肛門の扱い方などの講習をおこなっています。

(3)腹腔鏡手術

1990年代から日本でも大腸がんに対する腹腔鏡手術が行われるようになり、施行する施設、症例は増加傾向にあります。腹部を二酸化炭素で膨らませて、カメラをお腹の約1cmの穴から入れ、画像を見ながら他の約1cmの穴、数ヶ所から器具を入れて手術を行います。またがんを取り出す際に1ヶ所、約5cmの傷が必要です。手術時間は開腹手術より長くなりますが、小さな傷で術後の疼痛も少ないとされます。

現在、進行がんにおける腹腔鏡手術が開腹手術と同等の安全性や治療成績が得られるのか、臨床比較試験が実施されています。

よって施設により腹腔鏡手術の対象としている患者さんが異なります。また開腹手術と比較した長所、短所の説明を十分に受けて、腹腔鏡手術か開腹手術かを決定して下さい。

3)放射線療法

主に直腸がんに対しておこなわれます。目的としては手術の補助療法として骨盤内からの再発の抑制、手術前の腫瘍の縮小などを目的としたもの、また切除が困難な骨盤内の腫瘍による痛みや出血などの症状の緩和や延命を目的とする緩和的放射線療法があります。

(1)補助放射線療法

基本的には切除可能な直腸がんが対象となり、高エネルギーX線を身体の外から約5~6週間かけて、副作用が軽減できるように少しずつあてます。症例により化学療法が併用されます。なお日本では的確なリンパ節郭清をおこなうことにより、骨盤内からの再発が少ないことから、欧米に比べ補助放射線療法はあまり積極的にはおこなわれていません。

(2)緩和的放射線療法

切除不能な骨盤内の腫瘍による痛みや出血の症状を和らげるため、ならびに腫瘍の増殖抑制を目的におこないます。全身状態や症状の程度によって、高エネルギーX線の量、期間、化学療法との併用が決定されます。

放射線療法の副作用

放射線療法の副作用は、治療期間中のものと、治療が終了してから数ヶ月~数年後におこるものがあり、特に放射線が照射されていた部分におこります。副作用の程度は個人差があり、ほとんど出ない人、逆に強く出る人もいます。早期におこる副作用として、下痢、腹痛、全身倦怠感、嘔気、嘔吐、食欲低下、頻尿、排尿時痛、皮膚炎、白血球減少などがあります。一般に治療後2~4週で改善します。また治療後数ヶ月から数年後からおこる副作用として、腸管、膀胱からの出血や炎症などが出ることがあります。

4)化学療法

大腸がんの術後に再発率を抑えるためにおこなう補助化学療法と根治手術が不可能ながんまたは再発がんに対する生存期間の延長および一般生活の向上を目的とした化学療法とがあります。大腸がんに対して有効で国内にて承認されている抗がん剤は、フルオロウラシル(5-FU)+ロイコボリン(アイソボリン)、イリノテカン(CPT-11)、オキサリプラチン、UFT/LV、UFT、S-1などです。

(1)術後補助化学療法

手術によりがんを切除できた場合でも再発する可能性が“ゼロ“ではありません。再発率は進行度によって異なりますが、進行度が高くなるにつれて高くなることが知られています。このことに対して、化学療法をおこない再発を予防するまたは再発までの期間を延長できるようにすることを術後補助化学療法といいます。一般的には、術後補助化学療法はリンパ節転移があるstageIIIの患者さんで、5-FU/ロイコボリン療法の6ヶ月投与がおこなわれています。リンパ節転移のないstageI期、stageII期の大腸がんについて術後補助化学療法の有用性のデータはなく、基本的には化学療法はおこなわず、経過観察をおこないます。

(2)切除不能・再発大腸癌における化学療法

一般に根治的な手術が不可能な場合、再発大腸癌には、化学療法が適応となります。しかし全身状態によっては施行できない例もあります。基本的に臓器機能・全身状態が保たれている症例では、化学療法をおこなった症例が化学療法をおこなわない症例と比較して、生存期間を延長させることがわかっています。しかし症例によっては抗がん剤の副作用が強く出る場合もあり、その状況・程度を考慮して、うまくつき合っていくことが必要です。

