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転移性骨腫瘍

癌の骨転移は、患者さんのADLに大きくかかわるため、適切な治療が必要です。治療方針に関しては、原疾患の科、整形外科、放射線科、リハビリテーション科など、総合的な判断が必要となります。また、初診で骨転移がわかり、原発巣を検索する場合、その頻度は癌の頻度順ではなく、骨転移をきたしやすい癌になります。実際に多いのは、骨髄腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、腎癌などとなります。

症状

転移した腫瘍が骨の中でまだ小さいと、症状はあまりありません。腫瘍が大きくなり骨の破壊が進むと、動作時痛や夜間痛などが出現します。更に大きくなり、骨の大部分が腫瘍に侵されると、軽微な外傷で病的骨折を起こすようになります。

脊椎に転移した場合、腰痛や背部痛となって痛みを感じます。腫瘍が大きくなると、骨が潰れて、圧迫骨折を起こします。また、脊髄が腫瘍で圧迫されると、手足のしびれや麻痺がでます。

診断

原発不明の骨転移で初診した患者さんに対する、原発巣検索のフローチャートをのせます。乳房触診、甲状腺触診などの身体所見のみでも8%が診断されます。検査で確定できない場合、生検をおこないます。この際、原発性骨腫瘍(骨肉腫など)の可能性もあるため、慎重に生検術を行ってください。具体的には、縦皮切をもちい、コンタミネーション、出血を最小限に抑えてください。また、腎癌などは生検でも出血が大量になることがあり、輸血を必要とすることがあります。

治療

薬物治療

最近の劇的な進歩のひとつに、ビスフォスフォ製剤の開発があります。これは、注射、または内服することで、骨転移巣が抑制され、小さくなることもあります。抗癌剤と異なり、副作用も大きなものはありません。骨の転移のある患者さんは、その痛みのため、日常生活が制限されることが多い中、この薬のおかげで、転移がありながらも、普通の生活をしている患者さんが多くなりました。

放射線治療

放射線治療により、腫瘍の縮小、サイトカイン産生の抑制などにより症状が軽快します。疼痛の緩和率は70%~96%で、溶骨変化の65%~85%に再骨化がみられます。原発巣の種類によって効果が異なり、肝癌、腎癌、甲状腺癌などは抵抗性のことが多いです。

手術治療

下肢の長管骨が腫瘍に侵され、病的骨折をおこすと、患者さんのADLが極端に低下します。そのため、病的骨折がおこる前の、切迫した状態(Impending fracture)で手術を行うことが望ましいです。切迫した状態を判断するのは容易ではありませんが、病巣部が3cm以上、骨皮質の破壊が50%以上、保存療法にかかわらず頑固な疼痛が持続する場合などが目安となります。手術には、予防的髄内釘が多いですが、患者さんの余後や腫瘍の範囲によっては、積極的に腫瘍を切除し、骨セメントや人工関節をつかって手術する場合や、創外固定などの低侵襲で一時的な固定を行う場合があります。

予後と骨転移手術方針
短期予後しか見込めない(<1~2ヶ月) 創外固定器による外固定術
中期予後しか見込めない(<6~12ヶ月) 腫瘍掻爬術+髄内釘と骨セメントを用いた内固定術
比較的長い予後が見込める(>12~24ヶ月)広汎腫瘍切除術+腫瘍用人工関節

最近は、腫瘍で侵された骨をとりだし、液体窒素を用い超低温で腫瘍細胞を殺してから、再びその骨を体に戻す方法も開発されています。骨を再利用できること、筋肉などを再び骨に縫着できることなどの利点があります。また、凍結処理した細胞が体内に戻ることで、癌免疫の活性化が動物実験で証明されています。



図 骨の中の腫瘍(紫)を液体窒素につけることで死滅させる。処理した骨を再び利用して、骨の欠損部を再建している。

背骨の転移に対する手術法も、基本的には、腫瘍の切除と、固定が必要となります。以前は、脊髄を障害せずに骨転移を完全に切除することは不可能であると考えられていました。しかし新しい手術(腫瘍脊椎骨全摘術)が考案され、脊髄を障害することなく,癌に侵された脊椎をまとめて完全に切除することができるようになりました。これは、転移が脊椎の一箇所だけに限られる患者さんに最も適した方法です。

その他にも重粒子線や遺伝子治療など、様々な治療が骨転移に対して開発中です。


図 胸椎の骨転移を、腫瘍脊椎骨全摘術を行い摘出した。

脊椎転移の際の、手術方針の表を載せます。原疾患や他臓器への転移などを点数化し手術の可否、術式を決定します。例えば乳癌で、臓器転移がコントロールされ、骨転移が単発性の場合は1+2+1=4点で、En bloc またはDebulkingの手術を選びます。