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小児白血病(しょうにはっけつびょう)

I.概念

白血病は造血系幼若細胞が単クローン性に増殖する,小児では最も頻度の高い,悪性疾患である.血液のがんといわれる.

II.疫学

小児期にみられる白血病は,成人の場合とは全く趣を異にし,白血病細胞の生物学的特性から治療成績に到るまで多くの特殊性がみられる.  15歳以下の小児悪性腫瘍は10万人当り年間約10人で,白血病はその約半分の4-5人の頻度である. 小児白血病のほとんどは急性白血病で,慢性白血病は5%に満たない.さらに,急性白血病の約80%が急性リンパ性白血病(ALL)で,急性骨髄性白血病(AML)は約20%にすぎない.好発年齢をみるとALLは2-5歳に大きなピークがあるが,AMLは各年齢層に比較的均等に分布するので,全体として10歳前後にも小さなピークを認める.性差はALLで1.5 : 1で男に多い.

III.成因,病態生理(表1)

Epstein-Barrウイルス(EBV)が原因であるB細胞型白血病/バーキットリンパ腫などを例外として,白血病の成因は不明である.小児では成因として環境要因より,宿主要因,遺伝要因が強いと考えられる.一卵性双生児では一方が白血病の場合,他児が白血病を発症する危険率は高い.乳児期白血病では,分子生物学的に同一の白血病細胞が出生時のマススクリーニングのろ紙血液からも確認されることから,胎生期発癌が示唆される.Knudsonは網膜細胞腫発症に関して,Rb遺伝子の2ヒット説を提唱したが,白血病も突然変異を誘因因子として多段階遺伝子変異が重なって最終的に発病すると考えられる. 分子生物学視点からみると、転座型染色体異常の遺伝子解析から近年多くの発癌に関与する遺伝子が分離されていることから、白血病も多段階発癌説が有力である.

表1.急性白血病発症の危険因子

  1. 遺伝要因
    • Down症候群,
    • Fanconi症候群,
    • Bloom症候群,
    • Kostmann症候群,
    • Diamond Blackfan貧血,
    • Li-Fraumeni症候群,
    • 発作性夜間血色素尿症,
    • 神経繊維腫症、など
  2. 薬剤
    • アルキル化剤,エピポドフィロトキシン、など
  3. 放射線暴露
  4. 骨髄異形成症候群

IV. 臨床症状

小児では急性リンパ性白血病(ALL)が大部分を占めるので,それに関連する症状が主となるが,急性骨髄性白血病(AML)でもほぼ同様である.(表2) 発熱,貧血,出血傾向と臓器腫大の4大症状が他の悪性腫瘍とも共通した症状の基本であるが,小児の場合,機嫌が悪い,顔色が悪い,食欲がないなど,なんとなくいつもの元気がない,といった状態が最初の症状である.しかし両親はこのような非特異的な症状でも,なんらかの重大な異変が子供に起こっていると気付くものであるから,医師は親の訴えに素直に耳をかさねばならない.貧血が亢進すると活動性の低下,易疲労感が顕著となる.微熱や時にスパイク状の発熱がみられる.咽頭炎,中耳炎,扁桃炎が認められることもあるが,発熱の原因が不明のことも診断時には多い.親はしばしば「“カゼ”だろうと思っていたが,いつものようにすぐにすっきり治らない」という.(1)—(4)

皮膚の点状出血や出血斑はよくみられる.鼻出血,粘膜出血も多い.まれには一見元気な子供が,扁桃摘出後に出血が止まらないとか,外科手術前検査で貧血,血小板減少がみつかり,白血病診断のきっかけになることもある.リンパ節腫大は軽度のものはほとんどすべての症例にみられるが,両親が気付いていることは以外と少ない.食欲不振はあるが,小児の場合,体重減少が認められることはほとんどない.

骨痛,関節痛も比較的多い症状である.関節痛はいくつかの関節を巡回するので,しばしば若年性関節リウマチと診断されやすいので注意する.幼児での疼痛は四肢や背全体にび慢性の場合も多く,また強く腹痛を訴えることもある.

