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血管芽腫

1.基本事項

血管芽腫は従来血管内皮細胞由来の腫瘍とされてきたが,種々の検討によりかえってその由来が特定できなくなり,現在のところ起源不明とされている.孤発例とvon Hippel-Lindau病に合併する場合とがある.孤発例のほうが多く,家族発生は20~25%である.

2.発生部位

小脳発生が80%以上 (このうち約80%は小脳半球)で,次いで延髄最後野 (area postrema),橋,脊髄の順に多い.後頭蓋窩腫瘍の約10%を占める.大脳半球に発生することはvon Hippel-Lindau病以外では極めてまれである.

3.頻度,年齢,性別

原発性脳腫瘍の約1.7%を占め,20~64歳までほぼ均等に発生している (脳腫瘍全国集計2003).性差はない.

4.症状

後頭蓋窩に発生した場合は第4脳室閉塞による頭蓋内圧亢進症状に加え,小脳症状,脳幹症状などの局所症状をきたす.延髄最後野発生では吃逆,球麻痺,深部知覚障害,呼吸不全,自律神経失調などが出現する.

5.神経放射線学的所見

1) CT

嚢胞を形成しやすく,単純CTで嚢胞は髄液よりやや高吸収域を示す.腫瘍は壁在結節 (mural nodule)の像を呈することが多く,腫瘍実質部分は強く造影される.

2) MRI

嚢胞はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を示す.腫瘍は均一に造影されるが,嚢胞壁は通常造影されない.充実性の腫瘍もある.栄養血管はflow voidとして認められる.

3) 脳血管撮影

著明な腫瘍陰影を示す.嚢胞の部分は無血管野となり,血管の圧排像がみられる.

6.病理

1) 肉眼所見

大きな嚢胞に壁在結節を有するものが60~75%で小脳発生例に多い.実質 (充実)性のものは脳幹や脊髄に多い.境界鮮明で赤褐色調,脂肪が多いと黄色調を呈する.

2)組織所見

血管芽腫は無数の毛細血管の増生が特徴であり,血管の間にはstromal cellと呼ばれる腫瘍細胞がみられる.stromal cellは類円形または多角形で,通常胞体が明るく泡沫状を呈するため foamy cellあるいはclear cellとも呼ばれる.細胞体内には多くの脂肪滴やglycogenを含み,これが固定包埋の段階で抜けるために明るくみえる.核は楕円形で細胞体のほぼ中心に位置し,核小体は目立たない.細胞や核に大小不同が目立つこともあるが悪性の所見ではない.核分裂,壊死,石灰化は通常認めない.血管内皮細胞はやや肥厚していることが多いが,通常一層である.鍍銀染色,laminin,collagen type IVで血管基底膜が網状に染まる.免疫染色にて,血管内皮細胞はfactor VIII,CD31,Ulex europaeus agglutinin I (UEA-I) 陽性であるが,stromal cellはこれらすべてに陰性である.これは腫瘍細胞が内皮細胞由来ではないことを示唆する所見である.cytokeratinやEMAにも陰性である.stromal cellのほとんどはGFAP陰性であるが,一部に陽性細胞を認めることがある.このGFAP陽性細胞は,脂肪を取り込んだastrocyteであると考えられている.またstromal cellにはS-100陽性細胞もしばしば認められる.stromal cellの多くはVEGF,vimentinに陽性である.stromal cellの起源に関して,免疫組織化学的にfactor XIIIa陽性によりfibrohistiocytic origin とするものや,synaptophysin, substance P, neuropeptide陽性細胞が25~30%混在することからneuroendocrineの性格を持つとする報告がある.電顕所見の検討でも,stromal cellの起源は特定されていない.

7.分子生物学的所見

VEGFは血管芽腫においても最も重要な血管増殖因子であると考えられている.一方,VEGF-receptorであるFlt-1,Flk-1,Tie-1は内皮細胞には発現しているが,stromal cellに関しては報告により異なる.PDGFも内皮細胞に発現している.stromal cellはEGFR,TGF-αともに強く発現しているが,悪性神経膠腫にみられるEGFR遺伝子のamplificationは認めない.

8.治療

1) 手術療法

腫瘍実質の摘出と嚢胞内容液の排除をおこなう.実質性腫瘍の場合は境界不鮮明のことが多く,全摘困難なこともある.特に脳幹部の腫瘍では全摘出不可能の場合が多い.

2) 放射線療法

亜全摘例,手術不能例に局所照射が試みられ,約65%の症例で腫瘍縮小効果を認める.最近では定位放射線照射の有用性の報告が増加している.特に多発例や深部腫瘍は良い適応である.

9.予後

組織学的に良性腫瘍で,全摘出により治癒が期待できる.残存腫瘍があれば再発することが多い.術後に髄腔内播種を起こすことがあるが,組織学的に悪性所見は認めない.家族発生例では年余にわたって多発性に発生し,頻回に手術をおこなわねばならないこともある.Ki-67の陽性率は通常1%以下であり増殖能は低い.悪性度はWHOのgrade Iである.