1)喉頭癌とは
喉頭癌は頭頸部癌の30%あまりを占める。好発年齢は50−60歳代である。喫煙および過度のアルコール摂取が喉頭癌の第一危険因子である。組織学的にほとんどの喉頭癌は扁平上皮癌である。
喉頭は、解剖学的に上は喉頭蓋谷に始まり下は輪状軟骨下縁まで拡がる。喉頭は声門上部、声門部および声門下部、の3部から構成されている。喉頭癌の発生部位別頻度は、声門部、次いで、声門上部が多く声門下部はまれである。頭頸部所属リンパ節は以下のレベルI-Vに分類されている。すなわち、レベルI:オトガイ下および顎下リンパ節、レベルII:上内深頸リンパ節、レベルIII、中内深頸リンパ節、レベルIV:下内深頸リンパ節、レベルV:副神経リンパ節である。
臨床的に、声門癌は嗄声の出現しやすく、所属リンパ節転移を来しにくいため早期に発見されやすい特徴がある。これに対し、声門上癌は進行性で、広範な局所進展、比較的早い時期における所属リンパ節転移、比較的高い割合での遠隔転移を来す事、などが特徴である。
2)診断
喉頭癌の診断は組織学的生検によって行う。下咽頭癌の臨床的病期決定には、基本的に臨床評価および画像評価の両方を行う。原発腫瘍は視診により評価する。喉頭ファイバーによる評価は必須である。考えられる所属リンパ節については特に慎重に触診を行う。画像診断は、頭頸部および胸部を含むCTは必須で、必要に応じて頭頸部MRIおよびFDG-PETを追加する。MRIは軟組織における腫瘍の進展範囲の評価に、CTは軟骨への進展の有無の評価に、FDG-PETは病期判定のための全身評価や再発下咽頭癌に対する評価法として有用である。
また、多発性原発癌の有無を評価するため、上部消化管を治療前に評価する事は重要である。
3)病期
UICCは、TNM分類による以下の病期決定を指定している。
- I期:がんが1亜部(喉頭とさらに小さい単位に分けたもの)にとどまっている状態。
- II期:喉頭内の隣接亜部位まで進展しているが、喉頭内にとどまっている状態で、頸部リンパ節転移も遠隔転移もしていない。
- III期:声帯が全く動かなくなったり、3cmより小さい頸部リンパ節転移を1個認めるが、遠隔転移はしていない。
- IV期:がんが喉頭を越えて咽頭や頸部に進展する、頸部リンパ節転移が多発する、あるいは転移リンパ節が6cm以上となる、またはがんと反対側の頸部リンパ節に転移する、遠隔転移を認めるといった状態。
原発腫瘍 (T)
声門上部
- T1:声帯運動正常で声門上部の1亜部位★に限局する腫瘍
- T2:喉頭の固定がなく、声門上部の他の亜部位、声帯または声門上部の外側域(たとえば舌根粘膜,喉頭蓋谷、リンパ節上感応の内側壁など)の粘膜に浸潤する腫瘍
- T3:声帯が固定し喉頭に限局するものおよび/または臨床後部,喉頭蓋前方の組織,舌根の深部のいずれかに浸潤する腫瘍
- T4:甲状軟骨を破って浸潤する腫瘍および/または頸部軟部組織、甲状腺、および/または食道に浸潤する腫瘍
声門
- T1: 声帯運動正常で(一側)声帯に限局する腫瘍(全連合または高連合に達していても良い)
- T1a: 一側声帯に限局 T1b:両側声帯に浸潤する
- T2:声門上部および/または声門下部に進展するものおよび/または声帯運動の制限を伴う
- T3:声帯が固定し喉頭内に限局する
- T4::甲状軟骨を破って浸潤する腫瘍および/または喉頭外すなわち気管,頸部軟部組織,甲状腺,咽頭に浸潤する
声門下
- T1:声門下部に限局する
- T2:声帯に進展しその運動が正常か制限されている
- T3:声帯が固定し喉頭内に限局している
- T4:輪状軟骨あるいは甲状軟骨を破って浸潤する腫瘍および/または喉頭をこえて他の組織すなわち気管,頸部軟部組織,甲状腺,咽頭,食道に浸潤する腫瘍
所属リンパ節転移 (N)
- N0:所属リンパ節の転移を認めない
- N1:同側の単発性リンパ節転移で最大径が3センチ以下
- N2:同側の単発性リンパ節転移で最大径が3センチを超えるが6センチ以下、または同側の多発リンパ節転移で最大径が6センチ以下、または両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6センチ以下
- N2a:同側の単発性リンパ節転移で最大径が3センチを超えるが6センチ以下
- N2b:同側の多発リンパ節転移で最大径が6センチ以下
- N2c:両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6センチ以下
- N3:最大径が6センチを超えるリンパ節転移
遠隔転移 (M)
- M0:遠隔転移を認めない
- M1:遠隔転移あり
以上のTNM分類をもとにUICCは以下の病期分類を定義している。
- I期:T1N0M0
- II期:T2N0M0
- III期:T3N0M0、T1-3N1M0
- IVA期:T1-3N2M0、T4aN0-2M0
