1.乳がんとは
1)乳房の構造
乳房はおもに乳腺組織と脂肪組織から形作られています。乳腺は乳頭を中心に放射状に6~9個並んでいます。乳腺組織は母乳を分泌する小葉と母乳を乳頭に運ぶ乳管が存在します。乳房は思春期と共に発達、成長し、月経周期が始まると周期的なホルモン分泌によって乳腺組織が発達し授乳のための準備を行います。妊娠・授乳期に乳腺組織は最も発達し、授乳が終わると元に戻ります。授乳を行わなくなった乳腺は徐々に萎縮していきます。
また男性にも乳腺組織は存在します。つまり男性も女性よりは頻度は少ないですが乳がんになる可能性があります。
2)乳がんの発生
乳がんはこの乳腺組織に発生する腫瘍です。母乳が作られる小葉やその通路となる乳管の内側から発生します。乳がんの約90%は、乳管から発生し、乳管がんと呼ばれます。小葉から発生する乳がんが約5~10%あり、小葉がんと呼ばれます。
がんがこの乳管の内側に留まっているものを非浸潤がんといい、この段階のがんはリンパ節や遠くの臓器に転移することはありません。
一方、乳管の内側から周りの組織にまで及んでいるのが浸潤がんで、リンパ節や遠隔臓器にも転移する能力があります。統計的に多いのは浸潤がんです。
3)乳がんの統計
わが国において、女性のがんの発生部位別の罹患(りかん)率(がんにかかる割合)は1996年から乳がんが第1位になっています。年間に約4万人の方が乳がんにかかり、約1万人の方が亡くなっています。日本人女性の20人に1人が一生のうちに乳がんにかかるといわれております。(ちなみに日本人は3人に1人が一生のうちにがんにかかるといわれています。)乳がんになる年齢は他の部位のがんの患者さんより比較的若い方が多く、好発年齢は40~50歳です。
4)乳がんの組織分類
乳がんは組織学的に、まず大きく上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍の2つに大別されます。乳がんの多くは上皮性腫瘍でありさらにがんが乳管の内側に留まっているか、外側まで広がっているかで浸潤がんと非浸潤がんに区別されます。浸潤がんが最も多くその中でも乳頭腺管がん、充実腺管がん、硬がんの3つの組織型が大半を占めます。その他は特殊型として分類されますが、多くはこれらの組織型が混合していることが多く、腫瘍中の多くを占める組織型をもって診断されます。上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍では治療法の違いがありますが、乳がんの多くを占める上皮性腫瘍であれば組織型によって治療方針は変わることはほとんどありません。しかし組織型によって腫瘍の性質や、画像検査の見え方に違いがあるといわれており、診断や治療の参考にすることがあります。
5)乳がんの原因と予防
乳がんの原因としては、女性ホルモン(エストロゲン)との関与が指摘されています。初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がないことなどがリスク要因とされています。欧米では肥満(特に内蔵脂肪型肥満)は乳がんの発症リスクが高くなるといわれていますが日本人でははっきりとしたデータはありません。運動による乳がんの予防効果はあるといわれています。アルコールは摂取量が増えれば乳がんのリスクになるといわれています。食事に関してはさまざまな研究がありますが十分な根拠がそろっているものはありません。しかし食生活などの生活環境は乳がんの発症に影響があるといわれており、アメリカの日本人移民は日本国内在住者より乳がんにかかる確率が高いといわれています。
更年期障害の方に行うホルモン補充療法は、薬の内容によっては長期間の投与によって乳がん発症のリスクが高まるという報告があります。ただしホルモン補充療法は更年期障害の体調不良や骨粗しょう症の改善といった効果もあります。ホルモン補充療法を行う場合はその開始や治療期間については担当医師と相談してください。ホルモン補充療法を行う前や治療中は乳がん検診を必ず受けるようにしてください。
乳がんには遺伝に関係して起こるものとそうでないものがあります。欧米では5-10%くらいといわれており、日本人ではそれと同じかやや少ないと考えられています。
2.症状
乳がんの症状としては、乳房のしこりが最も多く、他には乳頭からの分泌物、皮膚のひきつれなどの変化、乳房の近くのリンパ節のはれなどがあります。しかし、症状があってもすべてが乳がんというわけではないので症状があれば医療機関を受診してください。
3.診断
乳房のしこりの症状がある場合、最初に問診、視触診、マンモグラフィ、超音波検査をします。次に必要な場合に細胞診、組織診(針生検、マンモトーム生検)、MRI、CTなどが行われます。
