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骨肉腫

1.概念

腫瘍性の骨形成もしくは類骨基質形成を示す悪性腫瘍である。原発性骨肉腫は主たる占拠部位により大きく骨内発生例である骨内性骨肉腫(central osteosarcoma)と、骨表面発生例である表在性骨肉腫(surface osteosarcoma)とに分けられる。骨内性骨肉腫には骨肉腫の典型としてその大多数を占める通常型骨肉腫(conventional osteosarcoma)のほか、血管拡張型骨肉腫や骨内高分化型骨肉腫、円形細胞型骨肉腫、骨皮質内骨肉腫などがある。表在性骨肉腫はその組織学的特徴に従って、傍骨性骨肉腫、骨膜性骨肉腫、高悪性度表在性骨肉腫の3型に分けられる。二次性骨肉腫では骨Paget病に合併するものが多いが日本では稀である。また、線維性骨異形成や放射線治療後から発生するものがある。

以下、通常型骨肉腫について述べる。

2.頻度、年齢、性別

骨原発の悪性腫瘍のなかで最も多く,100万人に1~2人の割合で発症し,年間約200人が我が国で発生している.第二次骨成長期に好発し、約45%が10歳代で特にその後半にピークがある。5歳以下および40歳以上には稀であるが、扁平骨発生の骨肉腫や骨Paget病、線維性骨異形成に続発した二次性の骨肉種は中高年にピークがある。男性にやや多い。

4.好発部位

長管骨の骨幹端部に好発する。特に大腿骨遠位、脛骨近位、上腕骨近位の順で全体の約60~70%を占め、約半数が膝関節領域に集中する。脊椎、手指骨、足趾骨、扁平骨の発生は少ない。

5.症状および検査所見

主に疼痛と腫脹を訴えて受診する例がほとんどである。ほか関節運動制限、局所熱感、発熱等が認められることもあるが、いずれも非特異的である。

血清アルカリフォスファターゼが約半数で上昇するが、小児の正常値は成人の1.5~2.0倍程度高いことに注意する必要がある。時に赤沈の亢進やCRPの上昇などの所見を認めることがある。

6.画像所見

1. X線所見

溶骨性変化を示すもの、骨硬化性変化を示すもの、両者の混合するものに分類され、中でも混合型が多い。腫瘍内部の骨化は無構造であり、雲状、綿毛状を示す。皮質骨はしばしば破壊され、骨外にも腫瘍を形成する。骨内病変が骨皮質を穿孔して骨膜に達し刺激が加わると、骨膜性骨新生が促されて骨膜反応が生じる。骨肉腫ではCodman三角(腫瘍に押し上げられた骨膜が骨新生をきたし、その深部の骨皮質との間に三角形の骨を形成したもの)やスピクラ(腫瘍細胞が血管に沿って侵食することで骨皮質に対して垂直あるいは放射状に針状の骨形成が生じたもの)などを認めることが多い。しかし、実際のところ骨肉腫は画像所見が多彩であるため、典型的でない画像所見を呈することも少なくないので、非定型的な骨破壊ないしは骨形成病変の場合は常に骨肉腫を念頭におく必要がある。単純X線所見は化学療法施行患者の経過観察にも用いられ、化学療法の有効例では病変部の硬化像や骨外病変の縮小などが認められる。

2. CTおよびMRI所見

CTでは骨皮質の破壊像や腫瘍内の骨形成が容易に描出される。水分を多く含んだ軟骨成分、出血・壊死成分は低濃度を示し、石灰化域は著しい高濃度を示す。MRIでは腫瘍部のT1、T2は延長しており、基本的にはT1強調像で低信号、T2強調像では均一または不均一な高信号域として認められる。石灰化した類骨や骨形成部分はT1、T2強調像でともに巣状またはびまん性の低信号を示す。腫瘍の髄内進展はT1強調像が有用であり、周囲軟部組織への腫瘍の進展を描出するにはT2強調像が有用である。細胞成分の多い充実性の領域はGd-DTPAで強くenhanceされるが、骨髄と腫瘍の境界がかえって不明瞭となるので、そのときは脂肪抑制画像が有用である。

3. 血管造影

不規則な走行と形状を示す新生血管の増生、プーリング、A-Vシャント、腫瘍濃染などを認める。腫瘍との位置関係を把握するのに役立つ。また、腫瘍の栄養血管の同定による抗癌剤の動脈内注入療法も可能である。更に血管造影が腫瘍のviabilityを反映するため、化学療法などの術前療法の効果の判定にも有用である。

