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非ホジキンリンパ腫

1.悪性リンパ腫の病型・分類

リンパ細網組織に原発する非上皮性腫瘍を総称して悪性リンパ腫という。悪性リンパ腫診療では、病理組織学的分類が最も重要であり、WHO分類に基づいて分類・記載される。WHO分類は長らく第3版が用いられてきたが、2008年9月に改訂を得てWHO分類第4版が上梓される。病理組織に大きな核小体を有するHodgkin細胞(単核)、Reed-Sternberg細胞(多核)という腫瘍性巨細胞の増殖を認め、反応性のリンパ球や組織球が背景に広がるものをホジキンリンパ腫(Hodgkin Lymphoma;HL)と呼ぶ。一方、Hodgkin細胞、Reed-Sternberg細胞を認めないものを非ホジキンリンパ腫(Non-Hodgkin Lymphoma;NHL)と呼ぶ。NHLでは、その細胞起源からB細胞起源のものとT/NK細胞起源のものとに大別される。またその分化段階から各々前駆B細胞および前駆T細胞に由来するもの、および成熟した末梢性B細胞および末梢性T/NK細胞由来とに分類する。WHO分類を見て分かるように、非常に多くの異なった性質の病型が含まれる。

2.疫学

我が国での発生は、1年間に数千人の方が発症していると言われるが、近年増加傾向にある。各々の組織型毎に、発生しやすい年齢、地域等が異なっている。日本では、ホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫全体の1割程度を占めるにすぎず、大部分が非ホジキンリンパ腫となる。また、九州・四国地方にはHTLV1キャリアが多く、その結果成人T細胞性白血病/リンパ腫が好発する。

3.病因病態

悪性リンパ腫において、明らかな一つだけの原因というもの存在しない。リンパ腫に限らず、「がん」は遺伝子に変異が起こり発症するが、そこには様々な要因が関係している。ウイルス感染、放射線、紫外線、ある種の薬剤、ホルモン、様々な炎症性疾患、加齢など複数の要因が重なって発病する(多段階発がん)と考えられている。リンパ腫の一部は、特有の染色体転座、例えばBurkittリンパ腫におけるt(8;14), ろ胞性リンパ腫におけるt(14;18)などが関連しているが、これら染色体レベルでの変異は重要ではあるものの、それら単独では発がんに至らない。

悪性リンパ腫はまた、身体の中のどこからでも発生しうる。HLはリンパ節・リンパ装置より発生するのに比べ、NHLの6割はリンパ節原発であるが、残りの4割は全身のリンパ節外臓器どこからでも発生する。全身の諸臓器の腫瘍として発見されるので、他の「がん」との鑑別が重要となる。

4.診断方法

悪性リンパ腫の診断は、腫大しているリンパ節やその他の腫瘍の組織を「生検」採取し病理組織学的に診断される。できるだけ詳細な検索を行うために、ある程度の大きさ(できれば母指頭大程度)の組織を生検する事が望ましい。十分量の組織が採取された場合は、病理診断以外に、Flow cytometryや、染色体分析を提出し、さらに凍結保存等も行っておく事が望ましい。

5.治療方針

悪性リンパ腫は全身諸臓器から発生するため、かつては各科で治療がそれぞれに行われていたが、発生部位は異なっても基本的には血液腫瘍であり、治療法の選択や投与法および副作用対策などが複雑なため、血液内科医が中心となって治療を行うべきである。

悪性リンパ腫の治療方針は、主に病理組織型(悪性度)、病期(ステージ)を含めた予後因子、発生部位などの要素により決定される。

治療方針決定のための必要事項

リンパ腫は、あらゆる臓器から発生し、また極めて多様な病型から構成されている。以下の要素に留意し治療方針を決定する。これらの十分な評価を行わずに、治療を行うべきではない。

  • 1)病理組織型、悪性度:治療方針を決める最も重要な情報
    • Low grade低悪性度(Indolent lymphoma; 進行が緩慢:年単位の病気)
    • Intermediate grade中悪性度(Aggressive lymphoma; 進行がはやい:月単位の病気)
    • High grade高悪性度(Highly aggressive lymphoma; 進行が非常にはやい:週〜日単位の病気)
  • 病理組織学悪性度より悪性度を以下の如く分ける。