1)視触診
乳房を観察して、手で乳房やリンパ節の状態を検査するものです。乳房の変形や左右差、乳頭に湿疹や分泌物がないかを観察します。続いて、乳房のしこりがないか調べ、あればその場所や大きさ、硬さ、しこりの境目がはっきりしているか、よく動くかなどを調べます。最後にわきの下や首のリンパ節が腫れていないかを触ります。
2)マンモグラフィ
乳房のX線検査のことで、乳房を撮影用の板の間にはさんで乳房を薄く引きのばして撮影します。そのため、多少の痛みを伴うこともあります。乳がん検診にも広く用いられており、早期がんの発見に役立っています。放射線被曝量は自然界の放射線レベルと同じくらいの低さなので心配ありませんが、妊娠初期の方は念のため撮影を受けないでください。マンモグラフィでは腫瘤や石灰化などが確認できます。これらが見えればすべて悪性というわけではなく、良性のものもたくさんありますので、どれくらいがんを疑うかの指標としてカテゴリー分類というものがあります。1から5までの5段階で分類します。カテゴリー3以上の方は精密検査をうける対象となります。乳がんの病期分類と混同しないでください。
3)超音波検査
超音波を乳房にあてて反射波を利用して画像を作ります。診断用の超音波では人体に害はありません。乳房内のしこりの診断に有効で、特に40歳未満のマンモグラフィではわかりにくい高濃度乳腺(乳腺の密度が濃い状態)の中にあるしこりの診断に有効であるといわれています。しかし、マンモグラフィと超音波のどちらかでしか発見できない乳がんもあるため、精密検査では両方の検査をおこなうことが通常となっています。
4)細胞診・組織診(針生検、マンモトーム生検)
最終的な診断には顕微鏡による病理検査が必要です。病理診断には細胞や組織の一部の採取が必要で、細い針を刺して細胞を採取する細胞診や、やや太い針を刺して行う組織診(針生検、マンモトーム生検)があります。局所麻酔を注射して行います。超音波やマンモグラフィで病変をとらえることができれば、その画像をみながらかなり正確に細胞や組織採取を行うことが可能です。
病理検査で良悪性の確定診断がつけば確実ですが、病理検査にで良性と悪性の境界のようにみえるものや、小さな病変や画像でわかりづらいしこりでは組織の採取が困難で診断がつけられないこともあります。どの検査も100%の診断ができるとは限らず、これらの検査を組み合わせて判断したり、場合によってはしこりの部分を手術で切除して最終的に診断することもあります。
4.病期(ステージ)
乳がんと診断されると、がんが乳房の中または、他の臓器に広がっていないかどうか、さらに詳しい検査が必要になります。
通常行われる検査としては乳房のMRI検査(磁石の原理を応用した磁気共鳴装置と呼ばれる機械を使った検査)、胸部と腹部のCTに加え、最近ではアイソトープ(放射性同位元素)を用いたPET(ペット)検査をを行います。また、一般の血液検査に加え、腫瘍マーカーと呼ばれるがん細胞によって産生される物質の検査も行います。
がん病巣の拡がり具合で病気の進行を0、I、II、III、IV期に分類します。
0期
がんは局所に見つかっていますが、乳管の内側にとどまっている状態で、ほとんど転移することはない早期の段階です。ただし、0期であっても乳管の内側を伝って乳房内にがんが広く存在していることがあります。
I期
がんが乳腺の中にとどまっており、大きさは2cm以下で、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階です。
IIA期
がんの大きさが2-5cmで、わきの下のリンパ節や他の臓器に転移を認めないか、またはがんの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移はあるけれども、他の臓器に転移を認めない段階です。
IIB期
がんの大きさは5cm以上であるが皮膚や胸壁まで浸潤していない状態で、わきの下のリンパ節や他の臓器に転移を認めないか、または大きさが2-5cmで、わきの下のリンパ節の転移はあるけれども、他の臓器に転移を認めない段階です。
IIIA期
がんの大きさは5cm以上であるが皮膚や胸壁まで浸潤していない状態で、わきの下のリンパ節の転移はあるけれども、他の臓器に転移を認めない段階か、またはがんの大きさに関係なく、わきの下のリンパ節の転移があり、しかもリンパ節がお互いにがっちりと癒着していたり、周辺の組織に固定している状態、または胸骨の横のリンパ節の転移があるけれども、他の臓器に転移を認めない段階です。
IIIB期