稀な症状を表3にまとめた.耳下腺の腫脹や疼痛をムンプスと安心して,白血病の診断が遅れる事例が多いので,特に注意が必要である.涙腺腫脹,歯肉腫脹,眼瞼下垂,顔面神経麻痺,頭痛,皮膚侵潤も稀な症状である.AMLではクロローマと称する,骨膜下の腫瘤が眼窩にみられることがある.また,プリアピスム(持続勃起)が慢性骨髄性白血病の初期症状としてみられることはよく知られている.

急性白血病の場合,臨床症状発現から診断までの期間は通常2〜4週間程度である.期間は貧血や血小板減少の程度,また,末梢血中の白血病細胞数や脾腫の程度と必ずしも比例しない.

V. 身体所見

頭頚部では,鞏膜出血,網膜出血,眼瞼下垂,乳頭浮腫,脳神経麻痺(顔面神経麻痺)は中枢神経系白血病侵潤を強く疑わせる.口腔粘膜出血,歯肉腫脹,扁桃腫大が咽頭周辺のリンパ節腫脹をともなってみられる.顎下,鎖骨上,後頭部,頚部の比較的大きなリンパ節腫脹がみられる.硬く,圧痛は少ない.耳下腺,唾液腺腫脹は前述した.甲状腺腫脹も稀に認める.心・循環器系では,高血圧がときにみられるが,腎への白血病浸潤や高尿酸血症による.胸部所見では,呼吸障害が重篤な貧血や肺炎の症状として出現する.巨大な胸腺腫大(縦隔腫瘍)はT細胞性白血病の特徴である.腹部では肝脾腫が半数以上にみられる.われわれの研究グループの統計ではALLで5cm以上の肝腫は29%,5cm以上の脾腫は21%であった.(5) 左上腹部の圧痛は肥大した脾の脾膜炎によるものであろう.両側腎腫大は白血病浸潤による.睾丸肥大は初診時には少ない.骨,関節の疼痛と腫脹は前述したが,頻度が高い.白血病の皮膚浸潤は乳児白血病にしばしば合併するが,大小不同で円形の赤紫色の結節が全身あちこちにみられる.

以上のような臨床症状や身体所見が認められた時は,白血病を疑い,すみやかに,まず末梢血血算を実施する.成人では初診のほとんどすべての患者にルーチンに血液検査が実施されているようだが,小児ではそのような状況にはないが,白血病を疑った場合は躊躇すべきではない.

VI. 血液検査

ALLではHbが9 g/dl以下が63%で,正球性正色素性貧血である.白血球数は10,000/μl以上が50%, 5,000~10,000/μlが20%, 5,000/μl以下が30%である.血小板数は50,000/μl以下が48%, 50,000~100,000/μlが19%, 100,000/μl以上が33%であった.(5)

VII. 診断と分類の手順

(1)白血病の診断

白血病が疑われた場合はすみやかに骨髄穿刺を実施する.若年性関節リウマチを確定診断するときは,逆に骨髄穿刺により急性白血病を否定しておくことが必要とされている.骨髄穿刺液から塗抹標本を作製し,メイギムザ染色を実施する.小児の急性白血病の診断はむずかしくはない.光顕で正常骨髄にみられる各分化段階の骨髄細胞分画は消失し,大部分の幼弱な白血病細胞と,少数の成熟顆粒球が存在するのみで,これを白血病裂隙(Hiatus leukemicus)という.この所見によりまずは急性白血病の診断が下される.時に骨髄中の白血病細胞数が過剰で穿刺,吸引し難く,十分な細胞数が採取できない場合があり,それをドライタップというが,その場合は骨髄生検を実施して病理学的に組織診断する.固形腫瘍の骨髄転移で白血病類似の骨髄像を呈することもあるので,後述する種々の特殊組織化学染色や細胞表面マーカー検索により,均一に増加している細胞が造血系の幼弱細胞であることを確認する.白血病に限らず,悪性腫瘍の診断には,細胞が単クローン性増殖を示すことを証明することが基本である.白血病か悪性リンパ腫か迷うこともあるが,骨髄での腫瘍細胞の割合が20%を超える時は白血病として扱う.

