1)中咽頭癌とは
中咽頭癌は比較的稀な疾患である。中咽頭癌は頭頸部癌の約10%を占めるにすぎない。中咽頭がんは50−60歳代の発症が最も多く、本邦では年間1,000−2,000人が発症し男性は女性の3−5倍と言われている。。頭頸部のその他の癌と同様に、喫煙および飲酒は、中咽頭癌の発生の最も重要なリスク因子である。組織学的にほとんどの中咽頭がんは扁平上皮癌である。
中咽頭は解剖学的に、上方は軟口蓋、下方は舌骨の間に位置し、前方は口腔と上方は上咽頭、下方は声門上部および下咽頭と交通する。中咽頭は以下の部位に分類される。すなわち、前壁(舌根、喉頭蓋谷)、側壁(口蓋扁桃、扁桃窩、口蓋弓、舌扁桃溝)、上壁(軟口蓋下面、口蓋垂)、後壁である。頭頸部所属リンパ節の解剖学的構造は、頸静脈、副神経、および顔面動脈に沿って位置する。頭頸部所属リンパ節は以下のレベルI-Vに分類されている。すなわち、レベルI:オトガイ下および顎下リンパ節、レベルII:上内深頸リンパ節、レベルIII、中内深頸リンパ節、レベルIV:下内深頸リンパ節、レベルV:副神経リンパ節である。
前壁(舌根、喉頭蓋谷)には痛覚線維がなく、症状は腫瘍が進行するまでしばしば現れない。前壁は豊富なリンパ流を有するため、診断時患者の70%以上は同側のリンパ節転移を30%程度で両側のリンパ節転移を有する。転移する所属リンパ節は一般にレベルIIおよびIIIである。
側壁(口蓋扁桃、扁桃窩、口蓋弓、舌扁桃溝)の病変は、中咽頭がんで最も発生頻度の高い部位である。患者の役75%は、診断時に進行癌である。転移する所属リンパ節はレベルIIを含むことが多い。
上壁(軟口蓋下面、口蓋垂)の病変では、表面に初期病変でとどまることがある。転移する所属リンパ節は主にレベルIIである。
後壁の病変は一般的に無症候性である。従って、 これらの病変は上方の上咽頭、後方の頸筋膜椎前葉、および下方の梨状陥凹および下咽頭に浸潤して拡がることがあり、診断時にはすでに進行癌であることが多い。主な所属リンパ節はレベルIIおよびIIIである。癌が咽頭正中を超えて進展する場合には、両側頸部への転移もめずらしくない。
2)診断
中咽頭癌の診断は組織学的生検によって行う。中咽頭癌の臨床的病期決定には、臨床評価および画像評価の両方を行う。原発腫瘍は可能であれば視診および触診により評価する。必要に応じて、喉頭ファイバーによる評価を追加する。考えられる所属リンパ節については特に慎重に触診を行う。画像診断は、頭頸部および胸部を含むCTは必須で、必要に応じて頭頸部MRIおよびFDG-PETを追加する。MRIは軟組織における腫瘍の進展範囲の評価に、CTは骨への進展の有無の評価に、FDG-PETは病期判定のための全身評価や再発中咽頭癌に対する評価法として有用である。
また、多発性原発癌の有無を評価するため、上部消化管を治療前に評価する事は重要である。
3)病期
UICCは、TNM分類による以下の病期決定を指定している。
原発腫瘍 (T)
- T1:最大径が2センチ以下の腫瘍
- T2:最大径が2センチを超え、4センチ以下の腫瘍
- T3:最大径が4センチを超え、6センチ以下の腫瘍
- T4a:喉頭、舌深層または外在の筋、内側翼突筋、硬口蓋、または下顎骨に浸潤する腫瘍
- T4b:外側翼突筋、翼状突起、上咽頭、頭蓋底に浸潤、または頸動脈を巻き込む腫瘍
所属リンパ節転移 (N)
- N0:所属リンパ節の転移を認めない
- N1:同側の単発性リンパ節転移で最大径が3センチ以下
- N2:同側の単発性リンパ節転移で最大径が3センチを超えるが6センチ以下、または同側の多発リンパ節転移で最大径が6センチ以下、または両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6センチ以下
- N2a:同側の単発性リンパ節転移で最大径が3センチを超えるが6センチ以下
- N2b:同側の多発リンパ節転移で最大径が6センチ以下
- N2c:両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6センチ以下
- N3:最大径が6センチを超えるリンパ節転移
遠隔転移 (M)
- M0:遠隔転移を認めない
- M1:遠隔転移あり
以上のTNM分類をもとにUICCは以下の病期分類を定義している。
- I期:T1N0M0
- II期:T2N0M0
- III期:T3N0M0、T1-3N1M0
- IVA期:T1-3N2M0、T4aN0-2M0