がんの大きさにやわきの下のリンパ節の転移の有無にかかわらずがんが胸壁にがっちりと固定しているか、皮膚にがんが顔を出したり、皮膚の潰瘍やむくみがでているけれども、他の臓器に転移を認めない段階です。
IIIC期
がんの大きさや皮膚や胸壁の浸潤を問わず、わきの下のリンパ節の転移と、胸骨の横のリンパ節の転移があるか、鎖骨の上下のリンパ節に転移があるけれども、他の臓器に転移を認めない段階です。
IV期
原発巣の他に、乳房の他の場所、肺、肝臓、骨などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合です。
これらの病期は手術の前にはさまざまな検査にてがんのひろがりを予想して診断します。手術後の病理結果にて病期が変わることもあります。
5.治療法
乳がんの治療法としては、主に5種類のものがあります。外科療法、放射線療法、抗がん剤治療(化学療法)、ホルモン(内分泌)療法、分子標的治療です。 これらを組み合わせて治療を行います。1)外科療法
乳がんの手術は乳房の手術とわきの下のリンパ節の手術の2つに分かれます。乳房の手術はがん組織とその周囲の正常組織を同時に切除することで切除する範囲は乳房内のがんの拡がりによって決定します。以前は乳房を大きく切除すれば再発を防ぎ、生存率を高めるとされていましたが、その後切除を大きくしても生存率に影響がなく、手術以外の治療法が進んできたこともあり、手術で取り除く範囲は小さくなってきています。
乳房手術には主に①しこりを含めた乳房の一部分を切除する「乳房温存手術」、②がんのできた乳房を全部切除する「乳房切除術」の2つがあります。
わきの下のリンパ節の手術は通常わきの下のリンパ節を含む脂肪組織を節する①「腋窩リンパ節郭清」が基本でした。腋窩リンパ節郭清はリンパ節の再発を予防するだけでなく、再発の可能性や薬物療法の必要性を検討する意味で重要です。しかし、腋窩リンパ節郭清を行うと、手術をした側の腕に運動障害や痛み・しびれ、むくみ(リンパ浮腫)がおこることがあります。最近ではわきのリンパ節の中から乳がんから最初に転移するリンパ節をみつける②「センチネルリンパ生検」が積極的に行われています。センチネルリンパ節に転移がないときは多くの場合、わきの下のリンパ節転移がないことがわかっているため、そのような患者さんには腋窩リンパ節郭清を行わなくてもよいとされています。この「センチネルリンパ節生検」はまだ保険適応ではなく先進医療として厚生労働省に認められた施設でのみ行われています。
さらには、がん細胞を取り除くだけでなく、乳房切除後に、形成手術によって乳房をつくる(乳房再建術)ことも増えてきています。
2)放射線療法
X線や他の高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺すものです。放射線治療は手術と同様に照射を行った部分にだけ効果を発揮します。乳がんでは手術後に温存した乳房やその周囲のリンパ節や皮膚の再発を予防する目的で行われたり、転移した骨やリンパ節の病巣による症状を緩和するために行われることがあります。脳転移にも放射線治療が有効です。放射線を照射するときは放射線の専門医がどこにどれくらいの量をかけたらよいかを決めて何回かに分割して照射します。通常は1日1回で、放射線をかけている時間は数分ですから外来通院にて治療が可能です。放射線照射の副作用は皮膚炎、倦怠感、放射線性肺炎などがありますが、適切な治療により治ります。
3)内分泌療法(ホルモン療法)
乳がんには、がん細胞の増殖にエストロゲン(=女性ホルモン)を必要とするものと、必要としないものがあります。ホルモン療法の効果が期待できるのは、エストロゲンで増殖するタイプの乳がんで、乳がん患者さん全体の60-70%です。乳がんの組織を調べてエストロゲン受容体かエストロゲンの働きによって作られるプロゲステロン受容体のどちらか一方があればホルモン療法が有効です。どちらもなければホルモン療法は効きません。エストロゲンは閉経前と閉経後では作られる場所が違うため使用される薬も変わってきます。ホルモン剤を使用することで手術後の転移や再発が半分ほどに減り、また進行再発乳がんでは、がんの進行を抑える効果が証明されています。ホルモン療法の副作用は、化学療法に比べて一般的に極めて軽いのが特徴ですが、タモキシフェンの長期間使用者では子宮がんや血栓症のリスクが、選択的アロマターゼ阻害剤の場合には骨粗鬆症のリスクが高まります。
4)抗がん剤による化学療法