    また、B細胞性か(rituximabを含んだ治療の適応となる)、T/NK細胞性かも重要となる。

  • 2)発生部位:特に節外臓器原発
  • 節外臓器の原発の場合は、リンパ腫のためにその臓器機能が障害されている可能性がある。また、その臓器における慢性的な炎症が病気の発生要因になっている事もあり、基礎となる慢性炎症による症状が加わる事がある。治療にあたっては、これらの要素も重要である。

  • 3)病期 (ステージ)
  • 悪性リンパ腫ではAnn-Arbor臨床病期分類を用いる。病期を確定するためには、全身CT、67Ga-scanあるいは18FDG-PET、骨髄穿刺生検などの検査が必須である。

    Ann Arbor 分類(Cotswolds 改訂)

    I期: ひとつのリンパ節領域(頚部やそけい部など)、またはリンパ組織(扁桃腺、脾臓、胸腺など)に病変がとどまっている場合。リンパ節以外の臓器の限局的なリンパ腫の病変がある場合も、I期とされる。
    II期: 横隔膜を境界として、その上または下いずれか一方に限局した、二つ以上のリンパ節領域、リンパ組織の病変。
    III期: 横隔膜の両側に及ぶ、リンパ節領域またはリンパ組織の病変。
    IV期: 広汎な、リンパ節以外の臓器への浸潤。例えば、骨髄、肝臓などの臓器に病変がある場合。
    E: リンパ節以外の臓器の(限局した)病変がある場合、"E"とつける。例えば、胃に限局したリンパ腫の病変があり、その他には病変がない場合は、IE期と書く。
    B: 継続または繰り返す38度以上の原因不明の発熱、盗汗、6ヶ月以内での10%以上の体重減少、などのどれかの症状があるときは"B"とつける。これらの症状がないときは"A"とつける。
    X: 巨大な腫瘤(Bulky mass)があるときにつける。最大径が10cm以上、または胸のレントゲン写真で胸椎の5番6番の高さでの胸郭(胸の幅)の1/3以上の胸腔内のリンパ腫病変を巨大腫瘤と評価する。

  • 4)予後因子
  • IPI (International Prognostic Index): NEJM 329:987-994, 1993

    IPIでの予後因子 予後不良因子
    年齢 61歳以上
    血清LDH 正常上限を越える
    PS (Performance status) 2〜4
    病期 IIIまたはIV
    節外病変数 2以上
    上記予後不良因子をいくつ持っているかによって
    • Low Risk Group: 0〜1
    • Low Intermediate Risk Group: 2
    • High Intermediate Risk Group: 3
    • High Risk Group: 4〜5

    AA-IPI (Age-Adjusted IPI) での予後因子 予後不良因子
    血清LDH 正常上限を越える
    PS (Performance status) 2〜4
    病期 IIIまたはIV
    上記予後不良因子をいくつ持っているかによって
    • Low Risk Group: 0
    • Low Intermediate Risk Group: 1
    • High Intermediate Risk Group: 2
    • High Risk Group: 3

    R-IPI : Blood, 2007, Vol. 109, No. 5, 1857-1861.

    Rituximab時代のIPI

    IPI予後不良因子をいくつ持っているかによって

    • Very good: 0
    • Good: 1〜2
    • Poor: 3〜5

    FLIPI (Follicular lymphoma IPI): Blood. 2004;104(5): 1258-65.

    age (> 60 years vs 60 years),
    Ann Arbor stage (III-IV vs I-II),
    hemoglobin level (< 120 g/L vs 120 g/L),
    number of nodal areas (> 4 vs 4),
    serum LDH level (above normal vs normal or below).
    • low risk (0-1 adverse factor)
    • intermediate risk (2 factors),
    • poor risk ( 3 adverse factors).

    PIT(Prognostic Index for PTCL-U): Blood, 2004, 103, No. 7, 2474-2479.

