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小児白血病(しょうにはっけつびょう)

I.概念

白血病は、これから血液細胞になる若い細胞(芽球=白血病細胞)が赤血球、白血球、血小板に成熟・分化せず、単クローン性に増殖することによって起こり血液のがんといわれる。

II.疫学

小児白血病の約75%は急性リンパ性白血病(ALL)であり、残りのほとんどが急性骨髄性白血病で(AML)ある。そのほか少数だが骨髄異型性症候群(MDS)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)などが存在する。小児白血病の発生頻度は概ね一定であり、小児人口10万人あたり毎年3?4人の発生がある。好発年齢をみるとALLは2-5歳に大きなピークがあるが,AMLは各年齢層に比較的均等に分布するので,全体として10歳前後にも小さなピークを認める.

III.成因

白血病の成因は、現在においても不明である。

IV. 臨床症状

小児では急性リンパ性白血病(ALL)が大部分を占めるので,それに関連する症状が主となるが,急性骨髄性白血病(AML)でもほぼ同様である.発熱,貧血,出血傾向と臓器腫大の4大症状が他の悪性腫瘍とも共通した症状の基本であるが,小児の場合,機嫌が悪い,顔色が悪い,食欲がないなど,なんとなくいつもの元気がない,といった状態が最初の症状である.貧血が亢進すると活動性の低下,易疲労感が顕著となる.微熱や時にスパイク状の発熱がみられる.急性白血病の場合,臨床症状発現から診断までの期間は通常2?4週間程度である.期間は貧血や血小板減少の程度,また,末梢血中の白血病細胞数や脾腫の程度と必ずしも比例しない.

VI. 血液検査

多くの白血病では、貧血、血小板減少を認める。白血球は低下するものから著増しているタイプまで認める。

V. 身体所見

貧血、出血症状、肝臓、脾臓の腫大、リンパ節腫大等を認める。

VII. 診断と分類の手順

(1)白血病の診断

白血病が疑われた場合はすみやかに骨髄穿刺を実施する.骨髄穿刺液から塗抹標本を作製し,メイギムザ染色を実施する.光顕で正常骨髄にみられる各分化段階の骨髄細胞分画は消失し,大部分の幼弱な白血病細胞と,少数の成熟顆粒球が存在するのみで,この所見によりまずは急性白血病の診断が下される.種々の特殊組織化学染色や細胞表面マーカー検索により,均一に増加している細胞が造血系の幼弱細胞であることを確認する.

(2)急性白血病の分類:FAB分類

FAB分類ではリンパ性白血病(ALL)はL1~L3,骨髄性白血病(AML)はM0~M7に分類される。

(3)急性白血病の分類:染色体分析/遺伝子解析による分類

白血病細胞における染色体検査は、今後の治療方針(予後不良の染色体 t(4;11)やt(9;22)等)を左右するため、必須の検査である。

VIII. 初診時の特殊症状や所見と緊急治療

初診時すでに生命に危険が迫り(oncologic emergencies:腫瘍学的緊急事態)、緊急治療を要する場合がある.

(1)出血

血小板が20,000/μlを切ると自然出血の危険性が増すので,血小板輸注を積極的に行う.

(2)発熱と感染

感染症を契機に、白血病と診断されることがある。顆粒球が減少し感染症が疑われる場合,血液培養ほか必要な検査を実施後,抗生剤を開始する.抗生剤不能の際には、真菌感染も疑われるため、抗真菌剤の投与も行う。

(3)腫瘍溶解症候群

化学療法による白血病細胞の急激な溶解によって正常代謝が乱れる.高尿酸血症による急性腎不全,高カリウム血症,高リン血症に伴う低カルシウム血症が問題となる.大量輸液による利尿,重炭酸ナトリウム投与による尿のアルカリ化とalloprinol投与による尿酸生成抑制が腫瘍溶解症候群の予防に必要である。

(4)白血球塞栓

AMLで白血球数が200,000/μlにもなると血管内塞栓を起し,低酸素症,出血,梗塞みられる.脳と肺が標的臓器となり重篤な症状が出現し,早期死亡の原因となる.血液透析,交換輸血を速やかに実施し,化学療法を開始する.

(5)縦隔腫瘍/上大静脈症候群

T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)にしばしば合併する.縦隔腫瘍による気道閉塞を伴うことがあることを常に前もって予測し,すみやかにその対策を講じなければならない.大きな縦隔腫瘍がある時,全身麻酔や強い鎮静剤を使用した場合に心,呼吸停止に陥ることがある.挿管,抜管時特に注意が必要である.

IX. 特殊な白血病

以下,比較的稀であるが,特徴ある白血病について述べる.

(1)乳児白血病

生後12か月未満の乳児期に発症する白血病の総称である。他の年齢層と異なり,特異な臨床像を示す.すなわち,急性リンパ性白血病,急性骨髄性白血病いずれも発症し,診断時の白血球数の著明な増多,肝脾腫,中枢神経系白血病の合併,皮膚浸潤,血小板減少,初期化学療法に対する反応性低下などの特徴を示し,予後不良である.11q23染色体異常によるMLL遺伝子再構成を多く認める。

(2)若年性骨髄単球性白血病(JMML,旧若年性慢性白血病)

以前,若年性慢性白血病といわれていたが,最近は若年性骨髄単球性白血病(JMML)と称されることが多い.小児白血病の1%程度で稀.1歳前後が多く,男児に多い.(男/女=2.5:1)肝脾腫,リンパ節腫脹,貧血,発熱,発疹が主な症状と所見である.

(3)ダウン症に伴う白血病

ダウン症には急性骨髄性白血病(M7)を発症する率が高い.ダウン症に伴う白血病は、リスクが低く比較的弱い化学療法で治癒する可能性が高い.

X.治療

(1)理念

小児白血病の治療ではチームによる集学的治療が大切である.小児の悪性腫瘍,血液学を専門とする小児内科医を中心に小児外科医,放射線医,リハビリテーション,ソーシャルワーカーなどが揃っているのが理想的である.現在は、全国的にJPLSG(Japan Pediatric Leukemia Study Group)が、主体となって治療プロトコールが作成され、成績の向上に努めている。

(2)治療の原則

発症時、骨髄が白血病細胞でほぼ100%占拠されている時点では、白血病細胞はからだ全体で1012個存在するといわれている。この細胞のtotal cell killが治療の理念であり、多剤化学療法による治療が行われている。

XI.同種造血幹細胞移植

急性リンパ性白血病においては、t (9;22)あるいはbcr-abl陽性、11q23 あるいはMLL 陽性、ステロイド反応性不良例、寛解遅延例(治療開始6週以降)が挙げられる。急性骨髄性白血病では、高リスク群(FLT-ITD陽性、寛解導入不能例、Ph1陽性、monosomy7、5q-、t(16;21))において、同種造血幹細胞移植が施行される。
再発・難治例に対しても移植が適応となる。

XII.看護への指針

治癒率が向上したとはいえ依然として高い致死率を示す予後不良の疾患であるので,患児のみならず両親,家族への気配り,励ましに留意する.医師その他のスタッフとともに治療プロトコールをしっかり説明し,病名を告知した方が治療がスムースにいくことが多い.抗癌剤の種類と投与量,副作用出現を常にチェックすること.プロトコール遂行中はケースワーカーの協力も必要である。

更新履歴

  • 2010年11月24日 一部改稿