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慢性リンパ性白血病

1.慢性リンパ性白血病とは

慢性リンパ性白血病(CLL)は慢性リンパ増殖性疾患のひとつで、現在のWHO分類では、B細胞CLLとして、小リンパ球性リンパ腫と同一疾患と定義されている。

慢性リンパ性白血病の疫学

CLLは欧米に多く、欧米では全白血病の約30 %をしめるのに対し、本邦では約3 %で、年間発症率は10万人に0.3人程度である。好発年齢は60歳以上で、高齢者に多い。女性より男性にやや多く、白人が有色人種に比して多い。本邦で少ない原因はわかっていないが、ハワイに移住した日本人においてもその発症は少なく1)、環境因子より遺伝的素因が示唆されている。

2.症状・身体所見

慢性リンパ性白血病は通常非常にゆっくりとした経過をとるために、約25 %の患者は無症状で診断され、健康診断や他の病気の検査で偶然見つかることも多い。多い症状としては、全身倦怠感、リンパ節腫大、脾腫、肝腫大で、5-10 %に体重減少、発熱、盗汗などのB症状を認める。また正常の白血球や免疫グロブリンが減少し、易感染性を認める。貧血によるふらつき・息切れ・動悸、血小板減少による出血傾向なども症状として現れる。溶血性貧血などの自己免疫性疾患の合併や、他の悪性腫瘍の合併も認められる。身体所見上、最も認められるのはリンパ節腫大で、大きさは様々であるが、頸部、鎖骨上窩、腋窩に多く通常圧痛は無く、可動性も良好である。脾腫もよく認められ、25-50 %で触知できる。その他、肝・皮膚に浸潤しやすいが、他のリンパ腫と異なり、消化管粘膜や中枢神経への浸潤はまれである。

3.診断・検査

血液中の白血球が増加しさらにその中で成熟したリンパ球が増加していれば(5,000/mm3以上)慢性リンパ性白血病を疑う。The International Workshop on CLL (IWCLL)の推奨は10,000/mm3以上である2)

CLLの末梢血像は大部分の症例で成熟リンパ球の形態を示す細胞の増加を認める。CLL細胞の表面形質は一般にCD5+, CD10-, CD23+であり、典型例では診断は容易であるが、形態的あるいは表面マーカー上非典型例は診断困難な場合も少なくない。鑑別すべき疾患はろ胞性リンパ腫やマントル細胞リンパ腫の白血病化、リンパ形質細胞リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、T細胞大顆粒リンパ球白血病などである。CLL診断のためのscoring system3)によると、1)表面免疫グロブリン:弱陽性、2)CD5:陽性、3)CD23:陽性、4)CD79aあるいはCD22:弱陽性、5)FMC7:陰性の5項目のうち4~5を満たせば97%の確立でCLLと診断できる。

骨髄では成熟リンパ球が有核細胞の30%以上を占める。伝染性単核球症などのリンパ球増多を伴う鑑別すべき感染症では、骨髄のリンパ球の増加は通常認められない。末梢血液像は貧血・血小板減少を認める。この際、上述のごとく自己免疫性の貧血・血小板減少を伴っていることがあり、注意を要する。その他、LD, ALT/AST, β2-MG, 尿酸の上昇を認める。

CLLに特徴的な放射線画像診断は無いが、胸腔・腹腔内リンパ節腫大、肝脾腫の診断のため、全身のCT検査を行う。FDG-PETはCLLでは通常取り込みが少なく有用でないが、高悪性度リンパ腫への形質転換の際には診断の補助となる。

4.病期(ステージ)

CLLは低悪性度のリンパ性腫瘍であり、診断されてからの進行具合は様々である。10年から20年の経過で未治療のまま他の原因で死亡する場合から、CLLが原因で2,3年で死亡する場合もある。また経過中、前リンパ球白血病、高悪性度リンパ腫(Richter症候群)などに形質転換することもある。purine analogue やanthracyclineでの治療による二次性リンパ系腫瘍などの二次発がんも認められる4)

病期(ステージ)分類は下に示すようにRai分類とBinet分類の2種類があり、いずれもCLLの経過によく相関し、その後の平均生存期間をある程度推定できる。

表:慢性リンパ性白血病の病期分類

Rai分類
病期 基準 生存期間(月)
0 リンパ球増加のみ 150
I リンパ球増加+リンパ節腫脹 101
II リンパ球増加+脾腫または肝腫大 71
III リンパ球増加+貧血 19
IV リンパ球増加+血小板減少 19

病期0は低危険度群、Ⅰ,Ⅱは中間危険度群、Ⅲ,Ⅳは高危険度群とされる。ただし治療(化学療法)により寛解が得られれば高危険度群から低危険度群にシフトする。

Binet分類
病期 基準 生存期間(年)
A リンパ球増加+2ヶ所以下のリンパ組織腫大 14
B リンパ球増加+3ヵ所以上のリンパ組織腫大 5
CI 貧血または血小板減少 2

その他、リンパ球の増加時間、骨髄中のリンパ球の比率、末梢血中のリンパ球の数や比率、特定の染色体異常、ZAP 70発現5)、免疫グロブリン(IgVH)変異 6)、LD、β2-マイクログロブリン、TNFαなどのサイトカインなどが予後と関連するとされる。