(2)急性白血病の分類:FAB分類と特殊細胞化学染色による分類

メイギムザ,またはライトギムザ染色標本によってまずFAB分類を試みる.(表4) FAB分類ではリンパ性白血病(ALL)はL1~L3,骨髄性白血病(AML)はM0~M7に分類されるが,これらはあくまで光顕所見によるので,検者の主観による多少の不一致は否めない.最近L1~L3分類は米国では使用されなくなる傾向にある.(6)(7)

ALLかAMLかの区別は通常表5のごとく,ミエロペルオキシダーゼ(MPO),エステラーゼ,ズダン黒およびperiodic acid-Schiff (PAS)染色の特殊組織化学染色による.PASは通常AMLでは陰性であるが,M6の赤芽球とM4Eoの好酸球では陽性となる. M6は稀である.M4とM5は特に2歳以下の乳児白血病にしばしばみられる.M1, M2, M3, M6, M7で50%-60%を占め,単球系白血病のM4とM5が約40%を占める.FAB分類は別章で詳述される.

(3)急性白血病の分類:細胞表面マーカーによる分類

次に各種単クローン抗体を用いて,白血病細胞表面抗原(マーカー)発現を検索し,増殖細胞が単クローン性であることを再確認し,さらに正常細胞の発生分化段階のどのカウンターパートに相当するかを推測する.表6にわれわれの研究グループのALLの解析結果を示す.(8) B前駆細胞系ではCD19, HLA-DR, CD10 (cALLa) その他のB細胞関連抗原が陽性となり,小児ALLの80%-85%がこれに属する.3つの亜型が認められ,early pre-B細胞ALL(細胞表面免疫グロブリン[Ig] や細胞質内Ig発現をみない),pre-B細胞ALL(細胞質内Ig発現をみる),成熟B細胞ALL(細胞表面Ig発現をみる)である.early pre-B型の約2/3は化学療法に良く反応する.pre-B型のなかでt(1;19)(q23;p13)の染色体転座を有するものは予後が悪い.成熟B細胞ALLはわずか1%にすぎず,L3 FABの形態をとる.1歳以内の乳児白血病は最も未熟な免疫学的,分子生物学的特徴をしめす.

T-ALLはCD2, CD7, CD5やCD3抗原を細胞表面に発現する.約15%の小児ALLにみられ,男児,年長児,白血球数増加,縦隔腫瘍が臨床的特徴である.

多くの例でこれらのBまたはT前躯細胞系の特異的マーカーを発現するが,両者を,またリンパ系と骨髄系マーカーが同時に,同一白血病細胞に認められることがあり,混合型白血病と呼ばれる.現治療法では特に予後に差はない.

単クローン抗体を使用した解析はAML細胞の分類にも有用である. CD33, CD13, CD14, CD41(血小板IIIA), CD15, CD11b, CD36, 抗グリコフォリンAなどがAMLに特異的である.B細胞系に特異的なCD10, CD19, CD20, CD22, CD24などはAMLの10%-20%に認められる.しかし細胞表面Igや細胞質内Igはみられない.CD2, CD3, CD5などT細胞系の抗原もAMLの20%-40%に発現している.CD7は半数以上の例にみられる.このようにリンパ球関連抗原が比較的高率にみられるが予後との相関は低い.TdTはAMLとALLの区別に役立つ.

(4)急性白血病の分類:染色体分析/遺伝子解析による分類

以上の解析によって,白血病細胞の単クローン性(腫瘍性)が再確認され,さらに進んで白血病発症のメカニズムの検索へと展開する.最近の分析技術の進歩によりALLの多くの症例に染色体異常が報告されている.過2倍体(染色体数が50を超える,またはDNAインデックスが1.16以上)の例の予後は良好である.2倍体で染色体数に異常はないが構造上の異常がみられる場合は予後はよくない.最近の分子生物学的解析からt(12;21)が約20%のALLに発見された.TEL-AML1融合蛋白が産生される.この例は予後が良い. Ph染色体t(9;22)は小児ALLの約4%にみられ,予後不良である.

