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退形成性星細胞腫

1.基本事項

組織学的にdiffuse astrocytomaとglioblastomaとの中間的な像を示すもので,それぞれとの鑑別が困難な症例も多い.浸潤性の高いdiffuse infiltrating astrocytomaの性格を示し,臨床的にはglioblastomaとともにmalignant glioma (悪性神経膠腫)として包括され,ほぼ同様の治療が行われる. diffuse astrocytomaが一定期間をおいてanaplastic astrocytomaに悪性転化する症例も少なくない.またanaplastic astrocytomaはglioblastomaへと悪性転化しやすいとされる (secondary glioblastoma).

2.発生部位

diffuse astrocytoma の好発部位とほぼ一致する.大脳半球以外では基底核,脳幹などに発生する.小脳にはまれである.

3.頻度,年齢,性別

脳腫瘍全国集計(2003)では原発性脳腫瘍の4.8%,全神経膠腫の19%を占める.小児の原発性脳腫瘍の5.7%である.diffuse astrocytomaに比較して発生年齢が高く,45~60歳代にピークがある.またglioblastomaよりは平均で5~10歳程度若い年齢層に発生する.やや男性に多い.

4.症状

diffuse astrocytomaとほぼ同様である.しかし発症までの期間は短くなる.

5.神経放射線学的所見

anaplastic astrocytomaは画像的にもdiffuse astrocytomaとglioblastomaの中間的な所見を呈する.

1) CT

単純CTでは境界がやや不鮮明な低吸収域,または混合吸収域を示す.diffuse astrocytomaが造影されないことが多いのに対し,通常不規則な造影効果を認める.しかしglioblastomaと比較してリング状に造影されることはまれで,嚢胞や出血も少ない.

2) MRI

白質に主座を置き,T1強調像では等~低信号が混在し,出血がある部分は高信号となる.T2強調像では高~混合信号を示す.浮腫はT2強調像で高信号を示す.不規則な造影効果を認めることが多い.

6.病理所見

1) 肉眼所見

肉眼的にはdiffuse astrocytomaとの鑑別は困難である.大小の壊死,出血巣を伴い,多彩な割面像を呈することがある.肉眼的な嚢胞形成はまれである.

2) 組織所見

diffuse astrocytomaに比較して腫瘍細胞密度の増加,核の異型性,核分裂像がみられる.最も多いパターンは小型類円形細胞の比較的密な増殖からなるものである.腫瘍組織の大部分がdiffuse astrocytoma (fibrillary,protoplasmic,gemistocytic,またはこれらの混在)で,部分的あるいはごく一部にのみanaplastic astrocytomaの像がみられる症例がしばしばあり,こうした場合後者が診断に重要な部分である.従って,できるだけ多くの組織標本を検討することが必要であり,生検材料など少量の組織のみで診断を下すのは危険である.組織像はdiffuse astrocytomaに近いものからglioblastomaに近いものまでかなり幅がある.WHO (2007)の定義では,微小血管増生 (microvascular proliferation)や壊死像はみられないとしている.一方,Russell & Rubinsteinのtextbook (2006)では,微小血管増生はanaplastic astrocytomaでも種々の程度にみられ,glioblastomaとの鑑別の指標にはならないとしている.壊死像に関しては,pseudopalisadingを認めないことがglioblastomaとの重要な鑑別点である.予後と相関するのは微小血管増生の程度と壊死であるとされている.髄膜播種もしばしば認める所見である.免疫染色でのGFAP陽性の程度は症例によって異なるが,悪性度が増すにつれて発現は低下する傾向にある.髄膜播種を起こした細胞はGFAP陰性のことも多い.vimentinと S-100は通常陽性である.Ki-67陽性率は5~10%程度である.

7.分子生物学的所見

anaplastic astrocytomaではp53のmutationの頻度が高い点でdiffuse astrocytoma (grade II)に類似しており,diffuse astrocytomaが急速に悪性化した場合が多く,de novoの発生は少ないと推察されている.anaplastic astrocytoma に限定して遺伝子異常を検討したものは少ないが,Rb経路の遺伝子 (p16,RB,CDK4)のmutation,EGFR遺伝子のamplificationのある場合は予後不良と報告されている.

8.治療

glioblastomaとほぼ同様の治療が行われている.通常まず可及的な腫瘍摘出術が行われ,摘出率が75%以上では摘出率が高いほど生存率も高い(脳腫瘍全国集計).続いて50~60Gyの放射線照射が行なわれるが,照射単独での2年生存は難しい.化学療法としては,本邦ではニトロソウレア系のACNU (またはMCNU)が主軸であったが、2006年に内服薬の temozolomideが認可され,その治療効果が期待されている.他にprocarbazine,vincristine,cisplatin (またはcarboplatin),VP-16などが用いられている.またinterferon-βがBRM (biological response modifier)としてしばしば使用されている.

9.予後

脳腫瘍全国集計では,テント上のanaplastic astrocytomaの2年,5年生存率はそれぞれ44%,23%である.悪性度はWHOのgrade IIIである.