5.治療

CLLは低悪性度のリンパ性腫瘍で、通常はゆっくりと進行するが、intensityの強い多剤併用化学療法を施行しても治癒することはまれとされる。したがって早期に治療を開始しても、その後の生存の延長に寄与するかははっきりしない。どの次期に治療を開始するかについては、以下の徴候を基準にすることが多い7)

  • 慢性リンパ性白血病に関連する症状(極度の倦怠感・寝汗・発熱など)
  • 貧血や血小板減少の進行(Rai分類ⅢまたはⅣ、Binet C)
  • 半年で倍以上のリンパ増加や進行性のリンパ節腫大,肝脾腫
  • ステロイドに反応しない自己免疫性溶血性貧血や血小板減少
  • 感染を繰り返すような著しい免疫グロブリンの低下

ZAP-70の高発現やIgVH変異など予後不良因子があれば、この基準を満たさなくても治療を開始する事もある。

化学療法

CLLに対する化学療法は、従来アルキル化薬が中心であったが、近年フルダラビンに代表されるpurine analogや分子標的療法の有効性が確立され、初回治療として選択されるようになった8)

アルキル化薬では欧米ではクロラムブシルが用いられてるが、本邦では未発売で、シクロフォスファミドの経口投与が行われる。アルキル化薬単独の治療で完全寛解が得られることはほとんど無いが、奏功率は比較的高く、第一選択薬として用いられてきた。

フルダラビンは本剤はアデニンの誘導体で、さらにフッ素の導入により、adenosine deaminase (ADA)による不活性化に抵抗性を示す。CLLを含む低悪性度リンパ系腫瘍に有効である。本剤は細胞内に転入後、F-ara-ATP にリン酸化され、DNA polymeraseαを阻害し、また1部はDNA に転入しその伸長を阻害する。F-ara-ATP は、ribonucleotide reductase (RR)をも阻害し、deoxynucleotideプールを減少させる。毒性としては、dose limiting toxicity (DLT)である骨髄抑制、神経毒性がある。なお本剤は腎障害時には排泄遅延のため毒性が強まるので減量する必要がある。CLL治療には単独の治療でも、シクロフォスファミドや分子標的薬との併用でも用いられる。また高齢者では日和見感染症のリスクが増大するため減量が必要となることが多い。

他のB細胞リンパ系腫瘍と同様にBリンパ球の表面に発現しているCD20に対する抗体(リツキシマブ)の有用性も報告されている9)が、わが国ではリツキシマブのCLLに対する保険適応は無く、臨床試験として投与されることが多い。また同様にリンパ球表面に発現しているCD52に対する抗体(Alemtuzumab) も有用と報告されている10)

その他の治療法

若年者のCLLの治癒をめざして、造血幹細胞移植が行われる事があるが、毒性が強く治療関連死亡も高い11)

また、主に症状の緩和を目的として、巨大な脾腫に対して脾摘や、巨大リンパ節に対する放射線療法が行われることもある。

文献

  1. 1) Yanagihara ET, Blaisdell RK, Hayashi T, et al.: Malignant lymphoma in Hawaii-Japanese: a retrospective morphologic survey. Hematol Oncol 1989; 7:219-232
  2. 2) Chronic lymphocytic leukemia: recommendations for diagnosis, staging, and response criteria. International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia. Ann Intern Med 1989; 110:236-238
  3. 3) Moreau EJ, Matutes E, A'Hern RP, et al.: Improvement of the chronic lymphocytic leukemia scoring system with the monoclonal antibody SN8 (CD79b). Am J Clin Pathol 1997; 108:378-382
  4. 4) Maddocks-Christianson K, Slager SL, Zent CS, et al.: Risk factors for development of a second lymphoid malignancy in patients with chronic lymphocytic leukaemia. Br J Haematol 2007; 139:398-404
  5. 5) Chen L, Widhopf G, Huynh L, et al.: Expression of ZAP-70 is associated with increased B-cell receptor signaling in chronic lymphocytic leukemia. Blood 2002; 100:4609-4614
  6. 6) Krober A, Seiler T, Benner A, et al.: V(H) mutation status, CD38 expression level, genomic aberrations, and survival in chronic lymphocytic leukemia. Blood 2002; 100:1410-1416
  7. 7) Cheson BD, Bennett JM, Grever M, et al.: National Cancer Institute-sponsored Working Group guidelines for chronic lymphocytic leukemia: revised guidelines for diagnosis and treatment. Blood 1996; 87:4990-4997
  8. 8) Pettitt AR: Mechanism of action of purine analogues in chronic lymphocytic leukaemia. Br J Haematol 2003; 121:692-702
  9. 9) Hainsworth JD, Litchy S, Barton JH, et al.: Single-agent rituximab as first-line and maintenance treatment for patients with chronic lymphocytic leukemia or small lymphocytic lymphoma: a phase II trial of the Minnie Pearl Cancer Research Network. J Clin Oncol 2003; 21:1746-1751
  10. 10) Lozanski G, Heerema NA, Flinn IW, et al.: Alemtuzumab is an effective therapy for chronic lymphocytic leukemia with p53 mutations and deletions. Blood 2004; 103:3278-3281
  11. 11) Khouri IF, Keating MJ, Vriesendorp HM, et al.: Autologous and allogeneic bone marrow transplantation for chronic lymphocytic leukemia: preliminary results. J Clin Oncol 1994; 12:748-758