AMLでは多くの例で単一クローン性の染色体異常が発見され,それらはそれぞれ特徴的な病型を示すことから診断確定に役立っている.t(8;21)はAMLに関連する染色体異常では最も多い. AML1/ETO融合蛋白を産生し,形態的にはFAB-M2を呈し,AMLの約15%を占める.t(15;17)はFAB-M3に限られる.一方,11q23に位置するMLL遺伝子異常を示す例は多彩なAML-FAB型のみならず(AMLの5-6%),ALLをも発症する(ALLの7-10%).トポイソメラーゼII阻害剤であるエトポシド使用後の二次性AML発症に関与することでも有名である.t(4;11)やt(9;22)は予後不良群であるが,なかでもt(4;11)は乳児白血病の約70%にみられる.inv(16)はFAB-M4Eoに特異的である.近年fluorescent in situ hybridization (FISH)やpolymerase chain reaction (PCR)の技術進歩によって,従来のバンド染色法では明らかにできなかった染色体異常が簡単に解析されるようになった.トリソミー8などはFISHによって細胞核のメタフェイスではなくインターフェイスで同定可能である.染色体・遺伝子異常は別章で詳述される.

VIII. 初診時の特殊症状や所見と緊急治療

初診時すでに生命に危険が迫り(oncologic emergencies:腫瘍学的エマージェンシー),緊急治療を要するのは次の様な場合である.

(1)出血

血小板が20,000/μlを切ると自然出血の危険性が増すので,血小板輸注を積極的に行う.感染症を合併している時はさらに血小板数を高く保つ.M3およびM5ではDICがみられ,化学療法開始とともに増悪するので注意する.予防的に少量のヘパリン(50 U/kg, 6時間毎)投与が効果があることもある.FAB-M3ではただちにATRAを投与する.

(2)発熱と感染

30-40%のAMLでは初診時に発熱がみられる.顆粒球が減少し感染症が疑われる場合,血液培養ほか必要な検査を実施後,抗生剤を開始する.菌が同定されるまで合成ペニシリン,アミノグリコシドまたは第3世代のセファロスポリンが一般的に使用される.

(3)腫瘍溶解症候群

化学療法による白血病細胞の急激な溶解によって正常代謝が乱れる.高尿酸血症による急性腎不全,高カリウム血症,高リン血症に伴う低カルシウム血症が問題となる.大量輸液による利尿,重炭酸ナトリウム投与による尿のアルカリ化とalloprinol投与による尿酸生成抑制が腫瘍溶解症候群の予防に必要である.尿量,血清電解質,尿酸,クレアチニンの頻回のチェックが不可欠である.

(4)白血球塞栓

AMLで白血球数が200,000/μlにもなると血管内塞栓を起し,低酸素症,出血,梗塞みられる.脳と肺が標的臓器となり重篤な症状が出現し,早期死亡の原因となる.血液透析,交換輸血を速やかに実施し,化学療法を開始する.白血球塞栓と出血は比較的AMLに多く,腫瘍溶解症候群は比較的ALLに多くみられる.

(5)縦隔腫瘍/上大静脈症候群

T-ALLにしばしば合併する.縦隔腫瘍による気道閉塞を伴うことがあることを常に前もって予測し,すみやかにその対策を講じなければならない.大きな縦隔腫瘍がある時,全身麻酔や強い鎮静剤を使用した場合に心,呼吸停止に陥ることがある.挿管,抜管時特に注意が必要である.CTスキャンで常に腫瘍の大きさを監視することが大切である.

以上のごとくエマージェンシーがあるので,診断がついたからといってただちに抗癌剤を投与するのではなく,まず腫瘍学的緊急治療を優先する.

IX. 特殊な白血病

以下,比較的稀であるが,特徴ある白血病について述べる.