    PTCLではIPIが相応しくない事が知られ、独自の予後因子が検討された。

    age older than 60 years,
    PS equal to or more than 2,
    LDH level value at normal levels or above,
    bone marrow involvement
    • group 1, no adverse factors
    • group 2, one factor
    • group 3, 2 factors
    • group 4, 3 or 4 factors

    JCOG 0108A

    JCOGの解析では本邦のPTCLでは、IPI もPITもOSに相関しない事が判り、独自の予後因子を提唱

    TP低値(<6.3g/dl)
    病理亜型: PTCL-U, NK/T. ETCL(vs. ALCL + AILT)
    • 1群;因子0
    • 2群;因子1
    • 3群;因子2

  • 5)初発か、再発か?
  • 6)心、肺、肝、腎、骨髄などの重要臓器の予備能力
  • 各種血液検査や心エコー、動脈血ガスなどで治療前評価を行う。

5.治療の実際

局所療法(外科切除、放射線照射)の適応は限られ、全身的治療(化学療法)による根治療法を基本とする。

5−1、放射線療法

適応は非常に限られる。未だに悪性リンパ腫の病期I,IIには放射線治療、III,IVで化学療法と記載してある教科書もあるが、これは多くの場合誤りである。しかし、以下の場合には重要である。

  • 1)限局期(Ann Arbor IA期)のindolent lymphoma(濾胞性リンパ腫やMALTリンパ腫など)では、放射線照射だけで治療を行う場合もある。
  • 2)限局期(Ann Arbor IA期)aggressive lymphomaでは、化学療法を短期間(3〜4コース)施行後に、病変部に放射線照射を行う治療法をcombined modality therapy; CMT(複合的治療)が選択される事もある。
  • 3)化学療法終了後の残存病変には、放射線を追加照射する事もある。しかし、18FDG-PETが普及してCTの検索では残存病変に見えていたものが、FDG集積を認めず活動性のない場合も存在する事が明らかとなった。従って、化学療法後に放射線の後照射を行うべきかどうかは、18FDG-PETで評価した上で判断すべきである。
  • 4)造血幹細胞移植の前処置の一部として行う事もある。
  • 5)再発難治例で、一箇所の局所症状が問題となる場合は、緩和療法として行う場合がある。

5−2、化学療法

5−2−1)びまん性大細胞性Bリンパ腫 Diffuse large B-cell lymphoma

DLBCL NHLの中で最も多く(過半数)を占める病型で、Aggressive lymphomaの代表。R-CHOP(rituximab, cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednisolone)療法が世界的な標準治療である。通常は3週間間隔で6〜8コースの治療が行われる。R-CHOP6コースが行われた場合、日本ではrituximabは保険適応で8回使用できるため、更に2回追加投与するか、更にCHASER療法等in vivo purging 効果を狙った治療でのautoPBSCT/HDCの設定に使用するかは、個々の症例のrisk factor等で考慮する。

限局期(I期)の場合、R-CHOP×3〜4コース後に病変部位への放射線照射(CMT)が通常行われる。最近、R-CHOP療法を3コース行った後に18FDG-PETで治療効果を評価し、残存病変がなければ1コースのR-CHOPを追加、残存病変があれば放射線照射を追加するという方法がカナダのグループから報告され注目を集めている。しかしこの方法が長期的に有用かどうか、今後多くのデータを集めて検証する必要がある。

進行期症例に対しても、更に治療効果を上げるための臨床試験が各国で行われている。

JCOG-LSG(日本臨床腫瘍研究グループ・リンパ腫班)では、低リスクグループ(IPI-L,LI)のを対象としたJCOG 0601臨床試験; 通常のR-CHOP療法 vs weekly R+CHOP療法(rituximabを毎週投与しrituximab血液中濃度をあげる治療法)が始められた。

高リクスグループ (IPI-HI,H)の症例に対する臨床試験も近日中に開始される予定である。

5−2−2−)Burkittリンパ腫 Burkitt lymphoma(

日本では稀な病型であるが、Highly aggressive; 高悪性度リンパ腫(非常にはやい:週〜日単位)に分類される病型。

病気の進行が早いために、R-CHOP療法よりも強い治療:短期集中型治療が必要になる事が多い。短期集中型治療としては、CODOX-M/IVAC療法, R-hyperCVAD/MA療法等が代表的。一方、最近NCI(USA)よりdose adjusted (DA) R-EPOCH療法により優れた治療成績も報告され、これはまだ検証の余地があるものの、低浸襲な新たな選択肢となる可能性がある。

5−2−3)低悪性度B細胞性リンパ腫 indolent B-cell lymphoma(ろ胞性リンパ腫Follicular lymphoma、MALTリンパ腫 MALT lymphomaなど)

限局期(病期IA期)であれば、放射線療法でも治癒が望めるが、低悪性度リンパ腫は進行が緩慢で、全身症状を伴う事が少ないため、多くの症例は進行期で発見される。真にI期であるか否か、PET-CTや骨髄検査などの所見を含めて慎重に検討する必要がある。