抗がん剤はがん細胞が増殖する過程に直接影響を及ぼし、がん細胞を縮小又は死滅させます。一方、抗がん剤は正常細胞にも影響を与え、吐き気、脱毛、白血球減少などの副作用を起こしますが、副作用が許容される範囲にとどまり、抗がん剤が効果を示す場合には有効な治療手段となります。乳がんでは①術前抗がん剤治療②術後抗がん剤治療③転移・再発後抗がん剤治療の3つの場合に用いられます。 代表的な抗がん剤には①アンスラサイクリン系薬剤(アドリアマイシン、エピルビシン) 、②タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)、③ビノレルビン、④カペシタビン、⑤TS-1、⑥メソトレキサートなどがあります。
抗がん剤による副作用は、用いる抗がん剤の種類によって異なり、発現頻度・程度にも個人差があります。副作用は自分でわかる自覚的なものと、検査などによってわかる他覚的なものに大別されます。自覚的な副作用には、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、全身倦怠感、末梢神経障害(手足のしびれ)、脱毛などがあります。他覚的な副作用には、白血球減少、貧血、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、肺障害などがあります。その他、予期せぬ重篤な副作用があらわれ、まれに命にかかわることもあります。
主に抗がん剤の投与日から数日間にわたってあらわれる吐き気・嘔吐に対しては、吐き気止めの薬を点滴静脈注射します。以前には、抗がん剤治療は副作用をおそれて入院しながら行うことが多かったのですが、最近では抗がん剤の進歩とともに、副作用を抑える治療(支持療法といいます)も急速に進歩しており、外来通院をしながら抗がん剤治療を行うことが可能になってきました。外来にも抗がん剤を受けるための特別な部屋(外来化学療法室)を設置してより快適に治療を受けられる環境が整ってきており、外来通院で、日常生活や仕事の合間に抗がん剤治療を受けられる方が増えてきました。
5)分子標的治療
がんの増殖や進展に関わる分子を標的に設計された薬剤を分子標的薬といい、分子標的薬を用いた治療を分子標的治療といいます。治療の標的となる分子を持った細胞のみに攻撃をするので抗がん剤のように正常組織への影響が少なく、副作用が少ないものが多いのが特徴です。乳がんに対しわが国の乳がんに対して保険で認められた分子標的薬としては、HER2(ハーツー)タンパクを標的としたトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)があります。対象は発売当初は転移・再発乳がんのみでしたが、2008年春より術後の再発予防にも保険適応が拡がりました。約25%の乳がん患者さんではがん細胞にこのHER2遺伝子が過剰に存在し、そのためHER2タンパクをたくさん作っているため、ハーセプチンの効果が期待できます。ハーセプチンは単独または抗がん剤と一緒に使います。主な副作用は悪寒と発熱で、いずれも30-40%にみられますが、ほとんどの場合、初回の投与の時のみで、2回目以降は見られません。まれに重篤なものとして、心臓機能の低下や呼吸器の障害がでることがあります。
6.治療方針の決定
外科療法は主に病期により、ホルモン療法、抗がん剤、分子標的治療などの薬物療法は主にがんの再発危険因子と治療の標的(ホルモン療法や分子標的治療の感受性)により治療方針が決定されます。
再発危険因子
乳房の腫瘤の顕微鏡のよる病理結果から危険因子を調べます。以下のようなものが危険因子として挙げられています。
- 1) 腫瘍の大きさ2cm以上
- 2) がん細胞の悪性度(核異型度)2以上(1~3の3段階の分類あり)
- 3) 腫瘍の周りの血管やリンパ管への高度な浸潤あり
- 4) わきの下のリンパ節転移あり
- 5) 年齢<35歳
- 外科療法
- 術後放射線療法 (乳房)
- 外科療法
- 術後放射線療法 (乳房)
- 術後抗がん剤による化学療法(術後化学療法)、ホルモン療法、分子標的治療
- 外科療法→術後抗がん剤による化学療法(術後化学療法)、ホルモン療法、分子標的治療
- 術後放射線療法(乳房)
- 抗がん剤による化学療法(術前化学療法)(+分子標的治療)→外科療法→術後ホルモン療法、分子標的治療
- 外科療法→術後抗がん剤による化学療法(術後化学療法)、ホルモン療法、分子標的治療
- 術後放射線療法(乳房、リンパ節、皮膚)
- 抗がん剤による化学療法(術前化学療法)(+分子標的治療)→外科療法→術後ホルモン療法、分子標的治療
- 放射線療法(乳房、リンパ節、皮膚)
- 抗がん剤による化学療法(術前化学療法)(+分子標的治療)
- 手術
- 抗がん剤による化学療法
- ホルモン療法
- 分子標的治療
- 脳転移や骨転移に対する放射線療法
