急性骨髄性白血病(きゅうせいこつずいせいはっけつびょう)
目次
1. 急性骨髄性白血病とは
急性白血病には、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML、以下AMLと略)と急性リンパ性白血病(acute lymphoid leukemia:ALL、以下ALLと略)があります。AMLは、non-lymphocyticとも表現され、ANLLと略されることがあります。AMLは、多能性造血幹細胞からやや骨髄系細胞に分化した前駆細胞レベルの細胞が、遺伝子異常を引き金に腫瘍化し、生じます。
2. 病態と症状
正常の骨髄では、顆粒球系・赤芽球系・巨核球のいわゆる造血三系統の各分化段階の細胞が存在します。急性白血病では、骨髄の中で白血病細胞が増殖します。骨髄は骨に囲まれた限られた空間であるため、白血病細胞が増殖することにより、正常造血細胞が増殖の場を失い、減少します。さらに白血病細胞が増殖すると、骨髄の外に白血病細胞が浸潤するため、臓器障害が発生します。急性白血病では、好中球減少による感染症、血小板減少ための出血、赤血球減少のための貧血症状が病初期から生じ、進行すると腫瘍熱・臓器障害・体重減少など腫瘍細胞が増殖するための症状が見られるようになります。
3. 診断(図1)

急性白血病の診断のためには、胸骨または腸骨で骨髄穿刺を行い、白血病細胞を採取する必要があります。塗沫標本を作製し、May-Giemsa 染色で形態を観察し、白血病細胞(芽球とも呼びます)の比率を求めます。次に特殊染色で、AMLとALLの鑑別とAMLの分類を行います。AMLとALLの鑑別は、ペルオキシダーゼ(peroxidase)染色かズダン黒B(Sudan black B)染色で行います。白血病細胞の3%がペルオキシダーゼまたはズダン黒B染色陽性であればAMLと診断されます。ただし、一部のAML(FAB分類のM0, M5の一部、M7)は陰性であるため、フローサイトメトリーで骨髄系抗原およびリンパ球系抗原の有無を確認する必要があります。エステラーゼ染色には、骨髄系細胞が陽性となる特異的エステラーゼ(naphthol AS-D chloroacetate)と単球系細胞が陽性となる非特異的エステラーゼ染色(α-naphthyl butyrate esterase)があります。
細胞表面マーカーの検索はフローサイトメトリーで行います。細胞表面に発現している抗原を検索し、細胞起源を明らかにします。
染色体検査はAMLの診断には不可欠です。後述するWHO分類では、t(8;21), t(15;17), inv(16), t(16;16), 11q23(MLL)の異常を有するAMLは単一の病型として扱われています。また染色体情報は、予後の推測にも非常に重要な意味を持っています。
遺伝子変異解析や核酸増幅試験は、まだ研究段階のものが多いのですが、診断・予後因子・治療の効果判定や微少残存病変(minimal residual disease:MRD)の検出に用いられています。
4. 急性骨髄性白血病の分類(図2)

従来AMLの分類は、french-american-britishの略であるFAB分類が用いられてきました。FAB分類では、骨髄中の有核細胞に占める白血病細胞比率が30%をAMLと診断し、AMLはM0からM7までの8病型に分けられています。1999年に提唱されたWHO分類は、FAB分類を基礎に、染色体異常の有無、形態異常や治療歴を加えてAMLを分類しています。またFAB分類と大きく異なる点は、WHO分類では白血病細胞比率20%以上でAMLと診断しています。
5. 治療概念
AMLの治療概念は、total cell killと表現されます(図3)。白血病発症時には、骨髄の大部分が白血病細胞によって占められています。Total cell killとは、抗がん剤による強力な寛解導入療法を行い、骨髄中の白血病細胞を正常造血細胞も含め死滅させることを示しています。骨髄中の細胞が、低形成になった後しばらくすると、骨髄中に細胞が増加してきます。寛解導入療法が奏効すれば、白血病細胞よりも早く正常造血細胞が回復し、治療後約4週間で完全寛解に到達します。完全寛解に到達した後も白血病細胞は残存しているため、治療を打ち切るとすぐに再発する可能性があります。そのために寛解後療法(ここでは化学療法を指しています)を行います。寛解後療法も寛解導入療法と同様の強力な化学療法です。寛解後療法後も骨髄は一旦低形成になります。その後骨髄の回復と同時に白血病細胞の比率が低下します。これを繰り返すことで白血病細胞を極力減少させます。