II期以上では、化学療法が行われるが、かつての標準的治療であるCHOP療法では、一時的には縮小効果を認めるものの、再発しやすい事が知られている。

現在のところ標準的治療は決まっておらず一般的にはR-CHOP療法が行われる事が多い。rituximab単独療法もよく用いられる。JCOG-LSGではJCOG 0203-MF研究として、3週間間隔の標準R-CHOP療法;Standard R-CHOP療法と2週間間隔のBiweekly R-CHOP療法の比較試験が行われた。長期的にどちらが良いかは、さらに何年もの観察期間が必要である。

近年はrituximab、cladribine、fludarabineなどの薬が使えるようになり、これらの薬の単独の治療およびこれらの薬を含む多剤併用療法がよく行われる。fludarabine経口薬も近年発売され、この単独もしくはrituximabとの併用も行われる。北陸造血器腫瘍研究会(北陸indolent B lymphoma治療研究会)では、R-CMD療法(rituximab、cladribine、mitoxantrone、dexamethasone)の臨床試験を多施設共同研究として開始した。

更に、90Y ibritumomab tiuxetan; Zevalin®も発売され、再発難治例では使用可能となった。ただし、高額な医療費が問題であり、使用可能な施設も限られている。

また、ミニ移植/reduced intensity stem cell transplantation: RIST(骨髄非破壊的前処置による同種造血幹細胞移植)による免疫学的抗腫瘍効果も有効である事が分かっており、化学療法の再発難治例には選択肢となる。

5−2−4)マントル細胞リンパ腫 Mantle cell lymphoma

発症時より進行期(全身リンパ節に加え、消化管や骨髄浸潤が多い)として発見される事が多く、また高齢者(発症年齢中央値が60歳代)に多い病型である。従って初期から多くの予後因子が該当し、IPIはHI, Hの症例が多い。治療はR-CHOP療法が行われる事が多いが治療成績は芳しくなく、より有効な治療法の開発が望まれる。。JCOG-LCGでは、未治療マントル細胞リンパ腫に対する臨床第II相試験がJCOG 0406試験(R-high CHOP/CHASER→LEED)として開始された。ただしJCOG 0406は65歳以下, PS2以下を対象とした試験であり対象症例は限られる。高齢者やPS不良例などのJCOG studyの適応とならない症例に対して北陸造血器腫瘍研究会((北陸indolent B lymphoma治療研究会)では、R-CMD療法(rituximab、cladribine、mitoxantrone、dexamethasone)の臨床試験をindolent lymphomaと同時に運用している。90Y ibritumomab tiuxetan; Zevalin®やRISTも選択肢として挙げられる。

また、今までは比較的強力な治療を早めに行う事が多く試みられてきたが、無症候性初発例に経過観察observationを行うという報告がMartin Pら;Weil Cornell Medical College(NY,USA)のグループより報告され、彼らは強力な化学療法が通常の治療に比べて予後に寄与しない事をその根拠としている。いずれの選択をするかは、症例毎の全身状態、症状および様々な選択肢を呈示した上でのICが必要であろう。

5−2−5)血管内リンパ腫 Intravascular large B-cell lymphoma; IVL

腫瘍が塊をつくらずに、全身の微小血管内に腫瘍塞栓として発生し、不明熱および多臓器不全として遭遇する特殊なリンパ腫で、診断や治療が困難な病型である。しかし近年このような病型がある事の認識が広がり、比較的早期に診断し治療開始する事も可能となってきた。北陸造血器腫瘍研究会/北陸IVL治療研究会では血管内リンパ腫に対する早期診断→治療の臨床試験を行っている。

5−2−6)中枢神経リンパ腫 Primary central nervous system lymphoma; PCNSL

脳/中枢神経から発生する非ホジキンリンパ腫は他の部位から発生するものに比べ治療が難しい事が知られている。それは、血液−脳関門(blood brain barrier; BBB)があり、投与した抗がん剤が脳内のリンパ腫組織に到達しづらいためである。かつては、全脳放射線照がよく行われていたが、これだけでは治療効果が不十分なだけではなく、照射後の後遺症として神経障害が高率に発症する事が分かっており、初回治療としては推奨されない。

