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慢性骨髄性白血病

I. はじめに

慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia, CML)はフィラデルフィア(Ph)染色体を有する慢性骨髄増殖性疾患の一つで、新WHO分類(2001年)ではPh染色体が陰性でもBCR-ABL融合遺伝子陽性の場合はすべてCMLに含める。本症では、BCR-ABL融合遺伝子をもつ異常幹細胞が、成熟血球への分化能力を保持するとともに正常幹細胞より旺盛な血球産生能力を有するため、やがてほとんどの成熟顆粒球系細胞は異常幹細胞由来となる。無治療の場合の経過は、数年の慢性期の後に移行期を経て、あるいは突然急性転化して死の転帰をとる。(表1)
CMLにおいて治癒を目指す標準的治療として確立しているのは同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem cell transplantation, allo-HSCT)である1)。2001年にBCR/ABLチロシンキナーゼ活性部位を選択的に阻害し、Ph染色体陽性クローンを特異的に抑制するイマチニブ(Imatinib mesylate)が臨床に導入され、その有効性が成人例で蓄積されており2,3,4,5) 6)、小児でも今後の使用成績を見守る必要がある。
CMLの分子細胞学的な病態には成人と小児に差はないと考えられることから、今回のガイドラインは主に成人例での報告に基づいて作成した7)。しかし、治療に伴う晩期障害や成長発達に及ぼす影響に関しては小児の特性を考慮しなければならず、allo-HSCTに比べて、歴史の浅いイマチニブの長期投与による影響も不明である。

表1. 慢性骨髄性白血病(CML)の病期分類7)

慢性期(CP)
以下の移行期、急性転化期以外のもの
移行期(AP)
以下の項目のいずれかに該当するもの
  • 1. 末梢血もしくは骨髄中の芽球15-29 %
  • 2. 末梢血もしくは骨髄中の芽球と前骨髄球が計30 % 以上(芽球30 % 未満)
  • 3. 末梢血中の好塩基球20 % 以上
  • 4. 治療に関連しない血小板減少(100,000/μl未満)
急性転化期(BC)
髄外腫瘤の出現、もしくは末梢血、骨髄のいずれかで芽球30 % 以上

II. 慢性期の治療法

1. 慢性期CMLの第一選択の治療薬はイマチニブである。

エビデンスレベル:I勧告グレード:A

イマチニブとインターフェロンα(IFNα)を比較する目的で開始されたIRIS(international randomized study of interferon versus STI571)試験は、IFNαで治療開始した患者の9割がイマチニブに途中変更される事態になり、生存率における両者の比較ができなくなった。そのためIRIS試験でのイマチニブ割付例と過去のIFNα投与例を比較し、イマチニブの生存率においての優位性を示す報告が2006年に相次いで発表された4,5) 6)。これまでの報告も併せて成人慢性期CMLに対する第一選択の薬剤はイマチニブであることは確立されており、小児期のCMLでも同様と考えられる。通常成人では400mg/日が標準開始投与量であるため、小児ではそれに相当する260 ㎎/㎡/日から開始する。イマチニブ投与開始後、定期的に血液学的効果、細胞遺伝学的効果、分子生物学的効果の評価を行う(表2)。所定の時期に到達目標を達成できなかった場合にはイマチニブ増量またはallo-HSCTを選択する。なお、イマチニブの長期投与の影響が不明であることから、予期せぬ副作用の出現に十分な注意をはらい、副作用が認められた場合はallo-HSCTを考慮する。

表2. CML治療効果判定基準7)

血液学的効果 hematological response (HR)
血液学的完全寛解 (CHR):以下の全項目を満たすもの
  • 白血球数 10,000/μl未満
  • 血小板数 450,000/μl未満
  • 白血球分画の正常化(幼若顆粒球の消失かつ好塩基球5 % 未満)
  • 脾腫(触診)の消失
細胞遺伝学的効果 cytogenetic response (CgR)
骨髄染色体検査(Gバンド分染法)にて、20個の細胞の分裂像を分析し、Ph 染色体の消失度を以下の基準に従い評価する。原則としてFISH法は変異型Ph染色体などを確認する目的での治療前検査以外には不要である。
  • Complete CgR (CCgR) :Ph 染色体が完全に消失(消失度 100 % )
  • Partial CgR (PCgR) :Ph 染色体陽性率が 1~35 % に減少(消失度 65~99 % )
  • Minor CgR :Ph 染色体陽性率が 36~65 % に減少(消失度 35~64 % )
  • Minimal CgR :Ph 染色体陽性率が 66~95 % に減少(消失度 5~34 % )
  • None CgR :Ph 染色体陽性率が 96~100 % に留まる(消失度 0~4 % )
CCgRとPCgRを合わせてmajor cytogenetic response (MCgR、細胞遺伝学的寛解)と呼ぶ
分子生物学的効果 molecular response (MolR)
末梢血検査にて、RQ-PCRを行い、BCR-ABL値の変化を評価する
Complete MolR (CMolR) : PCR検出感度以下(nested RT-PCR法による定性検査で陰性) Major molecular response (MMolR、分子生物学的寛解): BCR-ABL値の3-log以上の減少(RQ-PCRでは100コピー/μgRNA、Amp-CMLでは50コピー/アッセイ0.5μgRNAを3-log減少とする)