(1)乳児白血病

厚生省がん研究の月本班の小児難治性白血病に関する研究報告書によると,1歳以内の乳児白血病は7.6%であった.他の年齢層と異なり,特異な臨床像を示す.すなわち,ALL,AMLいずれも発症し,診断時の白血球数の著明な増多,肝脾腫,中枢神経系白血病の合併,皮膚浸潤,血小板減少,初期化学療法に対する反応性低下などの特徴を示し,予後不良である.11q23染色体異常によるMLL遺伝子再構成はALLで71%, 女児と年齢が低いほど高頻度であった.AMLでは45%で,FAB-M4/M5に多かった.一般小児AMLを対象とした強力な多剤併用療法が乳児白血病にも有効である.(9)

(2)急性前骨髄球性白血病(APL)(10)

APLはAMLのなかでも他と明らかに区別される特徴を持つ.特異的な染色体異常はt(15;17)で,レチノイン酸受容体を支配する部位に切断点を有し,PML-RARalphaなる融合蛋白を産生する.臨床的には重篤な凝固異常を来たし,治療初期に致死的出血に注意する.中枢神経系浸潤(CNS白血病)は非常に稀で,髄液検査の必要はない.APL白血病細胞は基本的にオールトランスレチノイン酸(ATRA)に感受性が高く,正常顆粒球にみごとに分化誘導される.t(11;17)転座を示すAPL変型はPLZR-RARalpha融合蛋白を産生し,t(15;17)ほどATRAは有効ではない.(11)(12)

(3)若年性骨髄球性単球性白血病(JMML,旧若年性慢性白血病)(13)—(15)

以前,若年性慢性白血病といわれていたが,最近は若年性骨髄球性単球性白血病(JMML)と称されることが多い.小児白血病の1%程度で稀.1歳前後が多く,男児に多い.(男/女=2.5:1)肝脾腫,リンパ節腫脹,貧血,発熱,発疹が主な症状と所見である.さらに確定診断の基準を表7に示す.

(4)ダウン症に伴う白血病(16)(17)

ダウン症にはAML-M7を発症する率が高い.ダウン症に伴う白血病はリスクが低く,比較的弱い化学療法で治癒する可能性があるので,骨髄移植の適応はない.また,ダウン症では新生児期に一時的骨髄増殖症がみられる.骨髄芽球が一過性に増殖するが,巨核芽球様の特性を示す.

(5)骨髄異形成症候群(MDS)(14)(18)

MDSのFAB分類は小児には必ずしも適切ではないが,3系統のうちいずれかの造血系細胞の異形成と異常な無効骨髄造血像がみられる.診断基準を表8に示す. WHOによる造血器腫瘍の新しい分類では,骨髄での腫瘍細胞の割合が20%(従来は30%)を超える場合は明白に骨髄性白血病と診断するとしている.

X. 鑑別診断

鑑別診断すべき疾患を表9、表10、表11に示す.白血病では末梢血白血球数が増加するのが通常であるが,正常範囲内であることもあり,貧血,血小板減少がみられることから,汎血球減少を伴う疾患を鑑別する必要がある.また,白血病では前述のごとく,骨痛,関節痛が主訴となることも多く,若年性リウマチ関節を確実に鑑別診断しなければならない.その他,ゴーシェ病など,先天性代謝異常症のなかには,造血系の異常を伴うものも多いので注意を要する.発熱とリンパ節腫脹を伴う種々のウイルス感染症(伝染性単核症,百日咳など)も鑑別すべきことはいうまでもない.

また,診断時には稀であるが,病末期の悪性固形腫瘍転移で髄膜白血病類似の髄液所見を示すものを表12に列記した.

XI.治療

(1)理念

小児白血病の治療ではチームによる集学的治療が大切である.小児の悪性腫瘍,血液学を専門とする小児内科医を中心に小児外科医,放射線医,リハビリテーション,ソーシャルワーカーなどが揃っているのが理想的である.近年の急性白血病治療成績の向上は多施設共同の比較対照試験(ランダマイズコントロールスタデイ)に負うところが大きい.すなわち,初発の患児は,その時点での標準的な治療法と,新しい治療法とのあいだで無作為に振り分けられる.この厳密な比較対照試験によって,いろいろなバイアスが除かれ,数年後に両治療法の生存率を統計学的に単純に比較するだけで,より客観的な、エビデンスレベルの高い,新しい有効な治療法がより速やかに開発される.新規発症患児は,より新しい,有効な治療が受けられるように,よく組織された研究グループの,良いデザインの比較対照試験に登録されるべきである.ランダマイズコントロールスタデイは1962年にSt Jude小児病院腫瘍グループが先鞭を切り,日本で全国的に開始されたのは1981年である.地域別にいくつかのグループ研究が行われていたが、最近、全国的にGPLSG(Japan Pediatric Leukemia Study Group)に統一されつつある。