- IVB期:T4bN0-2M0、T1-4N3M0
- IVC期:T1-4N0-3M1
4)治療
手術単独または放射線療法単独、あるいは手術と放射線療法の併用療法が中咽頭癌における標準的治療となっている。病期により化学療法を併用する場合がある。
1. I期の中咽頭癌
この病期の中咽頭癌の制御では、手術または放射線単独療法による治療法で有意差はない。従って治療法の選択は、治療法の選択肢から予測される機能的結果、または社会経済的結果により総合的に決定されるべきである。
治療の選択肢:- a. 手術療法:原発腫瘍を切除し、原則的に一期的縫合する。予防的頸部廓清術は行わない。
- b. 放射線単独療法:中咽頭原発巣に対して、66Gyの照射を行う(2Gy/day x 33fx)。
2. II期の中咽頭癌
この病期の中咽頭癌の制御では、手術または放射線単独療法による治療法で有意差はない。従っていずれを主体とした治療を行うかは、治療法の選択肢から予測される機能的結果、または社会経済的結果により総合的に決定されるべきである。
治療の選択肢:- a. 手術療法:原発腫瘍を切除し、可能であれば一期的縫合を行う。一期的縫合が困難、あるいは機能的損失をまねく事が予測される場合は局所粘膜弁による再建術を追加する。予防的頸部廓清術は行わない。。
- b. 化学放射線療法:通常の放射線療法(総量66Gy、2Gy/day x 33fx)に加えて、放射線増感剤として週1回ドセタキセル(10mg/w/m2 x 6クール)による化学療法を同時併用で追加する。
3. III期の中咽頭癌
III期の中咽頭癌では、手術と放射線療法の併用が標準的な治療法である。しかし、この病期での局所手術では術後の機能的、審美的結果が問題となる事があり、今後、至適治療の確立には多様な選択肢が必要である。
- a. 手術療法と放射線療法の併用:原発巣を切除し、さらにN1症例では頸部廓清術を追加する。原発巣の欠損部については、術後の機能的結果、審美的結果を考慮して、可能であれば一期的縫合、必要であれば局所粘膜弁や皮弁、場合により遊離皮弁による再建を行う。局所および頸部に対して、術後照射を追加する。高リスク患者では、術後化学放射線療法への変更を検討する。
- b. 化学放射線療法:
- T1およびT2症例:通常の放射線療法(総量66Gy、2Gy/day x 33fx)に加えて、放射線増感剤として週1回ドセタキセル(10mg/w/m2 x 6クール)による化学療法を同時併用で追加する。
- T3症例:通常の放射線療法(総量66Gy、2Gy/day x 33fx)に加えて、シスプラチンによる動注化学療法(100mg/body x 3クール)を同時併用で追加する。
4. IV期の中咽頭癌の治療
切除可能症例の治療:一般に、IV期の中咽頭癌では、可能な場合、一般には手術と放射線療法の併用である。しかし、この病期での局所手術では術後の機能的、審美的結果が問題となる事があり、今後、至適治療の確立には多様な選択肢が必要である。
- a. 手術療法と放射線療法の併用:原発巣を切除し、さらにNプラス症例では頸部廓清術を追加する。原発巣の欠損部については、術後の機能的結果、審美的結果を考慮して、可能であれば一期的縫合、必要に応じて局所粘膜弁や皮弁、遊離皮弁による再建を追加する。局所および頸部に対して、術後照射を追加する。高リスク患者では、術後化学放射線療法への変更を検討する。
- b. 化学放射線療法:
- T1-2かつN0-2の症例:通常の放射線療法(総量66Gy、2Gy/day x 33fx)に加えて、シスプラチンによる全身化学療法(80mg/ m2 x 3クール)を同時併用で追加する。
- T3-4またはN3症例:通常の放射線療法(総量66Gy、2Gy/day x 33fx)に加えて、シスプラチンによる動注化学療法(100mg/body x 3クール)を同時併用で追加する。
これらの患者は化学放射線療法の対象である。
- a. 化学放射線療法
通常の放射線療法(総量66Gy、2Gy/day x 33fx)に加えて、シスプラチンによる全身化学療法(80mg/ m2 x 3クール)あるいはシスプラチンによる動注化学療法(100mg/body x 3クール)を同時併用で追加する。
5. 生存率
2000-2003年の4年間に根治治療を行った中咽頭癌の治療成績(病因特異的5年生存率)は以下の通りである。
病期I: 92%、病期II: 90%、病期III: 83%、病期IV: 58%