病理組織学的には大部分が、DLBCLであるが、前述のBBBがあるため、CHOP療法やR-CHOP療法では、治療効果が不十分である。近年はmethotrexate(MTX)大量療法はBBBを通過し脳の病変にも有効である事が分かってきた。しかしMTX大量療法だけではこれまた不十分である(海外の試験ではMTX 8g/m2を用いても治療中に再発進行が認められ試験中止となっている)。そのため、MTX大量療法と何らかの化学療法を組み合わせる事が世界中で試みられている。欧米ではMTX大量療法とAra-cの大量療法の併用の試験が多いが、この併用が最良かどうかはまだ不明である。金沢医科大学病院ではMR-CHOP療法(大量MTX + R-CHOP療法)の臨床試験を行っており、多施設共同研究(PCNSL治療研究会)を提案中である。

rituximabは分子量が大きいため通常の投与法ではBBBを通過しづらい事が分かっている。rituximabを髄腔内投与(髄注)する事で、そこを打破しようとする試みがあり、有効例も報告されてきている。しかし、rituximabの髄腔内投与は通常承認されている投与法ではないので、臨床試験として行うべき治療法である。北陸造血器腫瘍研究会では福井大学からの提案で、rituximab+自己血清髄腔内投与の多施設共同研究も検討中である。

5−2−7)リンパ芽球性リンパ腫 lymphoblastic lymphoma

細胞起源により、B細胞由来のB- lymphoblastic lymphoma(B-LBL)とT細胞起源のT- lymphoblastic lymphoma(T-LBL)とに分けられる。他の末梢性リンパ腫に対して、LBLは未分化な段階のリンパ球の腫瘍であり、腫瘍細胞の性質は急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia;ALL)と同じであり、B-LBL, T-LBLは各々、B-ALL, T-LBLのcounterpartである。LBLとALLは、骨髄に浸潤している腫瘍細胞の割合で区別しており、浸潤の割合が20%未満の場合はLBL、20%を超える場合にはALLと診断する。

治療はALLに準じた治療が行われる事が多い。JCOGではALLとLBLに対する臨床試験(JCOG9004およびJCOG9402) が既に報告されている。また、HyperCVAD/MA療法による良好な治療成績が報告されている。

5−2−8)末梢性T細胞性リンパ腫 peripheral T cell lymphoma; PTCL-U→PTCL-NOS

T細胞性リンパ腫では、現在のところB細胞性リンパ腫におけるrituximabのような特効薬がないので、従来の抗がん剤の組み合わせで治療される事が多い。

CHOP療法が標準的治療とされるが、治療成績は不良であり、組織型、病期、発生部位、初再発などの条件により、更に強力な治療(CHOEP療法、DeVIC療法、ESHAP療法、ACVBP療法など)や疾患特異的な治療を考慮する。中でもGELAグループはACVBP療法がCHOPに比べて有意に勝る事を示しており、年齢やPSが問題無ければCHOPよりも治療強度の高い治療を選択すべきであろう。

B細胞性リンパ腫に比べ、一般的に難治性である事が多いため、造血幹細胞移植も行われている。問題は初回治療から自家移植を行うかどうか、再発例では同種移植まで行うかどうかで、日本国内でも多くの臨床研究が計画中である。後述のSMILE療法を再発難治例に用いる提案が、NK/Tリンパ腫研究班より出されている。

抗CCR4抗体が現在治験中で、CCR4を発現している病型では、将来その効果が期待されている。

5−2−9)血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫 angioimmunoblastic T-cell lymphoma; AILT

多くは進行性であるが、一部は無治療でも長期間経過したり自然寛解したりする等、均一な集団ではない。何らかの症状を有し進行性の症候を呈する症例には、PTCL-U(PTCL-NOS)とほぼ同じ治療戦略が行われる事が多い。

5−2−10)NK/T細胞性リンパ腫 extranodal NK/T cell lymphoma, nasal or nasal-type

主に鼻から発生し、NK/Tリンパ腫は細胞傷害性分子(perforin, granzymeB, TIA-1など)を発現し、EBV感染が高率に認められ、更に腫瘍壊死に陥り易く診断も治療も困難な病型である。CHOP療法に治療抵抗性である事が知られており、JCOGではJCOG 0211-DIという臨床試験で、2/3減量DeVIC療法と50Gyの放射線療法を組み合わせたRT-DeVIC療法の治療効果が検討された。従来の治療に比べ期待できそうではあるが、放射線療法の精度管理等が重要で血液内科および放射線治療専門医の居る医療機関でのみ実施すべき治療である。