- 痛みや他の苦痛に対する症状緩和(やわらげること)を目的とした緩和療法
これらに基づいて低危険群、中間危険群、高危険群の3つに分類します。
治療の標的の選択
ホルモン療法に感受性がある(ホルモン受容体の有無)か、分子標的治療薬であるハーセプチンの治療の感受性があるか(ハーツー蛋白の有無)によって大きく分けて4通りに分類されます。
先に示した3つの危険因子と合わせて12通りの治療方針があります。病期4以外の患者様は主にこの治療方針に合わせて手術後の薬の治療を計画します。
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ホルモン感受性あり |
ホルモン感受性無し |
ホルモン感受性あり |
ホルモン感受性無し |
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ハーツー蛋白なし |
ハーツー蛋白あり |
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低危険群 |
ホルモン療法またはなし |
治療なし |
治療なし |
治療なし |
中間危険群 |
ホルモン療法(+抗がん剤) |
抗がん剤 |
ホルモン療法+抗がん剤+ハーセプチン |
抗がん剤+ハーセプチン |
高危険群 |
ホルモン療法+抗がん剤 |
抗がん剤 |
ホルモン療法+抗がん剤+ハーセプチン |
抗がん剤+ハーセプチン |
0期
主に外科療法が選択されます。温存手術を行った場合は術後に放射線照射を行います。
I期
主に外科療法が選択されます。温存手術を行った場合は術後に放射線照射を行います。手術後の病理結果にて再発のリスクと治療の標的(ホルモン療法や分子標的治療の感受性)を評価して術後の薬物療法の適応を決定します。
II期
外科療法が先行される場合と抗がん剤による化学療法が先行される場合があります。HER2タンパクが陽性であれば分子標的治療が抗がん剤と併用されることもあります。温存手術を行った場合は術後に放射線照射を行います。
IIIA期
外科療法が先行される場合と抗がん剤による化学療法が先行される場合があります。HER2タンパクが陽性であれば分子標的治療が抗がん剤と併用されることもあります。温存手術を行った場合やリンパ節転移が多い場合は術後に放射線照射を行います。
IIIB,C期
原則として手術による病巣の切除が難しい局所進行乳がんです。抗がん剤による化学療法や放射線療法が先行されます。HER2タンパクが陽性であれば分子標的治療が抗がん剤と併用されることもあります。これらの治療によって手術が可能になれば手術を行う場合もあります。
IV期
手術ができない乳がんです。次の治療のいずれかが選択されます。
通常、IV期では全身にがんが拡がっているため手術によって乳房をとる意味はありません。薬による治療が第一に選択されます。病期を完全に治すことは難しいため、がんの進行を抑え、転移による症状を抑えることが治療の目的となります。どの薬を使用するかはホルモン療法や分子標的薬の感受性の結果を参考に決定します。また骨転移や脳転移などの遠隔転移による症状が認められる場合には、それぞれの転移病巣部に対して放射線療法が行われることがあります。
IV期ではがんの転移による症状を認めることが多く、痛みや呼吸困難などの症状を緩和するための治療も重要になります。近年の症状緩和の治療技術はかなり進歩してきており、多くの症状を軽減することが可能となっています。痛みに対してはモルヒネ(麻薬)を中心とした治療を行うことで、8割以上は十分に痛みをとることができます。
再発
乳がんの手術をした場所やその近くにだけ再発した場合(局所再発)には、その部分だけを手術で切除したり、放射線治療を行ったりすることもあります。
骨や肺、肝臓などの遠隔部位に転移再発した場合には、病期Ⅳと同様に病気を完全に治すことは困難です。がんの進行を抑え、転移による症状を抑えることを目的とした薬物療法が行われます。
骨転移や脳転移に伴う症状緩和には、骨や脳への放射線療法が行われます。その他、ホルモン剤、モルヒネなどの痛み止めを用いる症状緩和のための治療が選択されます。
ここにお示しした治療方針は世界にさまざまにあるガイドラインを参考に、その時点で得られている科学的な根拠に基づいた最善の治療(標準治療)の一つではありますが「標準治療」の中でも、他にも様々な治療方針があります。この治療が完全な治療ではなく、がんの治療は治療技術の進歩と共に変わり、新しい治療の有効性を科学的に検証する「臨床試験」によって「標準治療」も変わっていきます。「臨床試験」も将来の標準治療になりうる治療であり、治療の選択肢の一つであるといえます。