4. 核医学的検査

骨シンチグラフィでは病変部に著名な集積を認め、転移巣およびskip lesionにも集積を認める。軟部腫瘍で骨シンチグラフィが強い集積を示した場合は骨外性骨肉腫が強く示唆される。タリウム(Tl)シンチグラフィでも強い集積を認め、3時間後のdelay像でも強い集積を認めることが多い。また、Tlシンチグラフィは腫瘍のviabilityを反映するため、治療効果の判定にも有用である。

7.病理所見

組織の基本は低分化の紡錘形・多核細胞肉腫であるが、組織像の幅は広く、一見反応性の骨形成もしくは線維化にしかみえないものから、骨・類骨形成の著しい硬化像を示すもの、著名な軟骨形成を示すもの、更には類骨をほとんど伴わないまったくの未分化肉腫の所見を示すものまで、かなり変化に富み、同一の腫瘍内でも部位によって表れ方が異なるのが常である。多核巨細胞の出現は必発に近く、破骨細胞様のおとなしいものから、一見して悪性と映る奇怪なものまで、質的にも量的にも様々で、時として骨巨細胞腫様の像を呈することもある。

骨肉腫は、通常その産生する細胞間物質の量的な割合によって、骨形成型osteoblastic type、軟骨形成型chondroblastic type、および線維形成型fibroblastic typeの3型に分類されている。

組織学的鑑別診断としては、骨芽細胞腫、骨巨細胞腫、通常型軟骨肉腫、線維肉腫や悪性線維性組織球種、転移性骨腫瘍などがあげられる。

8.病期(ステージ)

骨腫瘍のstagingには、UICC(International Union Against Cancer)とAJCC(American Joint Committee on Cancer)が用いているTNM分類(表1)と、Ennekingが提唱したSurgical Staging System(表2)の2つがある.

表1 UICC第5版またはAJCC第6版のTNM分類
T-原発腫瘍
TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
T1 腫瘍最大径が8cm以下
T2 腫瘍最大径が8cmより以上
T3 同一骨内不連続病変(skip metastasis)
N-所属リンパ節
NX 所属リンパ節の評価が不可能である
N0 所属リンパ節転移なし
N1 所属リンパ節転移あり
M-遠隔転移
MX 遠隔転移の評価が不可能
M0 遠隔転移なし
M1a 肺転移あり
M1b 肺以外その他転移

 表2 Surgical stages (Enneking)
Stage Grade Site Metastases
ⅠA Low (G1) Intracompartmental (T1) None (M0)
ⅠB Low (G1) Extracompartmental (T2) None (M0)
ⅡA High (G2) Intracompartmental (T1) None (M0)
ⅡB High (G2) Extracompartmental (T2) None (M0)
ⅢA Low (G1) Intra or Extra (T1~T2) Regional or distant (M1)
ⅢB High (G2) Intra or Extra (T1~T2) Regional or distant (M1)

9.治療

基本的に生検組織にて骨肉腫の確定診断が得られれば、直ちに術前化学療法を開始する。その後、手術を施行し術後も化学療法を行う。Low gradeの骨肉腫では化学療法に感受性があまりないため、通常手術療法のみで治療される。

1. 化学療法

現在では術前および術後の両方に化学療法を行うneoadjuvant chemotherapyが主流となってきている

術前化学療法の目的としては、

  • 1) 既に存在する微小転移巣に対して、できるだけ早期に治療を開始する
  • 2) 原発腫瘍を抑制、縮小させ、手術の安全性を高め、切除範囲の縮小を目指す
  • 3) 原発巣に対する反応を評価し、術後化学療法の参考とする

などがあげられる。

化学療法で使用する薬剤は、2種類以上を組み合わせる多剤併用療法が一般的である。主に使用される薬剤は、アドリアマイシン(ADR)、メソトレキサート(MTX)、シスプラチン(CDDP)、イホスファミド(IFM)の4種類である。他にブレオマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシンなども使用されている。またDNA修復阻害剤であるカフェインの動注などの併用も試みられており、高い局所有効率を得ている。それは高い局所根治性につながると同時に患肢温存手術をより安全なものにしている。