(2)治療の原則

発症時、骨髄が白血病細胞でほぼ100%占拠されている時点では、白血病細胞はからだ全体で1012個存在するといわれている。この細胞のtotal cell killが治療の理念であるが、実際に抗がん剤による化学療法は、寛解導入療法、地固め/強化療法、中枢神経系(CNS)白血病予防療法、維持療法に区分される。

長年の臨床研究から、後述するように、予後因子が高いエビデンスでもって明らかにされているので、実際の治療計画(プロトコールという)では、初発時の年齢と白血球数とで、予後良好群(スタンダードリスク)と予後不良群(ハイリスク)に層別され、それぞれ別個の寛解導入療法が開始されることとなる。一般的には、1~9歳で白血球数が50,000/μl以下が予後良好群で、それ以外は予後不良群となる。

XII.小児ALLの薬物療法

(1)寛解導入療法

寛解導入療法はビンクリスチン(VCR),プレドニゾン(PDN),アスパラギナーゼ(L-Asp)の3者、または4者(+アントラサイクリン)の多剤併用療法が標準である。これにより、骨髄の白血病細胞(芽球)が5%以下となると、完全寛解導入成功という。寛解導入率は95%以上である.このレベルですでに光学顕微鏡による肉眼では、白血病細胞は正常細胞と区別できなくなる。

(2)地固め/強化療法

完全寛解といっても、全身では109~10個の白血病細胞が残存している。言い換えると、正常骨髄細胞102-3個に1個の白血病細胞が混在している計算になる。これをさらに減少させるために、強化療法が実施される。寛解導入で使用しなかった、アントラサイクリン,アルキル化剤,エトポシドなどが高リスク群で使用され,生存率向上に寄与している.

(3)中枢神経系(CNS)白血病予防療法

中枢神経系(CNS)白血病予防療法は小児白血病特有のものである.予後良好群には髄注のみ,高リスク群には髄注と頭蓋放射腺照射が実施される.中枢神経系(CNS)白血病予防のための頭蓋放射線照射はSt Jude小児病院腫瘍グループチーフのPinkelが発案した.学会の反対意見もあり,最初は5Gyからランダマイズスタデイが開始され12Gyでも効果なく一時中断されたが,24Gyで有効と認められた. すなわち、寛解導入後約50%の症例にCNS白血病再発(髄膜白血病ともいう)がみられ治療上大問題であったが,Pinkelが予防的頭蓋放射線照射を発案し,その後の再発率は10%以下に減少し,小児白血病全体の治癒率を飛躍的に向上させることとなった.ただし,低年齢小児では10年後に,計算力低下,集中力低下や内分泌異常などが発症することが判明したため,現在は予防的頭蓋放射線照射は高リスク群のみに実施している.

(4)維持療法

維持療法は6メルカプトプリン(6MP)連日とメソトレキセート(MTX)週1回経口投与がグローバルスタンダードとなっているが,著者の属する小児癌白血病研究グループ(CCLSG)では両者の大量間歇投与がより有効としている.月1回のVCR+PDNパルス療法も標準治療法である.髄注は維持療法中も継続される.ALLの維持療法期間は2-3年である.この時点で、少なくとも正常細胞10個に1個、できれば105-6個に異常な白血病細胞1個が残存する程度まで減少すると、再発率が有意に低下する。

5.再発例に対する薬物療法の成績は,治療中または治療終了6ヵ月以内の早期再発例とそれ以後の後期再発例で異なる.前者の長期生存率は20%にすぎないが,後者は40-65%と良い.早期再発例には骨髄移植を含めた強力な治療法が試みられる.後期再発例は再度の薬物療法で再寛解導入可能で,その後に幹細胞移植が計画される.