  • 5-FU(5-フルオロウラシル)+ロイコボリン

    ロイコボリンと5-FUの2剤が併用されることが多いです。週に1回、または2週間に1回持続点滴を行う方法があります。

    副作用は手・指の色素沈着、食欲低下、下痢、口内炎、白血球減少があります。

  • UFT+ロイコボリン

    内服薬で欧米において進行再発結腸・直腸癌患者を対象におこなったロイコボリン+UFTの併用療法が注射薬5-FUとロイコボリンの併用療法と同等の生存期間を示しました。1クールは4週間連続投与して、そのあと1週間休む方法で繰り返しおこないます。副作用は色素沈着、食欲低下、下痢、口内炎、白血球減少があります。

  • イリノテカン

    5-FU/ロイコボリン/イリノテカンの3剤併用で用いられます。5-FUを15分で投与する方法(IFL療法)と、48時間の化学療法をおこなう方法(FOLFIRI療法)の2種類あります。現在ではFOLFIRI療法が主におこなわれています。切除不能大腸癌症例に対して約50%の有効率となっています。

    副作用としては、食欲低下、嘔気、全身倦怠感、下痢、白血球の減少、脱毛などがあります。

  • オキサリプラチン

    2005年4月より使用可能となった薬剤です。5-FU/ロイコボリン/オキサリプラチンの3剤併用(FOLFOX療法)では切除不能大腸癌症例に対して約50%の有効率となっています。FOLFIRI療法とほぼ同等です。

    副作用としては80~90%に感覚性の末梢神経障害をきたすのが特徴で、寒冷刺激により誘発されるため、冷たいものを触ったり、水仕事はなるべく避けた方がよいとされます。治療開始初期は数日で回復しますが、治療の継続とともに、徐々に回復が遅れます。治療後約5ヶ月経過では、10%の患者さんに機能障害(ボタンが掛け難くなる、箸が持ちにくくなる)をきたすといわれています。このような場合には、化学療法投与量の減量あるいは延期とします。その他に白血球、血小板が減ったりすることがみられます。

  • ベバシズマブ

    2007年より使用可能となった血管新生増殖因子 VEGFに対する中和抗体です。単独では有効性を示さないが、前記のFOLFOX療法、FOLFIRI療法と併用することにより、生存期間を延長することが示されています。しかしこの薬剤に特有の副作用、また重篤な生体反応をあらわすこともあるので、適応、使用については担当医から十分な説明を受けて、理解した上で投与することをお勧めします。

  • セツキシマブ

    上皮成長因子受容体(Epidermal growth factor receptor) の阻害剤で海外において抗がん剤に耐性となった症例に使用して有効性を示した抗体医薬品で、本邦では2008年10月には使用可能となる予定です。

抗がん剤は健康な部分に悪い影響を与えますが、それ以上にがんを攻撃することで恩恵を受けるものです。全身状態の良くない人では恩恵を受けられない場合もあります。患者さんの身体の状態、副作用の程度などを考慮し、担当医とよく相談して納得の上で治療法を選択することをすすめます。

6.大腸がんの生存率

大腸がんにおける治療は病変切除が治療の中心となります。しかし来院時の既往症や全身状態状況、また肝臓、肺、腹膜転移などを含む遠隔をおこしていた場合には手術を先行すべきか、化学療法、放射線療法などを先行すべきか、判断が必要となります。

また初回手術時に画像上、手術時に確認できるがんがすべて取り除けたとしても、進行度によって異なりますが、再発する可能性があり、予防的に化学療法が必要となる場合もあります。また定期的な通院(術後3年間は1~6ヶ月に一度)と胸部X線検査、お腹のCT、超音波検査、腫瘍マーカーなどの検査にて再発の発見に努めます。大腸がんでは肝臓や肺・骨盤内に転移・再発する場合が多いですが、初回手術時と同様にいかなる再発状況かによって切除すべきか、化学療法や放射線療法を開始すべきか判断が必要となります。再発の90%は3年以内に発見されると言われます。しかし成長の遅い大腸がんもあるので5年間の追跡は必要です。なお3年目以降は半年~1年に一度の検査で十分です。いずれにしても各治療は身体に侵襲をきたすものであり、治療方針につきましては各担当医から説明を受けてください。

大腸癌研究会:全国登録(1991-1994)における各病期治療後の5年生存率

0期 (94.3%)、I期 (90.6%)、II期 (81.2%)、IIIa (71.4%)、

IIIb期 (56.0%)、IV期 (13.2%)