- IVB期:T4bN0-2M0、T1-4N3M0
- IVC期:T1-4N0-3M1
4)治療
原発巣の治療法は以下のとおりです。
1)声門がん
(1) T1
- * 放射線療法
- * 喉頭部分切除術
- * レーザー治療
ほとんどの場合外照射による放射線療法が行われる。癌の存在部位、腫瘍型によっては放射線療法の効果がない場合もあり、最初から喉頭部分切除術が選択されることもある。また、癌が限局している場合、とくにT1aの場合、生検と治療をかねてレーザーによる切除が行われることがある。
(2) T2
- * 放射線療法
- * 喉頭部分切除術
- * 喉頭全摘出術
いわゆるtransglottic typeなどのlate T2の場合には喉頭全摘、亜全摘の適応となるものもある。また,化学療法同時併用放射線治療が放射線単独よりも優れた局所制御率を示す報告が蓄積していて、late T2の治療法は施設間でばらつきが多い。
(3) T3
- * 喉頭全摘出術
- * 喉頭部分切除術
- * 放射線療法
基本的には、喉頭全摘出術が第一選択の治療法。しかし、放射線療法でも制御されるものもあり、まず放射線療法を行い、再発した時に喉頭全摘出術を行う方法もあります。Late T2とT3の境界はクリヤーでなくT3喉頭癌の機能をいかに温存して喉頭全摘術に匹敵する生存率、局所制御率を出すべく各癌専門施設が独自にもしくは連携して取り組んでいる。
(4) T4
- * 喉頭全摘出術
とくに温存する喉頭機能が治療前に既に損なわれている場合には強力な化学放射線療法を施行して、臓器温存に成功しても十分な機能が残っていないために余計に患者を苦しめる可能性がある。
2)声門上がん
(1) T1
- * 放射線療法
- * 喉頭部分切除術
(2) T2
- * 放射線療法
- * 喉頭部分切除術
- * 喉頭全摘出術
(3) T3
- * 喉頭全摘出術
- * 喉頭部分切除術
- * 放射線療法
声門がんと同様に、まず放射線療法を行い、再発した時に喉頭全摘出術を行う方法もある。局所制御率向上を目指して化学放射線療法を施行する施設が増えている。
(4) T4
- * 喉頭全摘出術
3)声門下がん
(1) T1
- * 喉頭部分切除術
(2) T2
- * 喉頭部分切除術
- * 喉頭全摘出術
(3) T3、T4
- * 喉頭全摘出術
放射線療法が第一選択の治療となるものは原則的にないといってよい。がんが前方に限局しているものでは、喉頭部分切除術で制御できることもある。声門下がんは症状が出にくいため、ほとんどの症例が病院を受診時には進行癌であり、喉頭全摘出術を選択せざるを得ない。
放射線療法後の再発に対する治療は、喉頭全摘出術を施行することが最も安全な方法である。一方で治療前と再発時の所見から喉頭部分切除術(亜全摘術)で制御できる場合もある。
6.生存率
生存率は、通常、癌の進行度や治療内容別に算出するが、患者の年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受ける。用いるデータによってこうした他の要素の分布(頻度)が異なるため、生存率の値が異なる可能性がある。
ここにお示しする喉頭癌の生存率は、金沢大学病院を含めたいくつかの病院から報告されているおおまかな数字である。生存率の値そのものでなく、ある一定の幅(データによって異なりますが±5%とか10%等)をもたせて、大まかな目安としてお考えいただければ幸いである。
癌の発生部位により治療成績は多少異なるが、I期では放射線療法で90%以上治る。I〜IV期全体では、65〜70%の5年生存率が得られる。進行癌に対しては喉頭全摘術を含めた手術治療が標準治療とされている。全身投与,経動脈投与いずれの化学放射線療法もevidenceの蓄積とともに喉頭全摘と並列において、初回治療として提示する機関が増加している。しかし,いずれの治療法も経験豊富な癌を専門に扱っている医療機関で行う方が良い。
7.治療上の問題点(合併症)
放射線療法は、音声の面からもほぼもとの声に回復して、よい治療法といえるが、後年照射部位に放射線が誘因となって新しいがん(二次がん)が発生する場合もある。また、癌が残ったり再発した場合には救済手術を計画する必要があるが、その際、創部の治りが遅く、縫合不全を起こしやすくなると考えられている。
喉頭部分切除では、一般に会話は可能となりますが、切除範囲により声がれの程度はまちまちです。また、特に切除範囲が大きい時などに誤嚥することがある。通常は一時的なもので、食事の訓練をしたり、食べ方を工夫することで改善する。どうしてもよくならない場合は喉頭全摘出術の適応となる。喉頭全摘出術では、失声状態となる。しかし、食道発声や電気喉頭の使用により、新しい音声を獲得することができる。食事については、湯売る組織による再建を必要としない場合、喉頭全摘出後でも治療前とほぼ同じようなものを食べることが可能である。