寛解導入療法は、アンソラサイクリン系抗がん剤(イダルビシンやダウノルビシン)と代謝拮抗薬であるシタラビンによる併用が標準的です。寛解後療法には、通常量のシタラビンと交差耐性のないアンソラサイクリン系抗がん剤を交代で用いる治療法と、大量シタラビン療法に大別することができます。欧米では大量シタラビンの有効性が報告されています。中でもt(8;21)やinv(16)などの染色体異常を有するcore-binding factor (CBF)関連白血病に対して有効性が高いと報告されています。
図4に日本成人白血病研究グループ(Japan Adult Leukemia Study Group:JALSG)のAML201プロトコールを示します。この臨床研究で、通常の寛解後療法と大量シタラビン療法の比較検討が行われました。
6. 治療経過と微少残存病変(minimal residual disease:MRD)
体内に存在する白血病細胞数と治療経過との関係を図5に示します。治療前には1012個レベルの白血病細胞が体内に存在すると言われています。寛解導入療法により完全寛解、いわゆる血液学的寛解に到達してもなお109個レベルの白血病細胞が残存しています。完全寛解後の光学顕微鏡で認識できない病変を微少残存病変(minimal residual disease:MRD)と呼びます。体内に残存する白血病細胞が106個以下になればPCR法等の鋭敏な検出法を用いてもMRDを検出できなくなります。このような状態を分子寛解と呼びます。治癒を目指したAMLの治療目標は分子寛解に到達させることです。PCR法によるMRDの検出には、t(8;21)、t(15;17)などの染色体転座を持つ場合にはこれらのキメラ遺伝子を用いますが、キメラ遺伝子がないときにはWT1(Wilms tumor 1)遺伝子のmRNAを測定する方法が利用できます。

7. 予後因子
AMLの予後に最も影響を与える因子の1つに、白血病細胞の持つ染色体異常があります。染色体異常の種類で、3つの予後の異なるグループに分類できます(図6)。最も予後良好な群には、t(15;17)を有する急性前骨髄球性白血病(別項を参照)、t(8;21)やinv(16)、t(16;16)をもつAMLが含まれます。予後中間群には、染色体異常を認めない正常染色体が含まれます。予後不良群には、複数の染色体異常を有するものや、7番染色体、5番染色体の異常が含まれます。図7は染色体による予後分類別の生存曲線を示します。良好群の長期生存率は約60%、中間群では約40%。不良群では20%を下回ります1)。

図8はAMLに見られる染色体異常による予後別にみたAMLの比率を示しています。予後良好群が全体の約4分の1を、中間群が約3分の2を、残りを予後不良群が占めています。中間群では、その中のさらに3分の2を正常化核型が占めているように、正常核型がAMLに占める最も多い核型です。正常核型においても、近年様々な遺伝子異常を持つことが報告されるようになり、その中の一部は予後と関連の深いことがわかってきました。正常染色体のAMLで予後と密接に関わる遺伝子には、ヌクレオフォスミン(nucleophosmin:NPM)の遺伝子とチロシンキナーゼ受容体の一つであるfms-related tyrosine kinase 3 (FLT3)遺伝子があります。図9はこれらの遺伝子のmutationの有無別にみた頻度を示します。この中で予後が良いとされる組み合わせは、NPM遺伝子にmutationがあり、FLT3にmutationない組み合わせですが(図10)、この組み合わせのAMLが正常核型全体の約3分の1を占めています2)。

その他の予後不良因子としては、年齢(60歳以上)、治療前白血球数(20000/l以上)、FAB分類(M0, M6, M7)、寛解に至るまでの寛解導入療法数(2回以上)、ペルオキシダーゼ陽性率(50%未満)などがあります3)。
AMLの寛解後の治療法をどのように選択するかは、これらの予後因子の有無に強く影響を受けます。予後因子を詳細に検討した上で、化学療法単独で治療を終えるか、第一寛解期に造血幹細胞移植を行うかを選択します。
8. 寛解後の治療法選択
前述のように、AMLは染色体を中心に再発リスク別に、低リスク群、中間リスク群、および高リスク群の3群に分けることができます。またこられ3群で、血縁ドナーの有無により寛解後の治療を層別化することが可能です。AMLの寛解導入療法は、APLをのぞいて、アンソラサイクリン系抗がん剤とシタラビンの併用が標準です。寛解後の治療には化学療法だけを行う場合と、化学療法に引き続き、血縁、非血縁または臍帯血を用いた同種幹細胞移植、または自家幹細胞移植を行う場合があります。再発リスクの低い群では、造血幹細胞移植の危険性が、化学療法の有効性を上回る可能性があるため、化学療法単独で治療を終えることが一般的です。この場合治療関連毒性が低く抑えられます。しかし、化学療法単独では再発のリスクが高い場合には、治療関連毒性が増しても、造血幹細胞移植を選択することになります。図11は、染色体予後因子別にみた、現時点で標準と思われる寛解後療法を示します。再発の低リスク群では幹細胞移植は初回寛解期には行わず、再発以降に検討されるべきでしょう。中間リスク群または高リスク群で血縁ドナーが存在したら、第一寛解期に同種幹細胞移植が行われることが推奨されます。さらに、高リスク群で血縁ドナーが不在の場合には、非血縁ドナーや臍帯血を用いた幹細胞移植を検討するべきであると考えられます。