XIII.小児ALLの病期と予後因子(生存率を左右する因子)

予後良好因子として、次のようなものがある。

  •  1.年令が1-9歳
  •  2.白血球数が50,000/μl以下
  •  3.DNAインデックスが1.16以上,または染色体数50以上
  •  4.染色体異常で,t(12;21)(tel/AML-1融合)
  •  5.細胞表面マーカーでearly pre-B細胞型
  •  6.初診時の中枢神経系(CNS)浸潤がない
  •  7.寛解導入療法による急速な白血病細胞の減少(7日目の骨髄中白血病細胞が25%以下)
  •  8.微少残存白血病細胞のレベルが10-6以下

予後良好群の4年無病生存率は80%をこえ,10年以上の長期予後をみても少なくとも60%-70%の治癒率と思われる.

XIV.小児AMLの薬物療法

AMLの化学療法は寛解導入療法とその後の強化療法からなり,維持療法にはALLのような大きな意義は認められていない.すなわち,AMLでは初期の治療の成果が長期予後の鍵を握る.本邦でもいくつかのグループ研究からプロトコールが報告されている.

小児AMLはその75%-85%が寛解に導入され,5年無病生存率は約40%が期待される. シトシンアラビノシド(Ara-C)とドキソルビシン(DOX)がもっとも大切な寛解導入薬剤である.この2剤を軸にして,エトポシドやチオグアニンを組み合わせ,できるだけ深い寛解を得ることが治療戦略上重要である. 通常非常に強い骨髄抑制(M3は例外)がみられ,感染対策,出血予防などの補助療法が大切である.放射線照射をし,フィルターを通し,サイトメガロウイルス(CMV)陰性の赤血球や血小板の輸注が要求される.15%-25%は薬剤抵抗性で寛解導入不可となる.その半数は寛解導入療法中の感染,出血など重篤な合併症で亡くなる. 顆粒球刺激因子(G-CSF)も感染予防対策として積極的に使用されつつある.G-CSFは顆粒球減少期間を短縮するが,長期生存率を高めてはいない.初診時のCNS白血病はALLより頻度が特にM4,M5で高いが,非常に強力な寛解導入療法がCNSにも有効に働いていると思われる.

寛解導入後は,HLA一致の同胞ドナーがおれば同種骨髄移植が標準治療法となっている.適当なドナーがいない場合は強化化学療法が行われる.Ara-Cの大量投与,エトポシド,サイクロフォスファミド(CPM),MTX, 6MPなどが含まれる.

XV.骨髄移植

1970年終わり頃からAMLの第1寛解期に同種骨髄移植が行われるようになった.約60%の長期生存率が見込まれる.HLA一致同胞が見つかった場合は骨髄移植が第一選択となる場合が多いが,化学療法とその支持療法の進歩により長期生存が可能となってきたので,第1寛解期に移植を実施すべきか否かの明確な基準はない.t(4;11)染色体異常,MLL遺伝子異常を伴う乳児白血病,白血球数200,000/μl以上の症例は骨髄移植の絶対的適応となっている(表13).

XVI.看護への指針

治癒率が向上したとはいえ依然として高い致死率を示す予後不良の疾患であるので,患児のみならず両親,家族への気配り,励ましに留意する.医師その他のスタッフとともにプロトコールをしっかり説明し,病名を告知した方が治療がスムースにいくことが多い.抗癌剤の種類と投与量,副作用出現を常にチェックすること.プロトコール遂行中はケースワーカーの協力も必要である。

文献

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  • 19) URL:アメリカNIH,癌研究所 http://cancernet.nci.nih.gov

図表

表2. 臨床症状

表3. まれな症状と身体所見

表4.FAB分類

表5.小児急性リンパ性および骨髄性白血病の特殊組織化学染色による分類

表6.免疫学的細胞表面マーカー

表7.若年性骨髄球性単球性白血病 (JMML) の診断基準

表8.骨髄異形成症候群(MDS)のFAB分類と末梢血および骨髄所見

表9.鑑別診断:汎血球減少を伴う疾患

表10.鑑別診断:骨痛,関節痛を伴う疾患

表11.鑑別診断:その他,代謝性疾患など

表12.髄膜白血病類似の髄液所見がみられる疾患

表13.骨髄移植へのタイミング