2. イマチニブへの反応が不良な場合にはallo-HSCTを推奨する。

エビデンスレベル:Ⅳ 勧告グレード:B

小児においても確実に治癒が期待できる治療法はallo-HSCTであるが1)、イマチニブの成績が蓄積されるに従いallo-HSCTの適応は変化しつつある。これまでallo-HSCTとイマチニブを比較した報告はない。
わが国の小児CMLに対するallo-HSCTの成績(3年無病生存率)はHLA一致同胞移植では73.7 %、HLA一致非血縁ドナーでの成績は60.9 %である8)
従来家族にHLA完全一致ドナーがいれば、診断後1年以内にallo-HSCTを行うことが推奨されていた。しかしイマチニブの成績が年々更新されるにつれ、成人患者でのallo-HSCTの適応はイマチニブへの反応が不良な場合に限定されつつある。小児においてもイマチニブへの反応やallo-HSCTのリスク等を考慮し適切な時期に移植を行うことが望まれる。

III. 移行期・急性転化期の治療法

移行期においても、イマチニブの有効性が確認されているため第一選択の薬剤である9)。340 mg/m2から開始し、効果不十分であれば、570 mg/m2(最大800 mg、分2)まで増量する。しかし、寛解後の再発率が高いため造血幹細胞移植の適応となる。急性転化期においてもイマチニブの使用がより安全で有効性があることが知られているが、効果の確実性は低く、他の治療法との併用が考慮される10)

文献

  • 1)Cwynarski K, Roberts IA, Iacobelli S, et al.; Paediatric and Chronic Leukaemia Working Parties of the European Group for Blood and Marrow Transplantation. Stem cell transplantation for chronic myeloid leukemia in children. Blood. 102(4):1224-31, 2003.
  • 2)O'Brien SG, Guilhot F, Larson RA, et al.; IRIS Investigators. Imatinib compared with interferon and low-dose cytarabine for newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 2003;348(11):994-1004.
  • 3)Hughes TP, Kaeda J, Branford S, Rudzki Z, Hochhaus A, Hensley ML, Gathmann I, Bolton AE, van Hoomissen IC, Goldman JM, Radich JP; International Randomised Study of Interferon versus STI571 (IRIS) Study Group. Frequency of major molecular responses to imatinib or interferon alfa plus cytarabine in newly diagnosed chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 349(15): 1423-32, 2003.
  • 4)Roy L, Guilhot J, Krahnke T, et al. Survival advantage from imatinib compared with the combination interferon-alpha plus cytarabine in chronic-phase chronic myelogenous leukemia: historical comparison between two phase 3 trials. Blood. 08(5): 1478-84, 2006.
  • 5)Kantarjian HM, Talpaz M, O'Brien S, et al. Survival benefit with imatinib mesylate versus interferon-alpha-based regimens in newly diagnosed chronic-phase chronic myelogenous leukemia. Blood. 108(6): 1835-40, 2006.
  • 6)Druker BJ, Guilhot F, O'Brien SG, et al.; IRIS Investigators. Five-year follow-up of patients receiving imatinib for chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 2006;355(23):2408-17.
  • 7)Baccarani M, Saglio G, Goldman J, et al; European LeukemiaNet. Evolving concepts in the management of chronic myeloid leukemia: recommendations from an expert panel on behalf of the European LeukemiaNet. Blood. 108(6): 1809-20, 2006.
  • 8)日本造血細胞移植学会平成17年度の報告書(小児における造血幹細胞移植の解析、p164) 日本造血細胞移植学会全国データ集計事務局, 2006年2月.
  • 9)Talpaz M, Silver RT, Druker BJ, et al. Imatinib induces durable hematologic and cytogenetic responses in patients with accelerated phase chronic myeloid leukemia: results of a phase 2 study. Blood 99(6): 1928-37, 2002.
  • 10)Kantarjian HM, Cortes J, O'Brien S, et al. Imatinib mesylate (STI571) therapy for Philadelphia chromosome-positive chronic myelogenous leukemia in blast phase. Blood 99(10): 3547-53, 2002.