しかし、抗癌剤は副作用を伴う。ADRには心毒性があり、心筋障害は不可逆性なため心不全となり致死的となることもある。また動注では皮膚や筋肉に壊死を生じることもあり注意を要する。MTXには肝機能障害や消化器障害があるほか、神経障害や骨髄機能障害なども生じることがある。CDDPは腎毒性が強いため、十分な補液と利尿が重要である。また聴力障害をきたすこともあるので、定期検査が必要である。

適切な手術をおこなうために、術前化学療法の効果を画像的に評価することが重要である。血管造影における腫瘍血管の減少・消失やMRIにおけるenhance領域の縮小・消失、Tlシンチグラフィにおける取り込みの低下などが効果判定に有効であるといわれている。また、手術により切除された腫瘍を組織学的に評価することも重要であり、生きている腫瘍細胞の量で化学療法の効果の程度を判断する(表3)。それにより術後の化学療法のプロトコールを決定していく。

表3 組織学的効果判定基準
Grade 0:無効
 腫瘍のかなりの範囲にviable tumor cellが残るもの(目安として50~100%)
Grade 1:軽度の効果
 腫瘍細胞の変性、壊死像、および二次変化が目立つが、まだviable tumor cellが比較的残るもの(目安として10~50%)
Grade 2:かなりの効果
 広範囲の腫瘍細胞の壊死、融解、消失、およびその二次変化をみるが、viable tumor cellがごく一部に残るもの(目安として10%以下)
Grade 3:著効
 Viable tumor cellをまったく認めないもの

2. 放射線療法

骨肉主は比較的放射線抵抗性である。患肢温存手術を安全に行うために、術前に補助的な役割として、照射される場合もある。

3. 手術療法

従来は切・離断術が主に行われていたが、最近では患肢温存手術を第一に考える。手術に際してEnnekingのsurgical stage分類(表2)でstagingを行い、確実な切除縁を決定することが大切である。切除縁について、日本整形外科悪性骨腫瘍取り扱い規約では、治癒的切除縁>広範切除縁>辺縁部切除縁>腫瘍内切除縁の順に4つに分類されている。化学療法無効例では治癒的切除が必要であり、化学療法有効例では広範切除術が適応となる。いずれにせよ“術中に腫瘍の顔を見ないこと“が原則である。神経血管束が隣接しているときは、その部分だけ辺縁切除を行うこともあり、患肢機能を優先させる傾向にある。

広範切除後の患肢の再建方法として様々な方法が試みられており、人工関節、自家骨、同種骨、人工補填材料などが用いられている。自家骨は血管柄付き腓骨移植や、処理骨移植などが行われている。処理骨には、放射線照射骨や熱処理したオートクレーブ骨、パスツール処理骨などが使用されているが、最近では液体窒素処理骨などを用いる施設もある。同種骨移植は欧米では盛んに行われているが、日本ではボーンバンクが十分整備されていないため入手が困難であまり行われていないのが現実である。また他には、上記のように骨欠損部を何かで置換するのではなく、創外固定器を用いて、残った正常骨を移動・延長することで骨新生をさせながら欠損部を充填していく方法(shortening‐distraction、bone transport)なども行われており、有用な治療法となってきている。

3. 転移巣の治療

骨肉種の転移好発部位は肺である。初診時あるいは経過観察時に肺転移が出現した場合の治療戦略はどうするか。

  • 1)初診時に切除不能の無数の肺転移がある場合には、現時点では化学療法のみが唯一の治療法となるが、予後は極めて不良である。
  • 2)初診時に切除可能な肺転移を有する場合には、肺転移の無いケ症例と同様の治療を行う。術前化学療法終了後に可能なら原発巣と肺転移巣の同時切除を行い、術後化学療法へと移行する。

    初診時肺転移を有する症例でも、neoadjuvant chemotherapyと手術療法により約30%の生存率が期待できる。

  • 3)化学療法中に肺転移を生じてくる症例では、抗がん剤を変更することで対応するが、予後は不良である。
  • 4)治療終了後に新たに肺転移を生じる症例では、まず化学療法を行って治療効果をみて肺転移巣切除を行う場合と、先に肺転移巣を切除してから化学療法を行う場合の2通りの方法が行われている。いずれの場合でも、転移巣の数が少なく切除可能な症例では、約40%以上の生存率が期待できる。

    骨転移を生じてくる骨肉種の予後は不良である.

10.予後

現在のところ、5年生存率は画像診断の発達、手術手技の発達、neoadjuvant chemotherapyのおかげで60~70%と向上している。一方で転移症例や再発しやすい脊椎、骨盤発生例は予後不良であり、化学療法も無効なことが多い。