進行期NK/Tリンパ腫、Aggressive NK細胞白血病に対しては、NK腫瘍研究会で、SMILE療法が日本および海外との共同研究で行われ、第I相試験では期待できる成績も報告されており、現在第II相が進行中である。ただしこれは有害事象の多い治療法であり、SMILE療法参加施設にて臨床試験として行われている。

5−2−11)腸炎型T細胞性リンパ腫 enteropathy type T-cell lymphoma, および 肝脾T細胞性リンパ腫 hepatosplenic T cell lymphoma

いずれも細胞傷害性分子を発現し、かつ通常のCHOP療法では極めて治療成績は不良である。サイトカイン・ストームを防ぐ意味でetoposide (VP16)を併用したCHOEP, DeVICなどの治療をまず試みるべきであろう。その無効例には、他のサルベージ療法、移植療法も可能な症例には試みられる。

5−2−12)成人T細胞性白血病/リンパ腫 adult T-cell leukemia/lymphoma

HTLV-1感染が発病の一要因として知られ、日本でも九州や四国地方に多い地域的特徴のある病気だが、北陸でも散発的に見られる。慢性型、くすぶり型、リンパ腫型、急性型の4病型に分類され、後者2病型は進行も早く予後不良である。この病気もCHOP療法での治療効果が不十分である。JCOG-LSGではmLSG15 (VCAP/AMP/VECP)療法とbiweekly CHOP療法との比較試験を行い、mLSG15 (VCAP/AMP/VECP)の治療成績が勝っている事を示し、これが唯一の根拠のある治療法となっている(JCOG9801)。

しかし、mLSG15 (VCAP/AMP/VECP)でも根治できる症例数は少なく、化学療法で寛解期に(もしくは非寛解期でも)ドナーが見つかり条件さえ整えば、同種造血幹細胞移植を施行する方が望ましいと、一般には考えられている。

将来的には、前述した抗CCR4抗体が期待される病型の一つである。

5−2−13)未分化大細胞型リンパ腫 anaplastic large cell lymphoma

細胞傷害性分子を発現しているTリンパ腫であるが、ALKを発現しているか否かにより治療反応性および予後が分かれ、WHO分類第4版では、ALK+, ALK-で別々のカテゴリーとして捉える事になっている。予後の比較的良いALK+ALCLでは従来のCHOPで、予後の悪いALK-ALCLではPTCL-U (PTCL-NOS)の治療に準じて強力な治療が必要である。

5−2−14)再発例、難治例

再発例、難治例では、初発時に比べ治療が困難となる。それは腫瘍細胞が既に投与された抗がん剤耐性となっている面と、患者の身体は既に投与された抗がん剤治療によりダメージを受けている(身体は弱ってきている)面の両方の要素による。再発難治例では、通常は初回治療とは異なった薬剤の組み合わせによる治療(サルベージ療法)が行われる。特に、初回化学療法でdoxorubicinを中心としたanthracyclin系抗がん剤が使用されている事が多いため、その心毒性が問題となる。anthracyclin系抗がん剤の心毒性は蓄積毒性であり、一定量(総投与量が300mg/m2以上)を越すと心機能に影響を及ぼす可能性が生ずるため、以前の総投与量を求めて、基準を超す場合はanthracyclin系抗がん剤を含まない治療レジメンを選択する。

様々なサルベージ療法:EPOCH療法、ESHAP療法、DeVIC療法、hyper C-VAD/MA療法、経口少量VP16療法、少量持続irinotecane療法などがあり、病状により選択される。

金沢医科大学病院では、再発難治性のリンパ腫に対する少量持続irinotecane療法の臨床試験を行っており、病気と共存する方向の治療の有用性を調べている。

再発を繰り返す症例では、造血幹細胞移植も選択肢になるが、リンパ腫に対する造血幹細胞移植の有意性については未だ不明確で、臨床研究として行う事が推奨されている。

6.治療効果判定

リンパ腫の治療効果判定の基準は多種あるが、近年はChesonらの基準を用いて判定されてきた。更に18FDG-PETがリンパ腫の治療前および治療後の評価に用いられる事が一般的となり、PET(あるいはPET-CT)を効果判定に取り入れた、新Cheson基準(1)(2)が導入されようとしている(ただし現状ではPETは全ての施設で行える訳ではないため、可能な範囲で取り入れられていくと思われる)。