9. 造血幹細胞移植の利点と欠点
図12に自家造血幹細胞移植と同種造血幹細胞移植の利点と欠点を示します。同種移植の利点は、白血病細胞の混入がないことと、移植片対白血病(graft-versus-leukemia:GVL)効果が期待できるため、再発を低くおさえることができることですが、移植片対宿主病(graft- versus-host disease:GVHD)などの治療関連毒性が強く出てしまう欠点があります。自家移植では、GVHDはなく、感染症などの移植関連毒性も同種移植に比較し軽度ですが、再発頻度が高いという欠点があります。幹細胞移植法を選択するに当たっては、移植前の白血病の状態と患者さんの状態、感染症や臓器障害の合併の有無などを考慮する必要があります。

10. 骨髄破壊的前処置および骨髄非破壊的前処置(低強度前処置)による同種造血幹細胞移植(図13)

同種造血幹細胞移植では、前処置の強度を、骨髄破壊的前処置と骨髄非破壊的前処置に分けることが出来ます。骨髄破壊的前処置では大量の抗がん剤や全身放射線照射により、白血病細胞も患者由来造血細胞も移植当日までにほぼ死滅するため、移植後はドナー由来の造血細胞のみが増えてくることになります。この前処置では、抗白血病効果が高い反面、治療関連毒性が高くなります。一方、非骨髄破壊的前処置による同種移植は、前処置の抗腫瘍効果よりも、GVL効果による抗白血病作用を利用した移植方法です。移植前処置には患者への負担が少ない免疫抑制を目的にした薬剤を使用します。そのため、移植後しばらく、患者由来血球が残存し、徐々にドナー由来細胞に置き換わります。この方法では治療毒性が弱い反面、抗腫瘍効果が前者に比べ劣ります。したがって、骨髄非破壊的前処置による移植は、高齢者や臓器障害など合併症を持つ症例がよい対象となります。
11. その他の治療法
G-CSFによるpriming効果:AMLにはG-CSF受容体が発現しているため、G-CSFの投与により白血病細胞が増殖する可能性があります。その特性を利用し、白血病細胞の抗がん剤感受性を高める方法をpriming効果と呼びます。図14に示すように、化学療法後にG-CSFを投与する通常の使用方法ではなく、化学療法剤と同時にG-CSFを投与することで治療効果を高める方法です4)。この方法により無再発生存期間の延長が報告されていますが、本邦では保険診療上認められていません。

ゲムツズマブオゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin;GO):ゲムツズマブは、多くのAML細胞に高発現しているCD33に対するヒト化モノクローナル抗体で、化学療法剤であるカリケアマイシンを結合している、いわゆるイムノトシキンです。カリケアマイシン自体は毒性の高い抗がん剤ですが、ゲムツズマブと結合させ分子標的薬とすることで毒性が軽減されました。抗体が白血病表面のCD33と結合すると、カリケアマイシンごと細胞内に取り込まれ(インターナリゼーション)、抗腫瘍効果が発揮されます。現在、ゲムツズマブの臨床使用法が検討されています。
12. 高齢者AML
60歳以上の高齢者AMLでは、年齢以外の予後不良因子を有する比率が高いため、非高齢成人AMLに比べ圧倒的に予後不良とされています。寛解導入率は、60〜80%と非高齢成人AMLと大差はありませんが、再発率が高いため、長期生存率は20%前後です。前述のGOは高齢者AMLの初回治療としての保険適応がありますが、有効性に関しては今後さらに評価が必要です。
文献
- 1) Grimwade D, Walker H, Oliver F, et al. The importance of diagnostic cytogenetics on outcome in AML: analysis of 1,612 patients entered into the MRC AML 10 trial. The Medical Research Council Adult and Children's Leukaemia Working Parties. Blood. 1998;92:2322-2333.
- 2) Baldus CD, Mrozek K, Marcucci G, Bloomfield CD. Clinical outcome of de novo acute myeloid leukaemia patients with normal cytogenetics is affected by molecular genetic alterations: a concise review. Br J Haematol. 2007;137:387-400.
- 3) 栗山一孝ほか:JALSG におけるAML の化学療法-スコアリングシステムを用いた予後判定.臨床血液 39: 98, 1998
- 4) Lowenberg B, van Putten W, Theobald M, et al. Effect of priming with granulocyte colony-stimulating factor on the outcome of chemotherapy for acute myeloid leukemia. N Engl J Med.2003;349:743-752.